感染制御チーム・抗菌薬適正使用支援チーム 感染対策を通じた医療安全・診療の質向上への取り組み

医療安全管理部

感染制御チーム・抗菌薬適正使用支援チーム 感染対策を通じた医療安全・診療の質向上への取り組み

●当院の感染対策を担う活動

感染制御室は、感染症や感染対策の専門的な知識を持った看護師・薬剤師・微生物検査技師・事務職・医師などの多職種で構成された2つのチームが連動し、病院内で問題となる病原体を「作らない」「広げない」活動を推進しています。

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写真1 活動風景
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写真2 感染制御室のメンバー

患者さんや家族、従業員など、病院にかかわるすべての人々を感染症から守るとともに、感染対策を通じた医療の安全・質の向上、持続可能な開発目標(SDGs)活動にも取り組んでいます。

医療関連感染(院内感染)と感染対策の歴史

医療関連感染(院内感染)対策の歴史は、1959年、黄色ブドウ球菌の院内感染と闘うため、英国で初めてInfection Control Sisterが任命されたのが始まりとされています。1963年、米国の大学で感染制御(感染管理)ナース(ICN)が任命されました。1946年以降、米国では病院感染のサーベイランス(調査・監視)、予防、制圧に取り組む組織として、米国疾病予防管理センター(CDC)が活動しています。

米国CDCと同様の役割を果たす組織として日本では、1999年にインフェクションコントロールドクター(※1)(ICD)制度、2000年にICN制度が開始され、医療現場で活躍しています。また、米国CDCの役割を果たす組織として、国立健康危機管理研究機構の創設が閣議決定され、次の感染症到来に備え、科学的な知見に基づいた迅速な感染症対応を行う体制の構築が進んでいます。

※1 インフェクションコントロールドクター:感染症や感染制御、院内感染対策を行う医療従事者

感染対策の両輪~感染制御と抗菌薬適正使用支援

当院の感染対策部門感染制御室は、2008年に開設されました。以来、感染対策を通じた、良質で安全な医療・ケアの提供による診療の質向上をめざし、患者さんや家族、従業員など病院にかかわるすべての人々を感染症から守るため、病院内のさまざまな部署と連携し、活動しています。

感染制御室は、感染症や感染対策の専門的な知識を持った多職種で構成されます。それぞれが得意な分野を担当し、連携しながら活動しています。

私たちの病院の感染対策部門の特徴は、看護師や薬剤師・微生物検査技師・事務職など、メディカルスタッフを中心としたチーム医療を展開していることです。次の2つのチームが連動し、病院内で問題となる病原体を「作らない」「広げない」活動を推進しています(図)。

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図 感染対策部門を構成する職種

①感染制御チーム(ICT)

感染管理認定看護師(日本看護協会認定)を中心としたチームです。対策が必要な病原体が院内に広がるのを防ぐため、適切な感染対策が行えるよう管理・支援・教育を行っています。

②抗菌薬適正使用支援チーム(AST)

感染制御認定薬剤師(日本病院薬剤師会認定)を中心としたチームです。薬が効かない(薬剤耐性:AMR)病原体を作らないため、抗菌薬の使用が適切に行えるよう、支援・教育を行っています。

暮らしの中の感染対策手洗いと咳エチケット

私たち人間は、多くの細菌やウイルスなどの微生物と共生しています。細菌やウイルスなどの「病原体」が体内に入り込んで悪さをする病気のことを感染症といいます。病原体は目に見えません。そのため、「汗を除くすべての体液(血液・唾液(だえき)・痰(たん)などの分泌物・嘔吐(おうと)物・排泄(はいせつ)物(尿・便)・傷のある皮膚・粘膜(ねんまく)など)は感染源となり、感染する危険性があるものとして取り扱う」という考えのもと、病原体を広げないための対策「標準予防策」を行います。

例えば、病原体に触れた手でさまざまな場所にそのまま触れると、その場所が汚染され、病原体が広がる原因になります。多様な病原体を運んでいる「手指」を衛生的に保つことはとても大切です。咳(せき)やくしゃみがあるときには、マスクなどを用いて鼻や口を覆(おお)い、周囲に飛び散るのを防ぎましょう(咳エチケット)。手洗いや咳エチケットは、病院の中だけでなく、毎日の暮らしの中で行える大事な感染対策です。

当室の取り組み 感染制御室

●感染対策はSDGsへの取り組みの1つ

持続可能な開発目標(SDGs)とは、だれ一人取り残されず、より持続可能な未来を築くため、貧困や不平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正など、私たちが直面する課題の解決をめざすグローバルな取り組みです。

SDGsで提唱された目標の1つに、目標3として「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」があります。エイズ、結核、マラリア、顧みられない熱帯病の根絶、肝炎、水系感染症やそのほかの感染症に対処することが掲げられています。

当院は、1996年からエイズ診療拠点病院であり、1998年から厚生労働省結核患者収容モデル事業に参画し、SDGs活動への積極的な取り組みを行っています。

●第三者評価を受け、感染対策のさらなる質向上に取り組む

私立医科大学病院感染対策協議会・推進会議に参画し、全国の私立医科大学病院本院との相互ラウンド(※2)を行っています。第三者からの評価を受けることで、感染対策のさらなる向上をめざしています。

また、地域医療への貢献を目的に、地域の連携病院・地区医師会・管轄保健所と、感染対策に関するカンファレンス(検討会)や実地訓練を実施しています。

2022年の病院機能評価(医療機能評価機構)では、その取り組みが評価され、「医療関連感染制御に向けた体制が確立している」として最高評価Sを受けました。

※2 相互ラウンド:相互にラウンド(回診)を実施し、感染防止に関する評価を第三者目線で行うこと

更新:2025.12.12