じへいすぺくとらむしょう

自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症

概要

自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつき脳の発達のしかたに違いがあることで、社会的なつながりやコミュニケーションに困難さが現れたり、特定の物事に強いこだわりがあったりする発達障害の総称です。かつては自閉症(※1)、アスペルガー症候群(※2)など、いくつかに分類されていましたが、現在は自閉スペクトラム症としてひとつの連続した特性と考えられています。

ASDを持つ人の特徴は一人ひとり異なり、症状のあらわれ方や程度もさまざまです。そのため、周囲の理解やサポートがとても重要です。

ASDは幼少期に始まり、最終的には社会生活、例えば学校や職場で機能する上で問題を引き起こします。多くは乳幼児期(おおむね1〜3歳頃)に特性が気づかれますが、気づかれる時期には幅があり、学童期や成人期に初めて診断されることもあります。また、一部では獲得していた言語や対人スキルが一時的に後退する(発達の退行)がみられることもあります(全員ではありません)。

※1:旧分類(DSM-IVなど)で用いられていた診断名の一つです。現在は自閉スペクトラム症(ASD)に統合されています。
※2:旧分類で用いられていた診断名の一つです。現在はASDの枠組みで、特性と支援ニーズとして評価します。

自閉スペクトラム症の原因

ASDの原因は、単一の要因に限られるわけではなく、遺伝的な素因と環境的要因が複合的に関わっていると考えられています。研究によっては、脳の特定の部分のはたらきや構造に違いが見られることが報告されています。

これまでに、ワクチン接種との関連を疑う説や、特定の食品添加物が原因という説などが話題になったことがありますが、科学的にははっきりとした因果関係は認められていません。保護者の子育てのしかたなど、後天的な育児環境が直接の原因になるわけではないとされています。

自閉スペクトラム症の症状

子どもの中には、アイコンタクトの減少、名前に反応しない、保護者への無関心など、幼児期初期にASDの兆候を示す子もいます。また、生後数か月または数年間は正常に発達する子もいますが、その後突然内向的になったり、不安や混乱が強くなったり、すでに習得していた言語能力を失ったりする子もいます。ただし、気づかれる時期には個人差があり、学童期以降に困りごとが明確になる場合や、成人期に初めて診断される場合もあります。

ASDの主な症状は、大きく次の二つの特性に分けて説明されることが多いです。

1.社会的コミュニケーションの困難
相手の気持ちや会話の流れを読み取ることが苦手で、うまく受け答えができないことがある
視線やジェスチャーなどの非言語的なサインを読み取るのが難しい
自分の関心事や興味がある話題になると、相手の理解や反応にかかわらず話し続けてしまうことがある
2.行動や興味・活動のかたより(限定された興味やこだわり)
同じ行動パターンを繰り返すことに安心感を持ち、それを乱されると強いストレスを感じる場合がある
音や光、においなど、感覚刺激に対する感じ方がほかの人よりも敏感または鈍感な場合がある
特定の趣味や分野に強い興味を示し、そこに集中し続けることができる
噛んだり頭をぶつけたりなど、自傷行為につながる行為をする
特定の食べ物だけを食べる、または特定の食感の食べ物を拒否するなど、特定の食べ物の好みがある

ASDを持つ子どもの中には、成長するにつれて、他の人と関わることが多くなり、行動障害が少なくなる子もいます。通常、最も問題が軽い子は、最終的には支援や環境調整により、その人なりに生活が安定しやすくなることがあります。しかし、言語や社会スキルに問題を抱えたままの子もおり、思春期には環境変化やストレスで困りごとが増えることがあり、早めの支援調整が役立ちます。

図
図:自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症の検査・診断

ASDを診断するための単一の医療検査(血液検査や画像検査など)はなく、医師や心理職(公認心理師/臨床心理士)による問診や発達検査(知能検査(※3)や観察など)、家族からの聞き取りを総合して判断されます。

なお、血液検査や聴力検査などはASDの「診断」ではなく、他の病気の除外や併存症の評価のために行われることがあります。

乳幼児期において、言葉の発達が遅れる、他の子どもとの遊び方が大きく異なるなどのサインが見られた場合、小児科や発達外来などで早めに相談することが大切です。また、保育園や学校で、教師や保育士が気づくこともあります。

成人期にASDと診断されるケースも少なくありません。その場合、子ども時代からの行動パターンや社会生活上の困難さなどを振り返り、専門の医療機関で詳しく評価を受けます。診断がつくことで、自分の特性をより理解し、必要な支援や配慮を受けやすくなります。

※3:主に物事の理解力や知識、課題を解決する力といった、認知能力を測定するための心理検査の一つ

自閉スペクトラム症の治療

ASDそのものを「治す」薬はありませんが、早期に特性を理解し、適切な治療(支援)を受けることで、本人が生活しやすくなる可能性が高まります。主な支援や治療法としては、次のようなものが挙げられます。

1.行動療法(望ましい行動を身につけるためのトレーニング)
必要なコミュニケーション方法や自己管理のコツを学ぶ訓練
問題行動が起こる原因を分析し、行動を調整する方法を学ぶ
2.言語療法(スピーチセラピー)
言葉の発達が遅れている場合や、対人コミュニケーションの練習が必要な場合に、専門家と一緒にトレーニングをする
会話のキャッチボールや表情の使い方などを学ぶ
3.教育的支援(特別支援教育や通級指導教室など)
小・中学校や高校で特別支援教育(個々の特性に合わせた学習指導)を受けたり、通級指導教室を利用したりする
集団生活のなかで困りごとがあっても、必要なサポートを得られるようにする
4.薬物療法(行動や気分を安定させる薬)
ASDそのものを治療する薬はありませんが、不安やうつ、注意欠如・多動症状、睡眠の問題、強いイライラ(易刺激性)などを和らげる薬が(併存症や関連症状に対して)処方される場合がある
薬が必要かどうかは医師と相談しながら慎重に進める
5.家族や周囲へのサポート
家族がASDについて理解を深めることで、日常生活の中でストレスを減らす工夫ができる
学校や職場へ情報提供をしてもらい、周囲の人にも特性を理解してもらう

自閉スペクトラム症の合併症

ASDのある人は、不安障害(※4)やうつ病、注意欠如・多動症(ADHD)(※5)などをあわせ持つこともあります。合併症があると、本人が感じる生活上の困りごとが増え、周囲とのトラブルも起こりやすくなる場合があります。したがって、合併症への対応も含めて総合的なケアが重要です。

社会的交流、コミュニケーション、行動に関する問題は、次のような結果につながる可能性があります。

  • 学校での問題と学習の成功
  • 雇用問題
  • 自立に支援が必要になることがある
  • 社会的孤立
  • 家族内のストレス
  • 被害といじめ

※4:強い不安を感じる精神疾患
※5:落ち着きのなさや衝動性が主な特徴の発達障害

更新:2026.05.13