生活を維持しながら治療― がんの薬物療法は通院で受ける時代です
外来化学療法センター 薬剤部
抗がん剤治療は通院でできるの?
かつては入院で行うことが多かったがん薬物療法(抗がん剤治療)も、今はほとんど外来通院で受けることが可能です。治療のスケジュールは使っている薬によっても異なりますが、多くの場合は数週間に一度来院して、担当医の診察で効果や副作用の状況を確認しながら、外来通院での点滴や飲み薬による治療を行うのが一般的です。点滴薬の場合は、外来エリアの一角にある外来化学療法センターで治療を行っています。
もちろん、仕事を続けながら治療を受けたり、農作業・家事や育児・趣味の活動などをしながら通院治療を受けている患者さんもたくさんいます。私たち外来化学療法センターのスタッフは、皆さんががんの治療のためにこれまでの生活をすべて諦めたり変えてしまったりするのではなく、可能な限り今までの生活を維持しながら、がん治療を続けていくことが大切だと考えています。
当院は外来化学療法センターに、外来通院での抗がん剤治療の専用室としては県下でも多い、ベッド数25床を備え、多数の専任スタッフがおり、治療水準・経験数・患者満足度のいずれにおいても高いレベルを達成していると自負しています。
がん化学療法の進歩はめざましく、高い専門性が要求されます。がん化学療法を受ける患者さんの数は年々増加していますが、私たちは滋賀県のがん診療連携拠点病院として滋賀県のがん患者さんの期待に応えるべく、がん化学療法に関する業務の充実・改善に努めています。通院での抗がん剤治療でも、安心して受診ください。
治療の副作用が心配という方へ
近年は、副作用を抑えるための吐き気どめやしびれを軽減するための工夫が進歩したおかげで、抗がん剤の副作用は飛躍的に軽減できるようになりました。
副作用の中には、血液検査やX線検査で測定できないものもあります。例えば、がん治療に使う薬の中には食欲不振や手指のピリピリしたしびれ感が出る薬がありますが、血液検査などで食欲の有無や、しびれ感の強さを測定する方法はありません。ですから、治療中もどのような症状があるのかを我慢して1人で抱え込んでしまうのではなく、「このような症状がある」「こういうことに困っている」ということを遠慮せずスタッフにお伝えください。
がんの薬物療法では、できるだけ治療の効果を高めるためにどうしてもたくさんの量を使う必要があり、その副作用を完全にゼロにすることは簡単ではありませんが、極力副作用を抑えつつ治療を続けられるように、主治医やスタッフと相談して、薬の種類や量などを調整しながら治療を進めていきます。
通院治療中に体調に変化があったり、相談したいことがあるときは?
通院での治療を始める前に、外来化学療法センターに在籍している専任の看護師や薬剤師が、皆さんの抗がん剤治療中の日常生活で気をつけていただきたいこと、過ごし方の工夫、困ったときの対処法などについての説明をします。外来化学療法センターに在籍している看護師や薬剤師は抗がん剤治療のプロフェッショナルですので、ささいなことや気になることは何でも相談ください。
また、当院には精神科医や臨床心理士、介護福祉や医療費の問題の相談ができるがん専門相談員やソーシャルワーカー、食事や栄養について一緒に考える管理栄養士、リハビリテーションや手術後のリンパ浮腫の専門家、遺伝に関係するがんの相談を行う認定遺伝カウンセラーなど、多数のがんに関わる職種の専門家が在籍しています。一人ひとりの病状や生活の状況に応じて、外来化学療法センターのスタッフからこれらの専門家チームに情報共有ができるように綿密な連携をとっています。
私たちはがん治療にあたる皆さんが、できるだけ苦痛や不安のない日々を過ごせるようにお手伝いしたいと考えています。抗がん剤治療そのものに関する疑問でなくても、がんの治療中に出てくる悩みや気になることを誰に相談すればよいのか分からないときは、ぜひスタッフに声をかけてください。
更新:2024.10.04