たのうほうせいらんそうしょうこうぐん(ぴーしーおーえす)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

概要

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん、以下PCOS)は、卵胞(嚢胞:のうほう)の成⻑が途中で止まり、たくさんの⼩さな卵胞が卵巣内にとどまってしまうことで、ホルモンバランスが乱れる病気です。生理が不規則になったり、男性ホルモンが多くなることで、にきびや体毛が増えるなどの症状が出やすいのが特徴です。

主に思春期から若い女性に発症しやすいとされ、妊娠を望むときに影響が出る場合もあります。PCOSは日本でも一定数の患者がいると推定されていますが、正確な統計データはまだ十分把握されていないのが現状です。

PCOSを適切に管理・治療することで、将来的な合併症や不妊のリスクを下げられる可能性があります。生活習慣の改善と薬による治療が中心となるため、早めに専門医に相談することが大切です。

図
図:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群の原因

PCOSの原因ははっきりと分かっていませんが、いくつかの要因が関連していると考えられています。

1.ホルモンバランスの乱れ
卵巣から男性ホルモン(アンドロゲン)が多く分泌される、または血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する抵抗性(※1)が高まると、体内のホルモンバランスが崩れ、PCOSの発症リスクが高まるとされています。
2.遺伝的要因
家族内にPCOSや2型糖尿病など、ホルモン代謝や血糖値にかかわる病気が多い場合、PCOSを発症しやすいと指摘する研究があります。
3.生活習慣
運動不足や高カロリーの食事などにより体重が増えると、肥満とともにインスリン抵抗性が強くなることがあります。これがホルモンバランスを乱す一因となり、PCOSを悪化させる場合があります。

※1:体がインスリンをうまく使えない状態

多嚢胞性卵巣症候群の症状

PCOSの症状は人によって異なりますが、以下のようなものが代表的です。

1.生理不順
生理の周期が極端に長くなる(35日以上あくなど)または不規則になることがあります。まったく生理が来ない無月経になることもあります。
2.男性ホルモンの増加による症状
多毛:顔や体の毛が濃くなる
にきびの増加
抜け毛が進む、または髪が薄くなる
3.卵巣の変化
超音波検査で卵巣に多数の小さな嚢胞がみられる場合があります。ただし、嚢胞がなくてもPCOSと診断される場合はあります。
4.体重増加や肥満
特におなかまわりに脂肪がつきやすいタイプの肥満の場合、インスリン抵抗性が強いとされます。
5.不妊の可能性
排卵が不規則または起きにくくなるため、妊娠しづらくなる場合があります。

上記の症状は、ほかの病気でも起こりうるため、自己判断で放置するのは危険です。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

多嚢胞性卵巣症候群の検査・診断

PCOSの診断は、主に以下のような検査や基準に基づいて行われます。

1.問診・身体診察
生理の周期や頻度、体毛の状態、にきびの有無などを確認します。また、体重や腹囲を測って、肥満の程度を評価することもあります。
2.血液検査
ホルモン検査:男性ホルモン(アンドロゲン)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)などの値を調べます。
血糖値やインスリン値:インスリン抵抗性や糖尿病のリスクを評価します。
3.超音波検査
腹部または膣の中から超音波を出す装置であるプローブをあて、卵巣の中に小さな嚢胞が複数ないかを確認します。ただし、超音波検査で嚢胞が見つからなくても、ホルモン異常など他の条件を満たせばPCOSと診断されることがあります。
4.診断基準
一般的に「生理不順や排卵障害」「男性ホルモンの増加(症状や血液検査)」「卵巣に嚢胞が多数ある」の3つのうち、2つ以上があてはまる場合にPCOSと診断されやすいといわれています。

多嚢胞性卵巣症候群の治療

PCOSの治療は、症状の緩和と妊娠を希望するかどうかによって異なります。主に次のような方法が用いられます。

1.生活習慣の改善
食事療法:高カロリー、高脂肪食を避け、バランスの良い食事をとる
運動療法:ウォーキングや軽い有酸素運動を継続し、適正体重を維持する

2.これらにより肥満が改善すると、ホルモンバランスも整いやすくなるため、PCOSの症状が軽減することがあります。

3.薬物療法
ホルモン剤(低用量ピルなど):生理周期を整えたり、男性ホルモンの影響を抑えたりする効果があります。
抗アンドロゲン薬:男性ホルモンの働きを弱め、多毛やにきびを軽減する目的で使われる場合があります。
排卵誘発剤:妊娠を希望する場合、卵巣を刺激して排卵を促す薬を使うことがあります。
インスリン抵抗性改善薬:メトホルミン(血糖値を下げる薬)などが使用され、ホルモンバランスを良好に保つ効果も期待できます。
4.外科的治療
薬物療法で効果が十分に得られない場合には、腹腔鏡を使って卵巣の表面を焼き、排卵しやすくする「卵巣ドリリング」と呼ばれる処置が行われることもあります。
ただし、症状や年齢などによって選択肢は変わるため、医師との相談が必要です。

多嚢胞性卵巣症候群の合併症

PCOSを適切に治療・管理しないままでいると、以下のような合併症が起こりやすくなります。

2型糖尿病
インスリン抵抗性の高さから血糖値が上がりやすく、将来的に糖尿病を発症するリスクが高くなります。
脂質異常症
血中のコレステロールや中性脂肪の値が乱れ、動脈硬化などのリスクが高まります。
高血圧
肥満と組み合わさることで血圧が上がりやすくなり、心臓病や脳卒中のリスクが増加します。
子宮体がん
生理が不規則だと、子宮内膜が長い間エストロゲン(女性ホルモンの一種)の影響を受け続けることになり、がんを発症するリスクがわずかに高まります。

多嚢胞性卵巣症候群の予防

PCOSそのものを完全に防ぐ方法は確立されていませんが、生活習慣を整えることでリスクを下げ、症状を軽くできる可能性があります。

1.適正体重の維持
食事の見直しや運動の習慣化によって肥満を予防し、ホルモンバランスを整えやすくします。
2.定期的な健康診断・婦人科受診
生理の異常や体毛の増加、にきびの悪化などが気になるときは、早めに婦人科や内科を受診しましょう。定期的な検査で問題を早期に発見し、対処できるようにすることが大切です。
3.ストレス管理
ストレスが続くとホルモンバランスが乱れやすくなります。十分な睡眠とリラックスできる時間を確保し、ストレスを上手にコントロールすることを心がけましょう。

更新:2026.02.04

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