リエゾンチーム 入院中によくみられるせん妄について

精神神経科

リエゾンチーム 入院中によくみられるせん妄について

せん妄とは?

せん妄(もう)とは、軽度から中等度の意識障害を起こしている状態のことで、身体疾患の治療現場において最も頻繁に認められる精神症状の1つです。体の病気や薬、手術などが原因で起こります。

日付や時間、場所がわかりにくくなったり、「火事になっている」「誰かが部屋の外に立っている」といった幻覚や妄想が出現したり、眠れなくなったりします。その結果として落ち着かなくなる、興奮する、治療に必要な管を抜いてしまうなどの危険な行動がみられることがあります。

せん妄の対応と治療

せん妄は、意識障害の結果として脳がうまく働いていない状態であり、精神的なストレスなどが直接的な原因となるのではなく、誰にでも生じる可能性があるものです。また、原因が取り除かれれば消失するので、適切な対応、治療を行うことが重要となります。

せん妄は準備因子、直接因子、誘発因子の3つの因子が影響して発症します。準備因子は「せん妄になりやすい素因」、直接因子は「せん妄を引き起こす直接的な要因」、誘発因子は「せん妄を誘発させる、悪化や遷延(せんえん)させる(長引かせる)要因」のことであり、それぞれを「表」に示します。

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表 せん妄の3因子

せん妄を改善させるために最も重要なことは、せん妄を引き起こしている原因を取り除くことです。例えば、原因となる体の病気の治療、痛みを取り除くこと、便秘や脱水などを防ぐことが挙げられます。個々の患者さんに応じて、せん妄の原因となるリスク要因を取り除き、適切なケアや環境調整、安全対策を行っていきます。それでも十分な休息や睡眠がとれない場合には、薬を調整することもあります。

リエゾンチームの取り組み

当院のリエゾンチームは、精神神経科医師、看護師、公認心理師、精神保健福祉士で構成されています。“リエゾン”とはフランス語で「連携・橋渡し」といった意味を持ちます。当院では年間およそ1,000件の入院患者さんの相談があります。

最も多い相談内容はせん妄で、約半数を占めていますが、そのほかにも落ち込みや不安、不眠などをはじめ、複雑な社会・心理状況にある患者さんのさまざまな相談を受けています。

このように、何らかの精神心理面の問題が生じた場合に、リエゾンチームでは、体の治療と心の治療をつなぎ、各科の担当医師や看護師、緩和ケアチームなどの他医療チームと連携しながら、患者さんに対する包括的な支援を行っています。

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図 せん妄の例

更新:2025.12.12