致死性不整脈および難治性心不全に対するデバイス治療
循環器内科
心不全とは
心臓には、右心房・左心房・右心室・左心室の4つの部屋があり、それぞれの部屋は筋肉の袋のようになっています。この筋肉が電気の刺激により収縮・拡張することで血液を体に送り出すポンプの役割をしています。
心室に入った電気刺激は「脚」と呼ばれる電線の枝に分かれて心室の筋肉を収縮させます。「脚」には右心室に刺激を伝える「右脚」と左心室に刺激を伝える「左脚」があります。この「脚」に異常が生じて心室の収縮の同期がうまくいかなくなると、効率よく血液を送り出せなくなります。特に「左脚」の伝導が切れることを「左脚ブロック」といい、電気刺激は心室内の筋肉をゆっくりと伝わります。そのため心室の内側から外側に徐々に収縮していくようになります。さらに外側の部分が収縮する頃には、最初に収縮した内側の部分は拡張を始めるため、心室が振り子状の動きとなり血液を効率よく送り出せなくなります。このような心室の収縮のズレを同期不全と呼びます。
体が必要とする血液を十分に賄(まかな)いきれない状態を心不全といいますが、重症の心不全患者さんの30~50%に同期不全が生じているとの報告もあります。
心不全の治療
重症心不全の患者さんで、左脚ブロックなどによる同期不全で心不全が悪化している場合には、両室(右心室と左心室)ペーシングと呼ばれる特殊なペースメーカの植え込みが心不全治療に有効となります。
本来のペースメーカ治療は、脈拍の遅くなる病気の患者さんに対して行う治療ですが、両室ペーシングは心臓のポンプに障害をもった患者さんに対する心不全治療のためのペースメーカ療法です。
血管(静脈)を介して右心室と左心室の外側の壁にペースメーカの電線(リード)を留置し、タイミングをそろえて心室を刺激することで、心室の収縮の効率を上げる治療法で、これを両室ペーシングまたは心臓再同期療法といいます(図)。左心室リードは、右心房から心臓の静脈を介して左心室側に挿入します。同期不全が明らかな患者さんでは、多くのケースで心不全の改善を認めます。
また心機能が低下している患者さんでは、心室頻拍(ひんぱく)や心室細動(さいどう)といった、いわゆる「心臓痙攣(けいれん)」からの突然死が生じやすいことも分かっています。これらの不整脈は心室が極端に速く、また心室細動では不規則に興奮することで血液の拍出が困難となります。発症すると数分で死に至ることもある重篤な不整脈発作です。
これらを停止させるためには電気的除細動、一般にいう「電気ショック」が有効となります。両室ペーシングを行うペースメーカには、この除細動機能が付随しているものがあり、除細動機能付き両室ペースメーカといいます。
更新:2023.09.10