胆管がんについて

済生会吹田病院

消化器 ・肝臓病センター

大阪府吹田市川園町

黄疸が出たら病院で検査を

胆道は肝内から膵内(すいない)、十二指腸乳頭部に及び、発生部位から肝内胆管がん、胆嚢(たんのう)がん、胆管がん(肝門部胆管、遠位胆管)、十二指腸乳頭部がんの4つに分けられます。その解剖学的特徴により、適切な診断や治療を行うことが困難な場合や高難度手術が必要となる場合が多く認められます。今回は胆管がん(肝門部胆管、遠位胆管)、十二指腸乳頭部がんについてお話をします。

胆道(胆管、胆嚢および十二指腸乳頭)の主な役割は、肝臓で作られた胆汁を十二指腸へと分泌することです。肝臓で作られた胆汁は肝内胆管・肝門部胆管を通り、胆嚢内に一時的にプールされます。消化管の食物通過刺激により肝外胆管に排出され、十二指腸乳頭部から十二指腸内へと分泌されます。こうして分泌された胆汁は主に、脂質の消化吸収に働いています。

胆管がんや十二指腸乳頭部がんで初発症状として一番多くみられるのは、この胆汁の分泌が障害されることによって起こる黄疸(おうだん)(皮膚や白目が黄色くなる)です。

外科的切除が唯一根治を期待できる治療

胆道がんの治療は、化学療法や放射線療法の進歩にもかかわらず、現在のところ根治的(こんちてき)外科切除のみが唯一治癒を期待できる治療方法です。切除可能と判断した症例は手術を選択し、切除ができない例に対しては化学療法、放射線療法、緩和治療などが行われます。

肝門部胆管がんは、肝門部という解剖学的に複雑な位置にあるため、手術が非常に困難な腫瘍(しゅよう)です。詳細な検査結果に基づき、右(左)肝切除+肝外胆管切除+リンパ節郭清(かくせい)など術式を決定します。遠位胆管がんに対する基本術式は膵頭十二指腸切除で、症例によっては胆管切除のみを行う場合もあります。国内で手術が可能であった症例は、胆管がん全体の68・1%、5年生存率は33・1%と報告されています。当科の治療成績を「図1」に示します。

図
図1 遠位胆管がん切除症例の生存率(2008~2018年)

十二指腸乳頭部がんは、胆道がんの中では根治切除率が高く、比較的予後が良好な疾患です。基本術式は遠位胆管がんと同じ膵頭十二指腸切除ですが、近年、腺腫内(せんしゅない)がんやリンパ節転移を認めない早期がんに対しては、経十二指腸的乳頭切除や内視鏡的乳頭切除などの縮小手術が考慮されています。国内で手術が可能であった症例は、十二指腸乳頭部がん全体の93%、5年生存率52・8%と報告されています。当科の治療成績を「図2」に示します。

図
図2 十二指腸乳頭部がん切除症例の生存率(2008~2018年)

胆道がんに対する化学療法には、手術が難しい場合に腫瘍の広がりを抑えたり、小さくさせることを目的とした治療と手術を組み合わせて行う補助化学療法があります。現在は、ジェムシタビン、S-1、シスプラチンの3剤が主に使用されています。いずれの場合も、その効果と副作用をみながら患者さんにあった方法を選択し、治療が行われます。

更新:2022.08.15