急性腎障害
福井大学医学部附属病院
腎臓内科
福井県吉田郡永平寺町

死に至ることが多い急性腎障害
腎臓の病気は起こる速さで、急性腎障害と慢性腎臓病の大きく2つに分けられます。
急性腎障害は、数日以内に急激に腎機能が低下する状態で、尿が減ったり全く出なくなったりします。熱中症、脱水、心筋梗塞(しんきんこうそく)、肺炎などの感染症、手術後に合併する場合や、造影剤、抗生物質、鎮痛剤など、さまざまな薬剤に対するアレルギーや血流障害が腎臓に起こる薬剤性急性腎障害の場合があります。骨盤内の腫瘍(しゅよう)などによる尿路閉塞(にょうろへいそく)も急性腎不全の原因となります。昔は治る病気と考えられていましたが、現在では後遺症を残すことが多いと考えられています。多臓器に合併症が起こった場合には、死に至ることも多い病気です。
当院では、24時間365日でオンコール体制を整えており、早期に発見し原因究明を行い原因に基づいた治療をいち早く開始できるようにしています。
血液濾過と全身ホルモン調節
腎臓には大きく分けて2つの働きがあります。
1つ目は、血液を濾過(ろか)して体に不要な老廃物や余分な塩分を尿として体の外へ追い出し、逆に体に必要なものは再吸収して体内に留める働きをして血液をきれいな状態に保つ働きです。酸とアルカリの出入りを調整して、血液を中性に保つ役割も担っています。
2つ目は、必要に応じてさまざまなホルモンや活性型ビタミンを作る働きです。腎臓が作るホルモンには、体の中の酸素の量を感じ取って必要に応じて赤血球を作る量を決めるエリスロポエチンというホルモンや、血圧を調節するレニンというホルモンがあります。また、ビタミンDを活性型にすることにより腸管でのカルシウムの吸収量を決めています。
つまり、腎臓は血液をきれいに保つのと同時に、電解質や酸性とアルカリ性、血液中の酸素量、全身血圧など体全体のバランスをちょうど良い状態に調節して、心臓や脳などの各臓器が働きやすい状態に維持する縁の下の力持ちといえます(図1)。

更新:2025.01.15