ビリビリ、ジンジンした痛みに!神経障害性疼痛の特別な治療

麻酔科蘇生科

神経障害性疼痛とは

ビリビリ、ジンジン、チクチクとした痛みが長く続き、この痛みによって長く悩まされ続けていませんか。いわゆる神経障害性疼痛(とうつう)と呼ばれるもので、タレントを起用した疾患啓発キャンペーンにより認知度が広まっています。神経障害性疼痛とは、さまざまな原因によって神経が異常な興奮をすることで起こる痛みのことです。病気の名前としては、三叉(さんさ)神経痛や腰痛症、頸椎症(けいついしょう)、帯状疱疹後(たいじょうほうしんご)神経痛、坐骨神経痛などがあります。

神経障害性疼痛の誤解

ビリビリ、ジンジンした痛みで病院へ行くと、「これは脳にしみ込んだ痛みですね、治療は困難だし、時間もかかりますよ」とか「ただの痛み止めでは治らないですよ」と医師から言われたことがありませんか。「脳にしみ込んだ痛みって、この痛みは存在しないの?」「痛み止めではなく精神病の薬が処方されているし、ウソだと思われているのかな?」と、誰でも少し不安になりますよね。

神経障害性疼痛は、痛みが長く続くと多くの要因が複雑にからみ、痛みをより感じやすくなり、さらに痛みが増す悪循環が生じるといわれています(図1)。それに応じたさまざまな対処法や治療法が必要とされます。したがって、痛み止めの薬を飲んで、すぐに治まる痛みとは違うということを説明するのに「脳にしみ込んだ痛み」という表現がされているのであって、決して痛みそのものを疑っていたり、ウソだと思っていたりするわけではないのです。

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図1 痛みの悪循環

神経障害性疼痛の治療方法

神経障害性疼痛の治療には、①薬による内服治療(薬物療法)、②神経の近くに針を刺して薬を注射する治療(神経ブロック療法)の2つがあります。

①神経障害性疼痛の最新の薬物療法

薬による内服治療としては、痛みの悪循環を断つわけですが、精神病の薬である抗うつ薬が神経障害性疼痛に効果があるということは経験的に古くから知られていて、その仕組みも少しずつ解ってきました(図2)。皮膚から痛み信号が入ると、脳が「痛い」という信号を受けとります。痛みに関する神経の経路には、「痛い」という信号を脳に伝える経路と、逆に「痛い」という信号を抑える経路(痛くないですよという信号)の2つがあります。皆さんが普段経験する痛みは、「痛い」という信号が脳に伝わった後、「痛い」という信号を抑える信号が逆に伝わることにより痛みが治まります。しかし、神経障害性疼痛が長引いている患者さんでは、この「痛い」という信号を抑える経路に異常が生じていて、痛みが治まらず長引いているのです。

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図2 痛みを感じるメカニズム

近年、この異常が生じている神経を正常に戻す抗うつ薬が登場しました。この薬により、長年痛みを抱えてきた患者さんの痛みを抑えることができるようになりました。ですから、これらの抗うつ薬を処方されたからといって決して心配する必要はありません。

薬物治療の副作用

しかし、抗うつ薬にも副作用があります。最も多い副作用は眠気です。他に、ふらつきや、めまい、便秘、口の渇き、頭痛などがあります。それほど症状が強くなければ様子をみますが、症状が強い場合は、薬の量を減らしたり中止したりします。また車の運転にも注意が必要です。

②神経障害性疼痛の注射による治療(神経ブロック療法)

さて、神経障害性疼痛に対しては、神経科や、整形外科、脳神経外科など多くの科が、これら薬物治療に独自の治療法を交えて治療を行っています。私たちペインクリニック科は、もともと麻酔科であり、本来は手術患者さんの痛みを取るための技術を応用します。痛い場所の神経の近くに薬を注射することで、一時的に神経の興奮を抑え、痛みで傷ついた部位を効果的に治療する方法、いわゆる神経ブロック注射を併用して痛みの悪循環を断ちます(写真1)。ただし、注射の嫌いな人には決して無理強いをしません。ほかにも、温かい光を当てる方法(光線療法)や、鍼灸や漢方薬を用いた治療法(東洋医学)なども駆使しています。

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写真1 神経ブロック注射

ここが当院の最先端

神経ブロック注射を行うとき、X線撮影を行いながら治療する方法があります。普通のX線撮影では、平面の写真しか見えないので、神経や骨の位置を正確に把握することができません。しかし、当院には、ほかの施設にはない最新のX線撮影の機器があり、立体的に神経がある場所を映し出すことが可能で、それを見ながら神経ブロック治療を行います(写真2)。

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写真2 神経ブロック治療を行うためのX線写真。左:普通のX線写真 右:立体的なX線写真

この方法で、より正確に神経の近くに針を刺し、痛み止めの薬を神経の近くに投与できるので、より効果的に痛みを取ることができます。神経を直接刺してしまったり、目的とは異なる場所に薬を流してしまうことや、不必要に多量の薬液を注入することなどの副作用や合併症を減らすことができます。

更新:2024.10.07