あきらめない傷あと・ケロイドの最新治療

形成外科

あきらめない傷あと・ケロイドの最新治療

傷あとを気にしなくてすむ生活を

顔にできた目立つ傷あと、手術後にできた痛くて赤いケロイド、これらの傷あとは精神的負担になります。治療できない、生涯向き合っていくしかない、と思っている患者さんが多いのが現状です。しかし、当院の「傷あと・ケロイド外来」では、傷あとが発生・悪化するメカニズムを研究し、各種の最新治療で、患者さんが傷あとを気にせず生活できるようになるための支援を行っています。

原因・症状

やけど(熱傷)やけが(外傷)、手術やピアスによる傷、にきび(ざ瘡(そう))や帯状疱疹(たいじょうほうしん)などの傷が、赤く盛り上がって目立つことがあります。傷が治るときに起こる炎症が、さまざまな原因で強く続いてしまうことで、目立つ傷あと(瘢痕(はんこん))ができますが、これをケロイドや肥厚性(ひこうせい)瘢痕といいます。炎症が強く、周囲の皮膚に広がっていくものをケロイド(図1)、炎症がそれほど強くはないけれど、傷の部分がなかなか引かないものを肥厚性瘢痕(図2)といいます。

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図1 典型的手術後のケロイドのイメージ
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図2 典型的手術後の肥厚性瘢痕のイメージ

ケロイドや肥厚性瘢痕が関節の部位にできてしまうと、関節が思うように動かせなくなり、引きつれた状態(瘢痕拘縮(こうしゅく))になることがあります。ケロイドや肥厚性瘢痕は、炎症が長く続く「慢性炎症」であり、赤く痛みを伴います。そのため、お酒を飲んだり、お風呂で温まったり、運動したりすると、血流が良くなって痛みが強くなることがあります。さらに、高血圧や、女性ホルモンが増える状況(妊娠など)で悪化することがわかっています。傷あとの赤さが引かない、痛みが引かないときは、このような悪化因子が何かあるのでは、と考えることが大切です。

ケロイド・肥厚性瘢痕の治療

赤く盛り上がる傷あとであるケロイド・肥厚性瘢痕は、通常は健康保険を適用して治療できます。治療の第1選択は、副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイドのテープ剤です。デプロドンプロピオン酸エステル貼付剤という薬をケロイド・肥厚性瘢痕の大きさと同じか少し大きめに切って、毎日貼ります(写真)。時間はかかりますが、徐々に炎症が引き、肌色に近い通常の傷あと(成熟瘢痕)にすることが可能です。治療開始が早ければ早いほど、治療期間は短くなりますが、例えば10年以上前の手術によるケロイドだったとしても、この貼付剤で改善できる場合が多いです。

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写真 ケロイドに貼っている副腎皮質ステロイドテープ剤

時には肌色の傷あとになるまで4~5年を要することもありますが、多くの場合、使い始めて3か月程度で痛みやかゆみといった自覚症状が改善します。さらに、必要があれば、副腎皮質ステロイドの注射を打つことも可能です。副腎皮質ステロイドによる非手術治療の欠点は、治療期間と、肌色に近くはなるものの傷あとの形が残ることがある点です。また引きつれを起こした状態では改善しにくいことがあります。

そのような場合には、手術を行うことが可能です。ただし、手術だけを行っても、その傷がまたケロイド・肥厚性瘢痕になってしまうことがあります。よって、炎症の強いケロイドに対しては、手術後に放射線治療を行い、炎症がそれほど強くない肥厚性瘢痕に対しては、術後に副腎皮質ステロイドのテープ剤を貼って再発を予防します。

成熟瘢痕の治療

ケロイド・肥厚性瘢痕に対して、健康保険を適用して、赤く盛り上がった傷あとを、肌色に近い平らな傷あとにすることが可能ですが、それでも目立ってしまうことがあります。傷あとが顔や手など目立つ部分にあったり、光沢があったり、わずかな凹凸があって質感に違和感が残る、といった場合です。そのような場合には、健康保険適用外の治療を行うことができます(図3)。

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図3 傷あとに対する治療

凹凸の強い部分のみを手術で切除、縫合(ほうごう)してしまう方法もありますが、手術しない方法では、フラクショナルレーザー治療があります。これは、レーザーで傷あとに細かい穴をあけ、皮膚の再生を促す治療です。このレーザーでは、傷あとの凹凸がなだらかになり、光の影ができにくくなることで、傷あとが目立たなくなります。少し赤みが残存する傷あとには、Nd:YAG(ネオジムヤグ)レーザーなど、血管を減らすレーザーが使用できます。

さらに傷あとにメイクアップセラピーを施行することも可能です。当院では、メイクアップセラピストによるメイクの専門外来もあり、傷あとに対する専門的なメイクアップ治療を行っています。患者さんにメイクを学んでもらうことで、いつでも自分で傷あとを目立たなくできる、という自信を持つことができ、傷あとで悩むことが少なくなります。

当科の特色 形成外科

当科は、けがややけどの治療はもとより、小耳症・口唇口蓋裂・多指症などを含む先天性疾患の手術、頭頸部がんや乳がんなど悪性腫瘍の切除後再建、なかなか治りにくい潰瘍やリンパ浮腫などに対するマイクロサージャリー手術や医療機器を用いたメカノセラピーを行っています。

さらには脂肪吸引やレーザーを用いた美容医療など、老若男女を問わず全身の外見や機能の問題を対象としてさまざまな治療に対応しています。再生医学、創傷治癒学、移植学といった最新の基礎研究と臨床が密接に結びつく特徴的な診療科です。当院では毎年1,500件近くの手術を行っています。

更新:2026.02.02