基礎情報
概要
心臓は4つの部屋で構成される筋肉(心筋)の袋のようなもので、24時間休みなく全身に血液を送り続け、体が必要とする酸素と栄養を運び届ける役割を担っています。4つの部屋は右心房、左心房、右心室、左心室で、左右の心房、心室の間は心室中隔という壁で仕切られています。
心筋症とは、この心臓の筋肉に異常が生じ、全身に血液を送り出すための機能が低下する進行性の疾患で、突然死を起こしやすいとされています。心筋症には原因が特定できない特発性(とくはつせい)心筋症と、原因が特定できる特定心筋症がありますが、一般的には特発性心筋症のことを心筋症と呼びます。
特発性心筋症の代表的なものは、拡張型心筋症(特発性拡張型心筋症/難病情報センターhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/3987)、肥大型心筋症(難病情報センターhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/177)、拘束型心筋症(難病情報センターhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/100)の3つで、いずれも指定難病に認定されています。
拡張型心筋症
心筋が次第に薄くなって心室が拡張し、心臓の収縮力が弱くなります。
肥大型心筋症
心筋の一部が異常に分厚くなり、心室内が狭くなります。
拘束型心筋症
心筋が硬くなり広がりにくくなることで、心室の拡張や心肥大はなくても血液が流れ込みにくくなります。3つの心筋症の中では、もっともまれな疾患です。
原因
特発性とは原因が不明という意味で、心筋症は一般的には原因が特定されていません。
しかし拡張型心筋症に関しては、家族性(血縁関係のある家族に同一の疾患が認められる)の場合があるため、遺伝子の異常で発症することがあると推定されています。
肥大型心筋症では、家族性の約半数で遺伝子の変異が認められていますが、残りの約半数の原因は不明です。
拘束型心筋症の原因は分かっていません。
症状
症状は心筋症の種類によって違います。
拡張型心筋症
心臓の収縮力が弱くなると、全身に血液を送り込むことが難しくなるため、動悸(どうき)、息切れ、疲れやすい、むくみといった心不全の症状が起こります。症状が進むと肝機能が低下するために黄疸(おうだん)が出たり、心臓に血液がたまりやすくなるため血栓ができ、脳梗塞(のうこうそく)を引き起こしたりすることもあります。不整脈を起こすことで、重篤な場合は命を失う危険もあります。
肥大型心筋症
心室が狭くなっても心臓の収縮力は保たれますが、正常な血流は阻害されます。症状の起こり方はさまざまで、無症状で将来に心配のないものから、重い場合には心不全の症状が起こる場合もあります。
梗塞型心筋症
疲れやすい、呼吸がしづらい、むくみなどの症状が起こりますが、症状が出ないこともあります。進行すると、肝臓や脾臓(ひぞう)が腫れて大きくなり、腹水がたまります。不整脈の発症も起こりやすいとされています。
検査
心臓の状態を調べるために、心電図検査、超音波(エコー)検査、胸部X線検査などが行われ、心臓の形や大きさ、心筋の厚さ、収縮力などが調べられます。
より正確な診断を行うためには、胸部CT/MRI検査、心臓カテーテル検査、心筋シンチグラフィー検査(心臓に流れ込む血液を画像化するために放射性同位元素の検査薬を注射し、ガンマカメラで撮影した画像で診断を行うもの)などが行われます。
心臓カテーテル検査においては、足の付け根などから入れた医療用の細くて柔らかい管を心臓まで到達させて造影剤を注入しX線検査を行いますが、同時に心臓の細胞の一部を採取し、顕微鏡で細胞レベルの変化を観察して診断します。
心筋症を発症すると、合併症として重症心室性不整脈が見られることがあるため、ホルター心電図(体に装着可能な小型の心電計で長時間の心電図を記録する)検査が行われることもあります。
治療
心筋症の治療は、基本的に薬物療法が中心となります。
激しい運動を避けるなど、身体活動の制限が必要となります。その上で進行を抑えるために、塩分や水分の摂取を制限します。
体にたまった水分を排出するために利尿剤、血管を広げて心臓の負担を軽くするためのACE阻害薬などの血管拡張剤、心臓を休ませるためのβ遮断薬などの薬物での治療が行われます。
拡張型心筋症において重症心室性不整脈がある場合にはペースメーカー(皮下に埋め込み、心筋に電気刺激を与えて心臓を動かす機器)による治療や、拡張した心筋の一部を切除する手術も検討されます。しかしながら、心臓移植手術以外に、根治できる治療法は確立されていません。
更新:2022.05.16