基礎情報

概要

口唇口蓋裂は、先天性異常の一つであり、うわくちびる(上口唇(じょうこうしん))やうわあご(上顎(じょうがく))が割れた状態で生まれてくる疾患です。

日本人の発生率は約500人に1人で珍しい病気ではありません。最近は、出生前の超音波検査で口唇口蓋裂が見つかることも増えています。

口唇が割れたものを「口唇裂」、口蓋(口の中の天井部分)が割れて鼻とつながっているものを「口蓋裂」、歯ぐき(歯槽骨(しそうこつ))が割れているものを「顎裂(がくれつ)」と言います。割れている場所や、割れ目(裂)の程度でさまざまな種類があります。

図
図:口唇口蓋裂の種類

治療

口唇口蓋裂は、歯並びやかみ合わせの異常、言葉の発音の異常(構音障害(こうおんしょうがい))、中耳炎になりやすいなど、外見上の問題以外にも、様々な問題があります。そのため口唇口蓋裂は、形成外科、小児科、矯正歯科、小児歯科、補綴(ほてつ)歯科、耳鼻咽喉科、言語聴覚士など、さまざまな専門家が協力し合って治療することが必要です。

上手に哺乳ができない場合

哺乳しやすくするために、口蓋床(こうがいしょう)(ホッツ床)という入れ歯のようなプレートを装着して口蓋裂を遮断します。鼻の変形が強いときは、同時にNAM(ナム)という鼻を持ち上げる矯正装置を装着します。

口唇裂の形成術

通常は生後3~4か月に、口唇や鼻の形態を改善するための最初の手術を行います。この手術では、単に皮膚同士を縫い合わせるだけでなく、離れている口唇の筋肉を正常に近い位置に移動させてつなぎ合わせていきます。

口蓋裂の形成術

口蓋裂の手術は、発音を覚え始める前の1歳~1歳半頃に行います。口蓋の前方の骨があるところを硬口蓋(こうこうがい)、後方のやわらかい所を軟口蓋(なんこうがい)と呼び、軟口蓋には筋肉があり、発音するときに鼻から空気が漏れないようにする機能(鼻咽腔閉鎖機能(びいんくうへいさきのう))があります。口蓋裂の手術は、裂を塞ぐだけでなく、軟口蓋が正常に機能するように筋肉をつなぎ合わせることが重要です。中耳炎がある場合は、同時に鼓膜チュービングを行います。

言語管理

口蓋裂形成術後、正常な発音ができるように言語訓練を行います。言語管理は、子どもの喉(のど)の奥の成長に伴って、中高校生くらいまで続けていきます。また、鼻咽腔閉鎖機能に問題が残る場合は、手術(咽頭弁形成術(いんとうべんけいせいじゅつ)など)が必要になります。

咬合管理(こうごうかんり)

口唇口蓋裂では、顎裂や上顎が小さいことにより、歯並びやかみ合わせの異常がよくみられ、赤ちゃんのときから虫歯予防も含めて歯並びの治療を行っていきます。
顎裂がある場合は5~10歳頃に、腰から採取した骨髄(こつずい)を顎裂に移植して上顎の骨を安定させる手術(腸骨海綿骨移植術)を行います。また、上下の顎のバランスが悪い場合は、上顎と下顎の骨を切って移動させる手術を顎の成長が終わってから行うこともあります。長い場合は、20歳くらいまで噛み合わせの管理を行うことになります。

口唇、鼻の修正

成長とともに口唇や鼻の変形が目立ってくることがあり、この場合は修正術を行います。その方法や時期は、変形の程度によって異なります。

更新:2022.08.25