脳動脈瘤の治療について

済生会吹田病院

脳神経外科

大阪府吹田市川園町

脳動脈瘤とは?

脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)は、脳の動脈に生じた風船のような膨らみ(こぶ)です。小さなものは症状がないため、脳ドックなどの検診で偶然見つかることも多く、成人では100人中数人程度が脳動脈瘤を持っているとされています。脳動脈瘤が破裂すると、クモ膜下出血となります。クモ膜下出血は、突然死の原因ともなる恐ろしい脳卒中です。破裂する前に発見された脳動脈瘤は、未破裂脳動脈瘤と呼ばれます。脳動脈瘤が生じるメカニズムはまだ正確には判明していませんが、高血圧、喫煙、遺伝的な要因などが考えられています。破裂した脳動脈瘤と未破裂脳動脈瘤について、それぞれの治療法を説明します。

クモ膜下出血を生じた破裂脳動脈瘤

クモ膜下出血が生じると、約3分の1の方は即死するといわれるほど重篤な疾患です。ほとんどの場合が前述の脳動脈瘤破裂が原因です。最初の症状は、突然発症の頭痛が多いです。破裂した脳動脈瘤はたまたま止血しているだけなので、いつ再破裂するか分かりません。再破裂すると致命的であるため、再破裂を防ぐために手術が必要です。通常はクモ膜下出血を生じてから1~2日以内に手術を行いますが、全身状態などを考慮し、状態が落ち着いた時期に手術をすることもあります。

未破裂脳動脈瘤

脳動脈瘤は必ず破裂するというわけではありません。5㎜より小さな動脈瘤が1年間で破裂する確率は1%前後です。そのため小さな動脈瘤が発見された場合は、手術をしないで定期的に検査をして、大きくなってこないか経過観察することが多いです。しかし動脈瘤のできた場所や形から、破裂の危険が高いと判断した場合は、手術を検討します。

動脈瘤が5㎜より大きい場合は、破裂する危険性が高くなるため手術を検討します。いずれの場合も、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の治療や禁煙が必要です。

脳動脈瘤の手術について

開頭クリッピング術とコイル塞栓術(そくせんじゅつ)があります。開頭クリッピング術とは、動脈瘤の頚部(けいぶ)にチタン製のクリップを挟み、動脈瘤をつぶしてしまう方法です(図)。動脈瘤が完全につぶれるので、再破裂率が少なく、確実な方法です。しかし、開頭が必要であるため、侵襲(しんしゅう)(体への負担)が大きいという欠点があります。一方、コイル塞栓術は、足の付け根の動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、動脈瘤の中まで進めます。カテーテルを通して、コイルを瘤内へ詰め込んでいきます。大きなコイルから少しずつ小さなコイルを詰めていき、動脈瘤内への血流を少なくし、最終的に血栓で固めてしまう方法です。前述のクリッピングと比べ、動脈瘤内への血流を完全に遮断できないため、手術直後はやや再発が多い傾向があります。しかし開頭する必要がないため侵襲が少ないとされています。

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図 未破裂脳動脈瘤に対してクリッピングを行いました

更新:2022.03.08