精神科救急病棟の紹介:年中無休で受け入れ。3か月以内の社会復帰を目指す

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精神科救急病棟の紹介:年中無休で受け入れ。3か月以内の社会復帰を目指す

精神疾患により生活の不自由さを抱える人へいつでも医療介入できるよう、入院依頼に誠実に応え、早期の社会復帰に繋げるために多職種による医療体制を整え病棟運営を行っています。

精神科救急病棟の概要

精神疾患に罹患し、生活が破綻する人は多く、統合失調症に限らず、うつ病、認知症、適応障害や自閉症スペクトラム症などさまざまな患者さんに対応しています。近年、高齢化が進み認知症患者さんの入院も増加しています。また、20歳を超えた児童思春期病棟からの移行期の患者さんも入院しており、精神科救急病棟ではさまざまな年代の人たちの入院を昼夜問わず対応しています。

入院数は、この数年は新型コロナ感染症の影響もあり、令和3年度は343名、令和4年度は276名、令和5年度は312名となっています。新型コロナウイルス流行前の入院数は概ね350名で、90日以内の早期の社会復帰を目指し日々診療、看護、ケアにあたっています。90日を超えた入院患者さんの一部に関しては、慢性期病棟へ転棟し退院支援を継続しています。病棟の特性上、措置入院や医療保護入院などの強制入院や精神鑑定の受け入れもしつつ、一時的な休養入院などを含む任意入院の患者さんの受け入れも行っています。これらさまざまな疾患、入院形態を受け入れる体制として、主治医とそれを指導する上級医、病棟医長、3名の副病棟医長が診療にあたり、看護師長1名、副看護師長2名、看護師32名、看護助手2名合計37名の看護スタッフと心理療法士・作業療法士・精神保健福祉士・薬剤師が専従となり、多職種で治療・看護を提供しています。看護体制は3交代勤務で深夜勤務・準夜勤務を4名ずつ配置し、日勤は常に12名以上で24時間切れ目なく看護が提供できる体制を取っています。睡眠・食事・排泄などの生活の質を整え、身体合併症・事故防止、安全・安心感の保障に努め、心身両側面の観察・介入と安心して医療を受けられる環境の調節を念頭に置きながら看護を行っています。

精神科救急・急性期病棟の治療の流れ

入院からの治療の流れに関しては、患者さんの状態像に合わせ、その人に合った、療養環境を提供することから始めます。自傷・他害(他者に害を与えること)や落ち着きがない不穏状態を呈する強制入院の患者さんは、まず保護室ゾーンから治療を開始します。

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治療が始まる保護室ゾーン

このゾーンでは、急性期の対応として心身の休息を主に行い、精神科治療の導入を図ることが優先されます。対人関係や、物・音などの外部刺激を調整し、適切な生活リズムに戻すことを第一に考えます。医師と患者さんの1対1の信頼関係を築きながら、薬剤治療の開始、再開、調整します。看護師は24時間交代で患者の傍で援助する強みを活かし、精神症状、身体症状、睡眠の状態、対人交流、食事摂取状況、身だしなみを整える整容などあらゆる角度からの観察と評価を行い、看護記録に記載し、他職種への情報提供を行います。入院時よりLOCUSという多面的評価を用いて患者さんのアセスメントを多職種で行い治療方針を定め、個別性を重視したケアを開始します。急性期の患者さんは、自傷他害や不穏状態を呈する患者さんも多く、精神保健指定医の指示により、やむをえず身体拘束や隔離などの行動制限を行うこともあります。これらの行動制限を開始する場合においては、切迫性、一過性、非代替性の3項目に加え、1.無害、2.善行、3.自立、4.公正・正義5.誠実・忠誠の倫理原則を常に念頭に置いた介入を心掛けています。必要時や定期的に行動制限のカンファレンスを開催し、タイムリーな患者の状態評価と適切な介入を選択していきます。

急性期を脱した患者さんは、徐々に対人刺激など経過を見ていくために、個室ゾーンや、2人部屋、4人部屋ゾーンへと移行していきます。
急性期の個別中心の疾病教育や作業療法から、患者さんが地域でできるだけ長く自分らしい生活ができるように、精神科退院前訪問指導、服薬自己管理、集団での疾病教育の実践や作業療法を並行して行います。

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ここでは、多職種の強みを活かしたそれぞれの活動が、日々の生活の中でどのように生かされているのか、逆に、不足していることがなんであるかをそれぞれ職種の目線で観察し、他職種へと情報提供し退院に向けた準備を進めていくことになります。看護スタッフでは、昨年度から患者さんをプラスに変化させていくストレングスに着目した看護過程の展開に取り組んでいます。また、クライシス・プランの作成にも取り組んでいいます。クライシス・プランとは、安定した状態を維持し、病状が悪化した際の自己対処と支援者の対応について病状が安定している時に患者さん本人との合意に基づき作成する計画です。急性期を脱し状態が安定してきた頃から、本人の積極的な参加を求め、必要性を理解していただき作成を開始します。治療の進行状況や、退院後の生活を見据え適宜修正と実践評価を行い、退院後に関わる多職種、サポートメンバーと共有し一日でも長い地域での社会生活を支えることができるように準備を進めています。

