たいじょうほうしん

帯状疱疹

概要

子どもの頃にかかった水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、水ぼうそうが治った後も体の神経節に潜伏し、数年から数十年後に免疫力の低下が引き金となって帯状疱疹を発症させます。帯状疱疹にかかると体の片側に帯状に赤い発疹や水ぶくれができて強い痛みが生じます。かつては50歳以上の人に多い病気でしたが、近年では若年層にも増加傾向が見られます。

要因の一つとしては、2014年に始まった乳幼児への水ぼうそうワクチンの定期接種によって、水ぼうそうにかかる子どもが減少し、患者に接することで免疫が強化されるブースター効果が低下したことが挙げられます。現在では、帯状疱疹はどの年代にも起きる病気となり、一生に一度しかかからないといわれていたのが、再発も珍しくなくなってきました。

図
図:帯状疱疹発症のメカニズム

原因

水ぼうそうが治っても、原因となったウイルスが死滅したわけではありません。体内の感覚神経の神経節に、この水痘・帯状疱疹ウイルスは潜伏しています。通常は、体の免疫力によって抑え込まれているこのウイルスですが、過労、ストレス、加齢などの要因によって免疫力が低下すると、再活性化して帯状疱疹を発症させます。つまり、一度水ぼうそうにかかったことがある人は、誰でも帯状疱疹を発症する可能性があり、50歳代から発症率が高くなり、80歳代までに3人に1人がかかるといわれています。高齢になるに従って患者数が増えるのは、加齢などにより免疫力が低下するためですが、若年層でも過労や不規則な生活、ストレスなどから免疫力が低下すると、帯状疱疹にかかりやすくなります。また、がんや膠原病(こうげんびょう)などで免疫力が低下している人や、糖尿病を患っている人などは帯状疱疹を発症することがあります。

症状

帯状疱疹は皮膚に発疹が出る前から、体の左右どちらかの側にピリピリ、チクチクとした痛みや違和感が生じる前駆痛が起こります。このような前駆痛が3〜7日ぐらい続いた後に、赤い小さな発疹が現れます。ただし、前駆痛がほとんどなく、発疹と痛みが同時に現れる人もいます。発疹が現れる部位は人によって異なり、頻度が高い部位は、胸や腹部、頭部などです。体の左右どちらかだけに、神経に沿って帯状に症状が現れるのが特徴ですが、中には発疹が体の広範囲に及ぶこともあります。赤い発疹は数日で水ぶくれに変わり、やがてかさぶたができて治ります。治療が遅れたり、50歳以上だったりすると重症化しやすく、発疹が治まっても痛みだけが残ってしまう帯状疱疹後神経痛の経過をたどることもあるので注意が必要です。

帯状疱疹部位の症状が出やすい

1位
胸・背中上部…胸神経が通っている胸や脇の下は一番症状が出やすい部位。
2位
腹・背中下部…肋間(ろっかん)神経が通る腹部に近い周辺で起こる。
3位
顔・頭…顔の三叉(さんさ)神経が通る額、目、鼻などに見られる。

治療

受診のタイミングは、前駆痛や体の片側に痛みや発疹が現れたときです。目安として、発疹が現れてから72時間以内の受診が望ましいとされています。発疹と痛みの症状から帯状疱疹と診断されると、基本的な治療は薬物療法になり、抗ウイルス薬と鎮痛薬の飲み薬が処方されます。抗ウイルス薬で体内のウイルスの増殖を抑え、鎮痛薬は炎症と痛みを和らげます。72時間以内に服用を開始すれば、痛みや皮膚の状態が早めに改善され、合併症や後遺症である帯状疱疹後神経痛に移行するのを抑える効果も期待できます。症状によっては急性期の痛みや炎症にステロイド薬を使う場合もあり、飲み薬のほかに、塗り薬として非ステロイド性の消炎鎮痛薬や抗生物質の軟膏などが処方されることもあります。こうした処方薬は医師の指示に従って最後まで使い切ることが重要です。

予防

帯状疱疹の予防には、ワクチンの定期接種が効果的です。50歳以上の人を対象にした帯状疱疹予防のワクチンは2種類あります。一つは、水痘ワクチン「ビケン」で、1回接種すれば効果は約5年から10年継続します。費用はおおよそ4000〜1万円で自費になります。もう一つは、2020年から接種がスタートした帯状疱疹ワクチン「シングリックス」です。2カ月の間隔を空けて2回接種します。新しいワクチンのため、まだデータ収集中ですが、予防効果は10年ほど続くといわれています。費用は2回分の合計が3万6000円~5万円で自費です。自治体によっては、これらのワクチン接種に助成制度を設けているところもあります。

更新:2022.05.24