大腸がんについて

済生会吹田病院

消化器外科

大阪府吹田市川園町

大腸がんとは

大腸がんは日本人には比較的少ないがんでしたが、食生活の欧米化とともに近年増加しています。しかし、早期発見すれば根治率(こんちりつ)の高いがんの1つです。

大腸がんは、長さ約1・5~2mある大腸(結腸・直腸・肛門)の粘膜から発生します(図1、2)。大きくは盲腸からS状結腸までにできる「結腸がん」と、直腸から肛門までにできる「直腸がん」の2つに分けられます。その発生は、ポリープの一部ががん化する場合と、正常粘膜から直接がんができる場合があります。進行するにつれて大腸の壁に深く浸潤(しんじゅん)していき、やがてリンパ節やほかの臓器に転移します。

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図1 大腸各部位の名称
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図2 大腸の壁断

大腸がんの診断

大腸がんは通常、一番内側の粘膜にでき、次第に外側へと広がっていきます。大腸がんが粘膜、または粘膜下層までにとどまっているものを早期がんといいます。この早期がんの段階であれば、がん部分の切除によって非常に高い確率で根治します。

ただし、一般的に早期には自覚症状はほとんどないため、無症状のときに発見することが重要になります。

検診の代表的なものとして、便潜血検査があります。いぼ痔やポリープからの出血などでも陽性となるため、陽性であっても必ずしもがんがあるとはいえませんが、健康な集団の中から精密検査が必要な人を拾い上げるのには、最も有効な検査とされています。

診断の確定には大腸内視鏡検査が必須です。多少、体に負担のかかる検査ですが、技術や機器の向上により、苦痛を伴うことは少なくなりました。

大腸がんは、直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴が1つのリスク要因になります。生活習慣では、過体重と肥満がリスクを高めることも分かっています。該当する人は積極的に検査を受けることをお勧めします。

大腸がんの病期(ステージ)と治療

治療計画を立てるためには、まず詳しい検査によって病期(ステージ)を把握することが欠かせません。病期とはがんの進行の程度を表す言葉です。病期は大腸の壁の中にがんがどの程度深く入り込んでいるか(壁深達度)、周囲組織への広がり(浸潤)の程度、さらには転移の有無と程度などによって判断します。

治療は病期に基づいて決まります。大まかな概念は「図3」のとおりですが、当院では大腸がん治療ガイドラインに沿いつつ、インフォームドコンセントによって患者さん一人ひとりに応じた治療を実践しています。

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図3 大腸がんの臨床病期と治療

大腸がんは、粘膜内にとどまるような小さい早期がんの場合は内視鏡的治療の対象となりますが、それ以外の多くの場合は手術が最も有効で標準的な治療法となります。手術は大腸がんのある場所や病期によって、方法や切除範囲が変わりますが、基本的には大腸がんを含む腸管切除と周辺のリンパ節の切除を行います。従来は大きくお腹(なか)を開けて行う開腹手術が実施されてきましたが、近年は腹部に数か所の穴を開けて、専用のカメラや器具を使って行う腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)が積極的に施行されています(図4)。創(きず)が小さいため術後の痛みが少なく、癒着も起こりにくいのが長所です。全国的には大腸手術のうち72%が腹腔鏡下手術で行われていますが、当院では90%以上を腹腔鏡下手術で実施しています。

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図4 腹腔鏡補助下大腸切除術

そのほかの治療法として抗がん剤治療(化学療法)があり、根治手術後の再発を予防する目的や、手術前にがんを小さくして手術を行いやすくする目的があり、がんの転移や再発で手術の適応とならないときに行われます。抗がん剤のみでのがんの根治は不可能ですが、年々大腸がんに有効な抗がん剤治療が開発されつつあります。

また直腸がんの限られたケースで手術前の補助療法や、切除不可能な場合に症状緩和を目的として放射線治療が行われることもあります。

更新:2024.01.25