関節の痛み、関節リウマチの早期治療の重要性

済生会吹田病院

整形外科

大阪府吹田市川園町

関節リウマチ(RA)とは

関節リウマチは、国内での患者数が70万~100万人にも達する疾患ですが、その実態はあまり理解されていないようです。痛みが神経痛のようにみられ、高齢者の病気と思われたり、治療法がなく治ることのない病気と思っている方もいたりしますが、実際はそうではありません。

最近、超高齢社会のためか、国内では高齢のリウマチ患者さんが増加していますが、関節リウマチの患者さんは、実は30~59歳のまさに働き盛りの年齢で発症する方が、約70%を占めています。また20歳代の患者さんも約10%にみられます。男女比は1対4と比較的女性が多いため、患者さんは、育児、家事、仕事、介護にさまざまな不安や悩みを抱えることになります。治療では、メトトレキサートや生物学的製剤など、効果の高い薬剤が登場し、早期に確実な診断をすれば、痛みを和らげるだけではなく、関節破壊が進む前に病気を抑え、まるで治ったかのように症状が治まる「寛解(かんかい)」を維持できる治療法が確立されつつあります。

しかし、早期に診断し早期に治療を開始するには、患者さん自身が、関節リウマチの症状をよく知ることが大切で、早期に専門医を受診し関節リウマチと診断されたら、前向きに治療に取り組むことが極めて重要です。

関節リウマチの症状のもとになっている滑膜(かつまく)の炎症について述べます。関節リウマチは関節内の滑膜に炎症が生じる病気です。関節内では、骨と骨を連結するために、骨の向き合う面が軟骨でおおわれています。関節軟骨は関節をなめらかに動かす働きをしていますが、この軟骨を助けるのが滑膜です。滑膜は、関節液を分泌し、軟骨がこすれ合うときの潤滑剤や軟骨への栄養補給の働きがあります。この滑膜に異常な免疫活動が起こることで炎症が発生し、滑膜は充血し腫(は)れ、関節液を盛んに分泌します。免疫活動により発生した炎症性のたんぱく質(サイトカイン)や発痛物質が作られ、痛みや腫れが出現し、やがて骨・軟骨を破壊していくのが、関節リウマチの病態とされています(図1)。

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図1 関節リウマチの病態

関節の痛み、関節リウマチの症状とは

関節リウマチは、いきなり激しい関節痛などの症状が出る病気ではありません。超早期には、食欲がない、体がだるい、熱っぽい、体重が減るなどの症状であるため、単なる疲れかとやり過ごしてしまい、症状もいつの間にか消えることも多いため、関節リウマチの症状と気づくのは困難です。

初期の症状として注意すべきことは、朝のこわばりと呼ばれる関節のむくみ(腫れ)です。眠っている間に炎症によって関節に体液が溜(た)まり、関節が腫脹(しゅちょう)することによる症状と考えられています。このこわばりが15分から1時間も続く場合は、関節リウマチの可能性が高いと考えられます。

関節リウマチの腫れは、多くの場合、初めは手の指(指先から数えて2つ目の関節や指の付け根の関節)や手首および足指の付け根の関節に始まり、次第に足首、、肘(ひじ)、肩、股関節などの四肢(しし)の大きな関節に出てきます(図2)。また、関節リウマチの痛みは、初期では常に持続するわけではなく、良くなったり悪くなったりしながら徐々に進むことが多いです。最初は、腫れている部分を押したり、関節を動かしたりしたときに痛みを感じますが、病状が進み炎症が強くなると次第にじっとしていても痛むようになります。これらは炎症性疼痛(とうつう)と呼ばれ、関節炎による痛みです。そのほか、病状の進行によって骨破壊などが進むと炎症以外の原因で、痛みが生じます。関節運動の障害により、筋肉や周囲の組織が萎縮することで血流が悪くなるために生じる阻血性疼痛、関節軟骨が薄くなることで、骨に衝撃がかかり生じる機械的疼痛、関節の腫れが大きくなると周囲の神経が圧迫され生じる絞扼性(こうやくせい)神経障害と呼ばれる痛みなどです。

イラスト
図2 関節の症状の現れ方

これら関節や関節周囲の痛みに加え、関節リウマチが全身の結合組織(細胞と細胞の間にある組織)や血管にも炎症が起こることから、関節外症状といわれる皮膚のしこり(リウマチ結節)、目の炎症(強膜炎)、皮膚の血管炎から由来する皮疹や皮膚潰瘍(かいよう)、貧血、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)、腎障害(たんぱく尿)、間質性肺炎(多くは無症状で、時に息切れや呼吸困難)などが生じることがあり、これらの症状には注意を払う必要があります。

関節リウマチの早期治療による効果

関節リウマチの治療は、この20年で大変進歩しました(パラダイムシフトと呼ばれています)。特に治療(そのポイントは、痛みを和らげる、関節の変形や破壊を防ぐ、関節の機能を保つの3点)の中心的な役割を担う薬物療法では、以前は副作用の少ない薬から始めて段階的に強い薬へと進めていましたが、現在は関節リウマチと診断が確定したら、なるべく早期に積極的に、関節破壊を抑える効果のある抗リウマチ薬を使うことが推奨されています。その中で、2003年から生物学的製剤(炎症の原因となるサイトカインをブロックする薬剤など)が使用可能になり、現在、7種類の薬剤が開発され、臨床使用されています。

生物学的製剤は、メトトレキサートなどの従来型の抗リウマチ薬では効果が不十分な活動性の高い関節リウマチの症状を改善し、関節破壊を抑えるだけではなく、壊れた関節が元に戻る可能性が出てくるなどの効果があります。

主に薬物療法を述べましたが、ほかの治療法も併用することで関節リウマチ治療はより確実になります。関節機能障害を改善する目的で行われる人工関節を始めとする手術療法、関節機能を維持するリハビリテーションはその有効性が認められています。

私たちは、これらの治療法を併せて、早期から治療介入することで、将来にわたり、痛みのない、機能障害のない関節を維持することをめざしています。

更新:2022.03.08