前がん病変
基礎情報
概要
口腔とは口の中全体のことをいい、口の中のさまざまな部分にできるがんを総称して口腔がんと呼びます。がんができる場所によって、舌(ぜつ)がん、歯肉(しにく)がん、口底(こうてい)がん、頬粘膜(きょうねんまく)がん、口蓋(こうがい)がん・口唇(こうしん)がんに分けられます。もっとも多いのは舌がんで、次に多いのが歯肉がんです。口腔がんが発生する確率はがん全体の1~3%と高くなく、ほかのがんとは異なり病変部を自分の目で見ることができることからも、比較的早期発見がしやすいがんともいえます。
口腔がんは不十分な口腔ケアで発症するリスクが高まってしまうため、予防には日頃から口の中を清潔に保つことが重要です。かかりつけ歯科医を持ち、定期的に口の中のメンテナンスを続けていくことを心がけましょう。
症状
口腔がんの主な症状としては、がんができたところの粘膜の赤みが強くなったり、白く変色したりするほか、舌や歯ぐき、頬(ほお)の粘膜にしこりや口内炎のような変化が生じます。多くの場合で痛みや出血などがないため、発症に気づかないケースや、口内炎と決めつけて放置してしまうことがあり得ます。がんが進行すると、大きな潰瘍へと変化し、次第に痛みや出血も現れるようになり、首のリンパ節に転移することも少なくありません。さらに進行すると、舌が動かしにくくなったり、口が開けにくくなるなど食事や会話にも支障をきたすようになります。
その半面、初期のうちに発見すれば簡単な治療で治すことができ、後遺症もほとんど残りません。5年生存率は90%以上との報告もあるなど治りやすいがんといえ、それだけに早期発見がとても大事です。
原因
口腔がんの原因にはさまざまなものが考えられますが、一つには、長年にわたる過度の飲酒や喫煙によって、口の中の粘膜に良くない刺激が加わり続けることが挙げられます。
そのほか、特に舌がんでは、歯並びの乱れや欠けた歯などが舌に慢性的な刺激を与えることで発症してしまう危険性があります。また、口の中が常に不衛生であったり、辛いものや熱いものを過度に食べたり飲んだりすることも、口腔がんを引き起こす原因と考えられています。
検査・診断
口腔がんの検査は、見ることと触ることから行います。病変部と思われる箇所を丁寧に診察するとともに、顎(あご)の下や首のリンパ節への転移も考えられるため、視診や触診で各部位の腫れ具合を確認します。その結果、がんが疑われる場合には、次のような検査を行っていきます。
細胞診検査
異常が見られる部分の表面の細胞を採取して、悪性の細胞があるかどうかを顕微鏡で調べます。患者さんの負担も少なく、結果が比較的短い期間で分かる検査です。
病理検査
病変部の組織の一部を採って顕微鏡で調べ、がん細胞の有無を確認します。口腔がんであるという確定診断を行うために必要な検査です。
画像検査・超音波検査
CTやMRIなどによる画像検査や超音波検査で、がんの広がりや進行の度合い、転移があるかどうかを調べます。口腔がんは喉(のど)や食道、胃などのがんが重複していることもあるため、上部消化管の内視鏡検査を併せて行うこともあります。
治療
口腔がんの治療は、がんの進行度合いや、がんができた部位、転移の有無や治療後の生活の質(QOL)における患者さんの要望などを踏まえて最適な方法を選択します。また、複数の治療法を組み合わせて効果を高める方法も検討されます。
外科手術
根本的な治療としては、手術でがんを切除することがもっとも有効です。がんのある部位と周辺を切除しますが、がんの進行具合によっては、顎や舌などを広範囲に切除しなければならないこともあります。その場合には、腕や腹部などの皮膚・筋肉を移植して失われた部分を補う再建手術を行うのが一般的です。
放射線治療
進行した口腔がんには放射線による治療が行われることが多く、抗がん剤治療と併用されることも一般的です。また、治療後にがんの再発を防ぐ目的で放射線治療が行われるケースや、治療効果を高める目的で手術の前後に用いられることも少なくありません。
抗がん剤治療
ほかの部位や臓器に転移が生じるなど、かなり進行しているときには、多くの場合で抗がん剤治療が選択されます。ただし抗がん剤治療は副作用が強いため、全身状態がかんばしくなく、体力的に難しい場合には避けざるを得ないこともあります。
更新:2022.05.24