こうとうがん

喉頭がん

概要

喉頭(こうとう)は、喉仏(のどぼとけ)の内側にあり、声を出す機能を持つ部位で、この部分に発症するがんが喉頭がんです。喉頭がんは、がんが発生する場所によって、声帯にできる声門(せいもん)がん、声帯より上方の声門上(せいもんじょう)がん、声帯より下方の声門下(せいもんか)がんの3つに分けられ、声門がんが全体の約6割を占めています。次いで声門上がんが約3割、その他が声門下がんという割合です。60歳以上に発症率が上昇し、10万人に3人程度で男性が圧倒的に多いのも特徴の一つです。

喉頭は、声を出す、食事をする、呼吸をするといった日常動作と深く関わる部位だけに、がんを発症して機能が不十分になると、普段の生活に大きな影響を与えることになります。QOL(生活の質)の著しい低下を避けるために、治療法については慎重な検討が必要で、機能をなるべく損なわないようにしながら、場合によっては機能回復の方法を追加する治療も行われます。

図
図:喉頭がんの種類

症状

喉頭がんは声帯を含む部位で発症しますが、がんができる場所によって初期症状が異なります。

声門がんは、声帯に腫瘍ができるため、ほとんどの場合で声がかれたり、かすれたり、低いガラガラ声になるなどの症状が現れます。がんが進行すると、痰に血が混じったり、息苦しさを感じるようになります。

声門上がんは、喉に何かが詰まっているような違和感を覚えるほか、いがらっぽさや、食べ物を飲み込むときのしみる感じ、喉の痛みを生じることがあります。初期段階では声がかすれることがないため、発見が遅れてしまいがちになり注意が必要です。

また、声門下がんも初期症状が現れにくいがんです。声がれや、食べ物を飲み込むときに引っかかりを感じることが長引くようなら、速やかに医療機関を受診することが大切です。

原因

主な原因は喫煙とされ、喉頭がん患者さんの90%は喫煙者であるという報告もあります。継続的な飲酒もリスク因子の一つで、喫煙と飲酒の両方の習慣のある人は、おのずと発症リスクが高いといえます。

日常的に声帯に負荷がかかる職業や、アスベストを使う仕事に就く人も高リスクとなるほか、逆流性食道炎によって喉頭に常に刺激が加わることも原因の一つと考えられています。

検査・診断

喉頭がんが疑われる場合、喉頭ファイバースコープを鼻から挿入し、喉頭の内部を直接観察します。併せて首の周りを触り、リンパ節への転移がないかを確認します。がんの疑いが強まった場合には、病変部分の細胞を採取して病理検査を行い、がん細胞が確認できれば喉頭がんの確定診断となります。

がんの進行度や広がりの度合い、転移の有無などを見るためには、超音波検査のほか、CT検査やMRI検査などの画像検査が必要です。こうした検査を行った上で、がんのステージ分類がなされます。

治療

治療法は、がんの進行の度合いなどによって、手術、抗がん剤治療、放射線治療の3つから選択するほか、それぞれの方法を効果的に組み合わせることで治療効果を高めていきます。喉頭がんは特に発声や嚥下(えんげ/食べ物の飲み込み)に影響を与えるため、こうした機能を温存するかどうかも治療法を選ぶ上での大事な要素となります。

喉頭を温存する治療を行ったあとは、発声や嚥下の機能を回復するためのリハビリテーションや、舌や喉の筋肉を強化する訓練などを行っていくことも大切です。

外科手術

手術によって、がんの病巣を取り除く方法がまず検討されます。初期の場合は、がんの部位だけを切除する喉頭部分切除術が可能で、声帯を一部残すことができます。そのため、声を失うことを避けることができます。

一方で、進行していて部分切除では済まない場合は、喉頭をすべて切除する喉頭全摘出術が必要です。この場合、声は出なくなりますが、最近では人工の発声器具の使用や、食道発声などの方法で補うことも可能になっています。また、喉頭の4分の3程度の切除にとどめることで、最低限の発声機能を残す手術方法も増えています。

放射線治療

早期の喉頭がんであれば、多くの場合で放射線治療が選択されます。喉頭は温存できますから、発声や嚥下の機能に影響を与えることはありません。

化学放射線療法

進行した喉頭がんでも、発声機能などを残すために喉頭を温存したいという場合には、放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせた化学放射線治療を検討します。ただし進行がんの場合は喉頭を残す治療が難しいことも多く、がんの進行度や広がりによっては手術を余儀なくされることが多くあります。

更新:2022.05.16