卵巣腫瘍について

済生会吹田病院

産婦人科

大阪府吹田市川園町

卵巣腫瘍とは?

卵巣は子宮の左右両側にあり、ふつうは親指頭大ぐらいの大きさです。ここにできた腫瘍(しゅよう)を卵巣腫瘍といいます(図)。卵巣にはもともと役割の違う細胞があるため、できる腫瘍にはさまざまな種類があり、それぞれに、良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍があります。また良性腫瘍であっても子宮内膜症性囊胞(しきゅうないまくしょうせいのうほう)(チョコレート囊胞)や皮様嚢腫(ひようのうしゅ)(腫瘍内容物が髪の毛、脂肪、骨など)では、まれに悪性化することがあります。

写真
図 卵巣腫瘍

20㎝以上の大きな腫瘍や、悪性腫瘍のため腹水が溜(た)まると、腹部膨満感が出ます。また腫瘍が付け根で捻(ねじ)れたり(卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)、破れて中の液体などがお腹(なか)の中に漏れたりすると、下腹部に激しい痛みを起こすことがあります。しかし一般的には卵巣腫瘍は無症状のことが多く、腫瘍があるからといって月経が不順になることもあまりありません。そのため卵巣腫瘍は子宮がん検診の際や、内科を受診したときのお腹の超音波検査などで偶然見つかることが多いです。

診断と治療

卵巣はお腹の中にあるため、内診に続き超音波検査を行うことが多く、特に経膣超音波検査は、大きさや腫瘍が囊胞性(ふくろ状)であるのか、充実性(かたまり)であるのかなどを観察するのに有用です。より詳細な情報を得るために、MRIやCT検査を併用して、子宮、膀胱(ぼうこう)、直腸などの他臓器との関係、腫瘍内部の性状、リンパ節の腫大(しゅだい)の有無などを精査します。そのほかに補助診断として、血液中の腫瘍マーカーなどの検査もあわせて良性か悪性かを診断しますが、最終的な診断は手術で摘出した腫瘍の病理組織検査によって確定します。

治療は基本的には手術療法になります。画像診断などで悪性を疑う所見がなく小さいものは経過観察となりますが、良性腫瘍でもある程度の大きさがあるもの(5㎝程度)や捻転、破裂などで下腹部痛の強い場合は手術適応となります。最近は開腹手術に代わって、体に負担の少ない腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)が主流となっています。良性腫瘍のほとんどが腹腔鏡下手術の適応となりますが、お腹の中の状態によってはできないこともあるので、外来での診察や画像検査により腹腔鏡下手術が可能かどうかを検討します。

悪性腫瘍の場合はできるだけ腫瘍を摘出することが基本で、両側卵巣卵管摘出術に加えて子宮全摘術、大網切除術、後腹膜リンパ節郭清術(かくせいじゅつ)などが行われ、手術所見から進行期をより確実なものとします。癒着などがひどく摘出手術が困難なときは、腫瘍の一部を摘出し、病理組織診断のみを行います。進行の程度(病期)にもよりますが、多くの場合は術後に抗がん剤化学療法を行います。卵巣悪性腫瘍は抗がん剤が効くことが多く、初回の手術で腫瘍摘出が困難な場合でも化学療法を何回か行い、腫瘍が縮小した後に、再度手術を実施し可及的に腫瘍を摘出することがあります。

更新:2024.01.25