最近の小児科事情

済生会吹田病院

小児科

大阪府吹田市川園町

入院しなくなった子どもたち

当院のような市中病院の病棟では小児の慢性的な疾患を扱うことは少なくなり、肺炎や胃腸炎など感染症が重症化した子どもの入院加療が中心になっています。近年は、子どもの感染症が重症化することが少なくなり、入院も減少しています。この最も大きな要因は予防接種です(表)。1歳までに接種する予防接種、特に公費負担で接種できる定期接種の数が増えました。免疫力が弱い子どもは重症化しやすく、特に新生児や乳児では、インフルエンザ桿菌(かんきん)、肺炎球菌が髄膜炎(ずいまくえん)など中枢神経にまで感染し、後遺症を残す子どもが少なからずいました。今では生後2か月から予防接種を開始して子どもたちの免疫力を高めることで、重症化だけでなく中耳炎などの感染症に罹患(りかん)する子どもも減らすことができています。

B 型肝炎
ロタウイルス感染症
インフルエンザ桿菌感染症(ヒブ)
肺炎球菌感染症
ジフテリア
破傷風
百日咳
ポリオ
結核
麻疹(はしか)
風疹
おたふく風邪(ムンプス)
水ぼうそう
日本脳炎
インフルエンザ
ヒトパピローマウイルス感染症
表 子どもがワクチンで防げる病気

予防接種がなされるようになり、麻疹(ましん)や風疹(ふうしん)を見かけることはほとんどなくなりました。任意接種ではありますが、ロタウイルスの予防接種によってひどい脱水症状に至る子どもも減りました。またインフルエンザウイルスのように新しい治療薬が次々に開発されたり、RSウイルスに対するモノクローナル抗体製剤が造られたり、医療の進歩によりさまざまな感染症の重症化が防がれています(感染症が怖い病気であるという認識が低下する危険性は伴いますが)。

熱は救急疾患?

重症化は減りましたが子どもは感染を繰り返します。感染すると免疫反応により熱が上がりますが、子どもは体重当たりの表面積が大きいため、熱が放散されやすく高熱になってしまいます。体温が上がると、免疫機能が上昇し同時に病原体の増殖能が下がります。熱を出すことで病原体をやっつけているのです。よく「高熱で頭がおかしくなる」といわれますが、熱が悪さをしたのではなく、病原体による炎症が中枢神経に及んだためと考えられます。高熱と医療機関への受診の有無は関係ありません。したがって、夜間に熱が出たからといって救急外来に行く必要はないのですが、不安になって大勢が救急外来を「コンビニ受診」した結果、けいれんや喘息(ぜんそく)といった本来の救急疾患を診る小児科救急医療体制が崩壊してしまいました。2004年、全国に先駆けて豊能地区では「豊能広域こども急病センター」を設立し、発熱など一次救急を診る体制をつくりました。この体制によって当院は、二次救急当番日以外の日は新生児医療に特化することが可能になりました。

夜間休日の救急医療の集約化によって、外来は専門外来を拡充させることができ、ほぼすべての小児科の疾患に対応可能です。自閉症スペクトラムや学習障害、起立性調節障害などの外来は予約がとりにくい状況ですが、気軽に小児科医に相談してください。

更新:2024.01.26