基礎情報

概要

パーキンソン病は、脳の指令を伝えるドパミンと呼ばれる物質が減ることによって起こる病気で、動作がゆっくりになる、筋肉がこわばる、体が動かしにくくなる、震える、転びやすくなるといった症状が見られます。指定難病の1つで(難病情報センター/https://www.nanbyou.or.jp/entry/169)で、医療費の助成等を受けることができます。以前は10年経過すると寝たきりになるといわれていましたが、現在は効果的な薬もあり、早期に発見して治療を開始すれば、健康な状態で日常生活を送れる期間が長くなってきています。

50歳以上で発症することが多いですが、まれに40歳代以下の若い人でも発症することがあり、若年性パーキンソン病と呼ばれています。

人口10万人に対して100人~150人くらいの患者さんがいると考えられていますが、加齢に伴って発症する人が多くなり、高齢社会において、パーキンソン病の患者さんは増加傾向にあります。

原因

私たちが体を動かすとき、脳から全身に運動の指令が伝達されることによって、思った通りに体が動きます。この運動の指令を伝達するのがドパミンという神経伝達物質ですが、このドパミンを作るドパミン神経細胞が減ることによって起こるのが、パーキンソン病です。ドパミンは、脳から送られる運動の指令がスムーズに伝わるように調節する働きを持っているので、年をとると体が動かしにくくなるのは、このドパミンが自然と減少するためです。ドパミンの減少スピードが異常に速いため、体の動きに障害が現れる病気がパーキンソン病です。

ドパミン神経細胞がどうして減少するのかなど、まだ解明されていないことも多いのですが、ドパミン神経細胞の中に蓄積する、αシヌクレインと呼ばれるタンパク質が関係していると考えられています。

そのほかの原因は、生活習慣病も含め、今のところわかっていません。遺伝性ではありませんが、若年性パーキンソン病の一部が遺伝性で、患者さんの家族からパーキンソン病の発症に関わる遺伝子が発見されています。

図
図:体を動かすときの脳の働き

症状

代表的な症状は、次にあげる4つの運動症状です。

① 手足の震え
じっとしているときに、手足が細かく震えます。
② 動作緩慢(かんまん)
動きが遅くなり、細かい動作がしにくくなります。歩く速度が遅くなり、歩幅が狭く、腕の振りも小さくなります。
③ 筋固縮(きんこしゅく)
筋肉が固くなって、手足や指先などがスムーズに動かしづらくなります。他人が手足や頭部を動かしたときに筋肉に抵抗を感じます。
④ 姿勢反射障害
体のバランスが取りづらくなり、重心がぐらついて、転びやすくなります。

上記の運動症状以外にも、便秘や立ちくらみ、多量の汗、頻尿(ひんにょう)などの自律神経症状、幻覚や妄想、嗅覚の低下、睡眠障害、精神症状、疲労や手足や関節、筋肉の痛みなどの症状があります。これらの症状は、運動症状よりも早い段階から現れることがわかっています。

パーキンソン病は、ゆっくり進行する病気で、診断されてから20年で8割が認知症になるという説もあるため、気になる症状があったら、医師の診断を受けることが大切です。

検査・診断

問診や触診によって、パーキンソン病の代表的な4つの運動症状があるかどうか、いつ頃からどのように進行したかを確認します。

パーキンソン病の代表的な症状は、脳や神経などの病気や薬物の副作用でも起こるため、画像検査、血液検査、尿検査でほかの病気ではないことの鑑別診断が行われます。

さらに、ドパミン補充療法と呼ばれるパーキンソン病の治療を行ったときに、効果があるかどうかを調べます。

こうした検査の結果、厚生労働省による診断基準を満たしていた場合に、パーキンソン病と診断されます。

治療

パーキンソン病の治療の基本は薬物療法で、代表的な薬は、レボドパとドパミンアゴニストという内服薬です。レボドパは、脳内でドパミンに変化して減少したドパミンを補う、速効性の高い薬です。アゴニストはドパミン神経細胞を介さずにドパミン作用を補う、安定した効果の得られる薬です。近年、アゴニストには、24時間効果が持続する貼り薬が登場しています。

ほかにもいくつかの種類の薬があり、患者さんの症状によって複数の薬を組み合わせて服用します。

薬物療法には、吐き気や食欲不振、便秘、眠気、幻覚、むくみなどの副作用があります。また、長期間服用すると、一日のうちに薬が効いている時間が短くなったり、効果が突然消えたり現れたりといった現象が起きることがありますが、こうした場合はすぐに主治医に連絡し、薬の量や服用する回数を調節して改善します。

手術療法

薬物療法を行っても、副作用が強い、症状のコントロールが難しいという場合には、手術という選択肢がありますが、根本的に治すことはできません。

手術にはいくつか種類がありますが、脳深部刺激療法という、脳の奥のドパミンに関係する部位に電極を埋め込んで、弱い電気刺激を与えて運動機能を改善する方法が主流です。

更新:2022.08.22