気管支喘息
基礎情報
概要
空気の通り道である気道や気管支に、慢性的な炎症が生じることにより、気道がむくんで狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。炎症が起こっている患者さんの気道はとても過敏になっており、健常者では問題ないホコリやダニ、ペットの毛、たばこの煙といったアレルギー物質に敏感に反応し、時に呼吸困難を伴うような発作を起こします。
子どもの病気と思われがちですが、成人になってから発症する人も多くいます。成人ぜんそく、40~60歳代での発症が多く、成人ぜんそくの全患者の半数以上を占めています。小児ぜんそくの患者さんは成長するにつれて症状は緩和していきますが、約30%は成人ぜんそくへ移行するといわれています。
患者数は、治療を受けていない潜在的な患者さんも含めると450万人ほどいると推測され、一般的で身近な病気です。近年は、家屋の建材に含まれる化学物質、食品添加物、過労やストレスなど、ぜんそくを誘発する要因が増え、患者数は増加傾向にあります。
原因
アレルギーが主たる原因の一つとされています。気道の粘膜が刺激に対して過敏になっているという遺伝的体質を持っていると、ハウスダスト、建築材に含まれる化学物質、ダニ、花粉、ペットの毛などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)によって刺激され、気道に炎症を起こし、発症すると考えられています。これを「アトピー型ぜんそく」と呼びます。アレルゲンが特定できない「非アトピー型ぜんそく」もあります。たばこの煙、解熱剤や鎮痛剤などの薬、風邪(かぜ)、過労やストレス、運動、排気ガス、気圧の変化なども発症原因に挙げられます。近年は、清潔過ぎる環境もぜんそくを発症させる要因になっているといわれています。薬物によって引き起こされるぜんそくは「アスピリンぜんそく」と呼ばれています。実際には複数の誘因が絡み合って引き起こされると考えられます。
症状
咳(せき)が出て呼吸が苦しくなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が呼吸器から聞こえる喘鳴(ぜんめい)を伴う発作が起こります。胸の痛み、喉(のど)の違和感などの症状が現れることもあります。発作は日中より就寝時や明け方にかけて起こりやすく、息苦しさから目が覚めたりもします。また、季節の変わり目、疲労やストレスがたまっているとき、激しい運動の後などにも起こりやすいのが特徴です。
咳のみが主症状の咳ぜんそくも増加しています。咳が続きますが呼吸機能は正常で、呼吸困難も喘鳴もないぜんそくです。
ぜんそくの発作が重症化すると、チアノーゼ(血中の酸素不足で皮膚が紫色を帯びること)や意識障害が生じることもあります。ごくまれに呼吸不全が起こり、死に至ることもある侮れない病気です。ぜんそくによる死亡は年間1000~2000人ですが、ほとんどが65歳以上の高齢者です。
検査
まずは肺機能の検査をします。スパイロメトリーと呼ばれる検査で、スパイロメーターという機械を使って行います。計測器とつながったマウスピースを装着し、息を思いきり吸ったり吐いたりして、肺活量や1秒間に吐き出せる呼気の量などを測定します。
呼気ガス検査も欠かせません。呼気に含まれる一酸化窒素の濃度を測定し、気道の炎症の程度を調べることができます。
喀痰(かくたん)検査も行われます。ぜんそく患者さんは痰に含まれる好酸球が増加しており、ぜんそくに見られる特異的な物質が観察されます。この検査は結核など、ほかの呼吸器の病気の可能性を除外する上で必要です。
ほかに、血液検査や胸部X線検査なども必要に応じて行われます。
治療
治療の中心的な役割を果たすのが吸入ステロイド薬です。薬は、発作が起こらないように日々の状態をコントロールするコントローラー(長期管理薬)と、発作が起こったときに緊急的に使用する即効性の高いリリーバー(発作治療薬)の2種類に分けられます。重症度によってそれぞれ使用する薬が異なります。
コントローラーには主に気道の炎症を抑えるステロイドの吸入薬が使用されます。吸入薬のほかに、抗ロイコトリエン薬や気道を広げるテオフィリン製剤などの薬剤を組み合わせた投薬治療が行われます。
リリーバーに使用するのは、狭くなった気道を速やかに広げて発作を抑える薬で、短時間作用型β2刺激薬を吸入します。
重度の発作が起こった場合には、速やかに病院を受診しましょう。病院ではテオフィリンの点滴やステロイドの全身投与、アドレナリン皮下注射、血中酸素濃度が低ければ酸素吸入も行われます。チアノーゼや意識消失などが起こったら、人工呼吸器を装着することもあります。
予防
発作を引き起こすアレルゲンが特定されている場合は、それらを極力避ける生活をすることです。ハウスダストがアレルゲンなら、こまめに部屋の掃除や寝具の洗濯をし、動物の毛なら、ペットの飼育は避ける方が無難です。
乾燥した空気を過剰に吸い込むと、発作を誘発することがあるので、過度な運動は避け、天候や気圧の変化に注意を払い、添加物の多い食品、食飲や喫煙はできる限り控えましょう。ストレスを抱えないように規則正しい生活を心がけることが大切です。
更新:2022.05.26