治療抵抗性統合失調症への介入

当病棟は、救急病棟としての役割の他に、治療抵抗性統合失調症の治療にも取り組んでいます。
その一つが、クロザピンの導入病棟としての一面です。クロザピンは、2剤以上の抗精神病薬を導入しても効果が表れない患者さん(反応性不良)や、抗精神病薬の服用による副作用の出現で、治療が困難な患者さん(耐用性不良)に対し処方される薬です。白血球の成分である無顆粒球が減少し、感染しやすくなる無顆粒球症など重篤な副作用のリスクもあり、特に導入直後に副作用の出現リスクが高く、慎重な投与が必要で、これらの副作用を早期に発見し対処できるよう、この薬を取り扱えるCPMSコーディネータを看護師12名が取得し、入院計画であるクリニカルパスを有効活用し、安全に導入できる体制を整えています。過去1年間で9名の導入を行いました。今後も県内外からの導入目的の入院も受け入れ、治療抵抗性統合失調症の治療に貢献できればと考えています。

患者さん一人一人に寄り添った治療を

入院して、スムーズに退院ができる方がいらっしゃる一方で、治療がなかなかうまく進まず、思い通りの社会復帰ができない方もいらっしゃいます。入退院を繰り返さざるを得なかったり、長期間の入院治療が必要になったりすることもあります。当院では、治療がなかなかうまくいかない方に対してさまざまな治療を提供することができます。薬物療法としては、薬の組み合わせ方を工夫したり、治療抵抗性統合失調症の患者さんにクロザピンを使用する判断を行ったりしています。また、薬物療法以外として、病気の種類によっては非常に有効な電気けいれん療法(ECT)やうつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)を選択することもできます。さらには、薬だけでは効果が不十分な心理的な問題やトラウマの問題に対しては、心理療法を選択することもあります。また、病状の不安定さに家庭環境や職場環境の影響が大きい場合には、ソーシャルワーカーを中心として、福祉的、経済的支援で可能なことがないか検討しています。さらに、退院するにあたって、身体的な不自由や、飲み込みの不自由さがある場合には、リハビリテーションスタッフと共に身体機能の回復を目指すこともあります。これらの治療の中から、患者さん一人一人にとって最適な治療を行うために、患者さんのご希望や将来の夢などに少しでも近づくように、医師、看護師、薬剤師、心理士、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなど多職種で知恵を出し合い、最適な治療を目指しています。

どんな病状が入院の理由になるか

精神科に入院が必要となる症状や状況は、さまざまです。緊急に入院しなければいけない病状は、自分あるいは誰かを傷つけたり傷つけそうになった場合で、かつ周囲の人から見て人や自分を傷つける理由が、事実と全く異なっていたり、ひどく考えすぎて極端な考え方が背景にある場合などです。例えば、統合失調症による幻覚や妄想が患者さんをとても怯えさせたり、混乱させていたり、あるいはうつ病によって将来を悲観することしかできなくなり、自殺以外の方法が考えられなくなっている場合などです。自分や人を傷つける危険性が高い場合には、知事命令の「措置入院」という形になることもあります。体調が悪いと気付けないぐらいに症状が悪くなり、入院治療の必要性を理解できない場合には、精神保健指定医の判断で「医療保護入院」という形を取ることもあります。

緊急ではない入院としては、気分が不安定な時、時々大声を出して興奮してしまう時、周囲の人への迷惑行為をやめることができない時や、死にたい気持ちが強くなっている時などで、診察した医師が精神疾患が原因であると判断した場合には入院が必要になります。例えば、お薬の飲み忘れやストレスになる出来事により、病気の症状が悪くなった場合などです。その他、外来治療中の患者さんが、家事などの負担を減らしてゆっくり休みたい場合などに入院となることがあります。これらの場合、病状によって「医療保護入院」となる場合もありますし、ご本人が入院治療の必要性について十分な理解ができれば「任意入院」になる場合もあります。外来の主治医と話し合いながら入院のタイミングを決めることもありますが、危機的な状況の時には緊急入院になることもあります。

倫理的な配慮について

精神科の入院について、読者の皆様はどのようなイメージをお持ちでしょうか。少し強制的な、怖いイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか。

精神科の治療を行っていると、治療する側として常に葛藤があります。精神科の病気をお持ちの患者さんの場合、脳の障害により「自分が病気である」と自分で気が付くことができないことが多々あります。そのような患者さんにとっては、無理やり希望しない入院をさせられて、自分ではそう思ってもいないのに「病気だ」と決めつけられて、飲みたくない薬を飲まされる、ということは非常に苦痛なことだと思います。無理やりの治療は可能な限り避けるべきと思います。一方で、精神科の病気は、治療が遅れると脳へのダメージが進行して脳に後遺症が出てしまうことがあります。このため、「患者さんに無理やり何かをして、心にご負担をかけたくない」という思いと、「一刻も早く治療をして脳へのダメージを最低限にしたい」という思いで葛藤しながら治療にあたっています。薬や治療に抵抗がある患者さんには、治療の必要性についての十分な説明と、事前の治療内容の告知を行った上で、やや抵抗がある状況でも投薬をさせていただき、治療につながる端緒を作らざるを得ないこともあります。多くの患者さんは、薬が効いてくることで、「自分がちょっと具合が悪かった。」ということに気が付き、お薬も拒否せずに飲んでいただけるようになります。

いずれにせよ、私たちは常に治療の方法について、倫理的側面について常に葛藤し、患者さんそれぞれに見合ったタイミングで、適切な治療が行えるよう検討しています。

更新:2026.08.14