あいじーえーじんしょう

IgA腎症

概要

IgA腎症は、子どもから大人までのさまざまな年齢で発症する慢性腎炎といわれるものひとつで、慢性腎炎の大多数を占める疾患です。2015年1月から難病指定の疾患となっています。

健康診断等の尿検査で尿タンパクや尿潜血が陽性になることをきっかけに発見されることが多く、特に自覚症状がなく発症します。発症後は回復経過が非常に悪いものから比較的良好なものまで幅広い疾患です。

症状

IgA腎症は、初期の段階では無症状です。
感冒症状や消化器症状があるときは、肉眼でわかる血尿が出ることもあります。

この疾患を放置すると、腎機能が自覚症状のないまま徐々に低下し、血圧上昇、吐き気などの消化器症状や、全身倦怠感(けんたいかん)、むくみ、息切れ等の症状が出ることもあります。これらの症状が出ると腎機能廃絶に陥っている可能性もあり、治療不可能、腎代替療法(透析、腎移植)となることもあります。

検査・診断

まず最初に、腎疾患なのか、他の部位の疾患なのかを見分けるために次のような検査を行います。

尿検査

尿中の赤血球や白血球、細胞成分などを遠心分離機にかけて集め、顕微鏡で観察します。尿タンパクや潜血は、腎臓だけでなく、膀胱(ぼうこう)やほかの部位から出ることもありますが、顕微鏡で監察した結果、変形赤血球や円柱が見られれば、腎臓に何らかの異常がある疑いがあります。

血液検査

腎臓に影響を与える他の病気が隠れていないかを調べると同時に、血清クレアチニンの値を診ることで、腎臓の現在の機能を調べます。

腹部超音波検査

腎臓の形態や大きさを調べます。腎臓は長期に病気が続くと徐々に小さくなる傾向があります。

図
図:腹部超音波検査

腎生検

確定診断のために行う腎臓の組織を採取する検査で、採取した組織に特殊な染色を施行したり、さまざまな顕微鏡で観察します。この検査では、背部の肋骨(ろっこつ)と腰の間にある腎臓を超音波検査で場所を確認しながら組織を採取します。皮下に局所麻酔を投与する痛みや、細菌が体内に入ったり、比較的多量に出血する危険性もあるため、5~7日程度入院して検査を行います。腎臓が既に小さくなっている人、血をサラサラにするような薬を飲んでいる人、腎臓が一つしかない人、検査中の指示に対応できない人、検査後の安静が守れない人など腎生検ができない場合もあります。

治療

病気の状態によって治療法は異なりますが、扁桃摘出術やステロイド薬の投与などの治療を行います。IgA腎症は、扁桃(へんとう)の炎症によって出る熱で悪化する可能性があるため、扁桃摘出術を行う場合があります。

ステロイド薬投与の場合、細菌に感染しやすくなったり、血糖・血圧が高くなる、胃・骨・目に悪いなど、多様な副作用があるため、マスクや手洗い・うがいで細菌予防をしたり、ほかの副作用の予防薬を同時に服用したりしながら半年~2年かけて薬を減らしていきます。また、顔が丸くなったり、吹き出物が出やすくなったりすることもありますが、急に服用を中止すると血圧低下などの危険性もあり、必ず担当医と相談の上で服用量を調整する必要があります。

予防

早期に発見し、早期に適切な治療を受けることによって、高い確率で生涯腎機能を維持することが可能です。早期発見のためには、定期的に検診を受け、尿タンパクや潜血の状態を確認することが大切です。尿タンパクと潜血の両方が陽性、もしくは尿タンパクが2+以上であれば、自覚症状がなくても、まずはかかりつけ医の受診をお勧めします。

更新:2022.08.18

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