へんぺいたいせん

扁平苔癬

概要

扁平苔癬(へんぺいたいせん)は、皮膚や口の中、爪(つめ)、頭皮などに炎症を起こす病気です。免疫(めんえき)の働きの乱れが原因と考えられており、皮膚に赤紫色から紫色の平らなブツブツが現れることが特徴です。口の中の粘膜にも白い模様ができる場合があります。

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図:扁平苔癬

扁平苔癬の原因

扁平苔癬のはっきりとした原因は、いまだ明確になっていません。ただし、免疫システムの異常が大きく関与していると考えられています。本来、病原菌など外部の異物から身を守るはずの免疫が、皮膚や粘膜の細胞を誤って攻撃してしまうことで炎症が起こるのです。

また、ウイルス感染症、特定の薬剤、ストレスや遺伝的な体質など、いくつかの要因が引き金になっている可能性も指摘されています。例えば、C型肝炎ウイルスとの関連を示唆する研究もありますが、すべての患者がウイルス感染を持つわけではありません。何らかの複合的な要因がからみ合って発症すると考えられています。

扁平苔癬の症状

扁平苔癬の症状は人によって異なりますが、主な特徴は以下のとおりです。

1.皮膚症状
赤紫色から紫色を帯びた平らなブツブツが現れる
かゆみを伴うことが多い
腕や脚など四肢の内側だけでなく、背中や腰周辺などにも生じることがある
皮疹(※1)同士が集まって大きくなる場合もある
2.口の中の症状
頬の内側や舌などに白っぽいレース状の模様ができる
ただれたり、痛みが出たりする場合もある
食事のときにしみるなどの不快感がある
3.頭皮・爪の症状
頭皮にできると脱毛の原因になることがある
爪が変形したり、変色したりすることがある

※1:皮膚にできる発疹

扁平苔癬の検査・診断

扁平苔癬の診断では、主に皮膚科や歯科口腔外科などで以下のような検査が行われます。

1.視診・問診
皮膚や口の中の状態を観察し、患者の自覚症状を聞き取る
いつ頃から症状が出ているか、どの部位が特に症状が強いかなどを確認する
2.皮膚生検(組織検査)
ブツブツの一部を切り取って顕微鏡で調べる
皮膚の炎症のパターンなどにより、扁平苔癬特有の所見が確認できる
3.血液検査
全身状態を把握するために行われる
C型肝炎ウイルスの抗体検査をする場合もある

医師は、これらの検査結果と臨床症状を総合的に判断し、他の皮膚病などとの区別を行います。場合によっては、長期的な観察が必要になることもあります。

扁平苔癬の治療

扁平苔癬の治療は、主に症状の緩和を目的として行われます。症状が軽い場合には、経過を観察し、自然に改善するのを待つケースもあります。しかし、かゆみや痛み、口内のただれなどが強い場合には、以下のような治療法が検討されます。

1.外用薬
副腎皮質ステロイドを含む塗り薬などを患部に塗布
かゆみや炎症を抑える効果が期待できる
2.内服薬
ステロイドや免疫抑制薬を内服する
抗ヒスタミン薬(※2)を服用する場合もある
3.口内症状へのケア
うがい薬や、口腔用ステロイドの塗り薬を使う
痛みやただれがある場合は、口の中を刺激しにくい食事を心がける
4.紫外線治療
皮膚の広い範囲に強い症状がある場合、紫外線療法を行うことがある
ただし、治療中は医師の指示に従い、皮膚がん予防のための紫外線対策を行う必要がある

いずれの治療も、医師の判断のもとで期間や用量を管理しながら実施されます。痛みやかゆみの軽減を目指す一方、副作用が出ないよう慎重に進めます。

※2:かゆみを抑える薬

扁平苔癬の合併症

扁平苔癬自体は、命にかかわる病気ではありませんが、次のような合併症が生じる場合があります。

傷跡の残存
皮膚や粘膜の炎症が治まった後に、色素沈着(※3)や白い痕が残ることがある。
口腔内の不快症状の長期化
口の中にただれや潰瘍(※4)(かいよう)があると、食事や会話に支障をきたす場合がある。
爪の変形や脱毛
爪や頭皮に生じた場合、爪が変色・変形したり、髪の毛が抜けたりすることがあり、回復には時間がかかることもある。

ごくまれに、口腔内に生じた扁平苔癬が長期的に続くと、口腔がん(こうくうがん)などを発症するリスクがわずかに高まる可能性が指摘されています。しかし、日常的に歯科口腔外科を受診して状態をチェックし、異常があれば早めに対処することで、重篤な合併症のリスクを下げることが期待できます。

※3:色が残ること
※4:粘膜のただれ

更新:2026.02.04