児童虐待(愛着障害)
精神科/児童精神科

どんな病気?
「児童虐待」という言葉が世間に広く認知されるようになり、虐待関連の痛ましいニュースを見ない日はないほどです。虐待が子どもに与える影響は多岐にわたり、たとえ虐待がなくなった後でも、その子の感覚やものの考え方、性格傾向、人との関係性、衝動のコントロール、学習能力など複雑に影響し続け、その子の本来の力を出せなくなるどころか、精神疾患の発症のリスクを高め、また次世代に虐待を連鎖させてしまう可能性がある、ということが近年分かってきています。
症状
愛着障害
幼少時から虐待的環境に置かれた子どもは愛着障害という状態を呈することがあります。愛着とは乳幼児期に主な養育者との間にできる絆のパターンで、その後の対人関係の基礎になるものです。

愛着障害のタイプ
- A 反応性愛着障害(過度に大人との情緒的な関わりや援助を求められないタイプ):
- 必要な時に必要なケアを受けることができない状態で生育すると、子どもは自分から感情を表現したり求めていくことをしなくなります。周囲の大人がケアしようとしても、甘え方が分からないので、困惑して拒絶的になったり逆にイライラして逃げたり攻撃的になることがあります。対人関係の障害を持つ自閉スペクトラム症(ASD)との鑑別が必要になったり、合併することもあります。
- B 脱抑制(だつよくせい)型愛着障害(過度に大人に人見知りなくべたべたするタイプ):
- 見慣れない大人に対しても警戒心を抱かず、逆にべたべたし、かまってもらおうとするタイプです。過度に言葉や身体的な接触を求め、落ち着きなく周囲の注目を引こうとし続けます。多動・衝動性が目立つ注意欠如・多動性障害(ADHD)と鑑別が必要になったり、合併することもあります。
検査・診断
以下の診察や検査所見を通して総合的に診断をします
- ①成育・発達歴の聴取:
- 診断をする際には必ず出生時からの詳細な成育発達歴の聴取を行います。
- ②本人の面接場面の行動観察:
- 身体や精神的な発達の状態を診察します。言動、コミュニケーション時の反応の様子やプレイルームで遊びの様子を観察したりします。
- ③身体的な一般的な検査:
- 身体的な疾患がないか、身体診察を行ったり、可能な場合は採血や脳画像、脳波など試行することがあります。
- ④心理・発達の検査:
- 知能検査や発達検査、その他の種々の心理検査を施行し、本人の知的・精神的・行動の評価をし、精神科的な診断の補助にします。
治療と経過
多方面からのアプローチ
一言で愛着障害と言っても、子ども側の要因(何らかの育てにくさ)や大人側の要因(養育者の精神的な状態、家族関係、経済的状況など)、そしてそれが混在した状況下で愛着障害を呈してしまっていることがほとんどです。
- ①ペアレントトレーニング:
- 当院では今まで「発達障害児を育てる人のための親訓練プログラム(お母さんの学習室)」や「PCIT(親子相互交流療法)」、「CARE(子どもと大人の絆を深めるプログラム)」など公認心理師と協力して養育者のエンパワーやスキル向上のプログラムに取り組んできています。
- ②環境調整法:
- 家庭や園、学校に対して介入法がないかを一緒に探します。発達障害などの障害特性をお持ちのお子さんに対しては、福祉サービスなどの利用につなげることもあります。
- ③薬物調整:
- 育てにくさの背景にADHDなどの特性や睡眠障害が隠れていることもあり、状況に応じて薬物療法を提案します。
- ④児童相談所・市町との連携:
- ケースによっては市町村や児童相談所と連携を取って治療にあたることがあります。
当院の治療の特色
連続した切れ目のない支援・多職種連携の強み
当院は児童精神科を専門とする医師に加え公認心理師や看護師、ケースワーカーや作業療法士などの多職種がいます。また、成人の精科部門もあるため、児童から思春期、その後の青年・成人期まで連続した支援や治療を提供することができることは大きな強みです。
よくある質問
子育てがつらくわが子に愛情を持てません
これも一種の愛情障害でしょうか
受診の結果、育てにくさや問題行動の背景に、愛着障害と診断されるほどではなくても愛着の問題が潜んでいることはよくあります。また、逆に「親の愛情が足りないのでは」と周囲から言われていても、発達障害の要素が強い「もともと育てにくさのある」お子さんであった、ということもあります。厳密な線引きは難しいのですが、幼少時からの発達成育歴と行動観察、さまざまな検査からある程度の見立てを行いながら介入できるポイントを探っていきます。
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更新:2026.08.14

