多汗症
概要
多汗症は、通常の必要量をはるかに超えて汗をかいてしまう症状のことです。暑い場所にいる、運動をするなど、体温調整のために汗をかくのは自然なことですが、多汗症の場合、日常生活を送るうえで支障が出るほど汗の量が多くなります。特に手のひら、足の裏、脇などに汗をかきやすい人が多いとされています。
日本で多汗症がどのくらいの人にみられるか、正確な統計データは十分にまとまっていません。過度な汗が原因で、人と握手するのがつらい、スマートフォンを操作するときに滑ってしまう、服に大きな汗染みができてしまうなど、悩みを抱える人も少なくありません。
多汗症の原因
多汗症には大きく分けて原発性多汗症と続発性多汗症の2種類があります。
- 1.原発性多汗症
- 他に明らかな病気がないのに、交感神経(※1)の働きが過剰になって、汗が過度に出るタイプです。小学生から思春期にかけて発症することが多いといわれています。原因ははっきりと解明されていませんが、遺伝などの要因が関係している可能性があります。
- 2.続発性多汗症
- 何らかの病気や薬の副作用が原因で過剰な汗が出るタイプです。たとえば、糖尿病、バセドウ病などの甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう、更年期障害などのホルモンバランスの変化、または感染症などが原因になることがあります。こうした基礎疾患を治療することで、多汗症が改善する場合もあります。
※1:体が興奮やストレスに反応するときに働く神経
多汗症の症状
多汗症の主な症状は、必要以上に汗をかいてしまうことです。特に以下のような特徴がみられます。
- 手のひらや足の裏、脇、乳輪周りなど限られた部位に大量の汗をかく
- 原発性多汗症では、体の特定の部分から集中して汗が出ることが多いです。
- 左右対称に汗をかきやすい
- 両手のひら、両足の裏など、両側に同じように汗をかくことが典型的です。
- 精神的ストレスや緊張でさらに汗が増える
- テストや面接など、緊張する場面で汗が一層増え、日常生活に支障が出ることがあります。
- 体臭が気になる場合もある
- 脇などでは、汗が皮膚の常在菌の働きで分解され、においの原因になることがあります。
- 季節を問わず発汗する
- 一般的に夏は汗をかきやすいですが、多汗症の場合は冬でも大量に汗をかくことがあります。
これらの症状により、ペンが滑って書きにくい、スマートフォンの操作が難しい、人と握手するのを避けるなど、社会生活に支障が出ることもあります。また、続発性多汗症の場合は、原因となっている病気の症状(疲れやすい、体重の減少など)が同時に現れることがあります。

多汗症の検査・診断
多汗症かどうかを判断するには、まずは皮膚科や内科などの医療機関を受診し、問診と診察を受けます。場合によっては、以下のような検査が行われます。
- 1.問診・身体診察
- どの部分に、どのくらいの汗をかくのか(左右差はあるか)
- 汗の量は日常生活に支障をきたすレベルか
- 家族に似た症状の人がいるか
- ほかに病気や内服薬があるか
- 2.血液検査
- 甲状腺の機能や血糖値などを確認し、続発性多汗症の原因となる基礎疾患がないか調べます。
- 3.ヨードでの発汗テスト(Minorテスト)
- 発汗量を調べる方法の一つです。汗をかきやすい部分にヨード液を塗り、そこにでんぷん粉をまぶすと汗に反応して色が変わります。色の変化から汗の程度や範囲を測定します。
- 4.量的評価(QOLテストなど)
- 多汗症が日常生活にどれくらい影響を与えているかを、質問票などを用いて評価します。
原発性多汗症か続発性多汗症かを見分けることが診断の重要なポイントです。続発性多汗症の疑いがある場合は、原因となり得る病気の検査が詳しく行われます。
多汗症の治療
多汗症の治療は、原因や症状の重さ、患者さんの希望によってさまざまです。主な治療法は以下のとおりです。
- 1.制汗剤や外用薬
- 塩化アルミニウム入りの制汗剤:汗の出口である汗腺を一時的にふさぎ、発汗を抑えます。
- 塗り薬:手や足、脇など局所に塗って発汗を抑える薬が処方されることがあります。
- 2.内服薬
- 交感神経の働きを穏やかにする薬が使われることがあります。ただし、眠気や口の乾きなど、副作用が出る場合もあるため、医師と相談のうえ慎重に進めます。
- 3.イオントフォレーシス(イオン浸透療法)
- 手や足を水に浸し、微弱な電流を流す方法です。汗腺の働きを一時的に抑える効果が期待されます。週に数回行う必要があり、病院での治療だけでなく家庭用の機器も存在します。
- 4.ボツリヌス毒素注射
- ボツリヌス毒素は神経伝達物質(※2)の働きを抑える作用があります。脇など、特定の部位に注射することで発汗を抑制します。効果は数カ月程度持続することが多いですが、定期的な注射が必要になる場合もあります。
- 5.手術療法
- 交感神経遮断術:胸部の交感神経をクリップなどで止める手術です。手のひらの多汗には効果が高いとされますが、体の別の部位で汗が増える「代償性発汗」が起こるリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
汗腺切除:脇などの汗腺を手術で取り除く方法ですが、身体への負担や傷跡などの問題から、行われるケースは限定的です。
※2:神経から筋肉や汗腺に信号を伝える物質
多汗症の合併症
多汗症そのものが重篤な病気を引き起こすわけではありませんが、以下のような影響が考えられます。
- 皮膚トラブル
- 湿った状態が続くと、皮膚がふやけて菌が繁殖しやすくなり、水虫やあせも、湿疹などが起こりやすくなります。
- ストレスや対人関係の影響
- 多汗によるコンプレックスや不安感が、学校や職場での人間関係に悪影響を及ぼす場合があります。
多汗症の予防
多汗症のはっきりとした予防策はありませんが、次のような工夫で汗の量を減らしたり、症状を和らげたりできる場合があります。
- 1.服装選び
- 通気性の良い素材の服を着たり、こまめに着替えたりして、皮膚を清潔に保つよう心がけます。
- 2.制汗グッズの利用
- 市販の制汗スプレーやシート、パウダーなどを使い、こまめにケアを行うことで不快感を減らすことができます。
- 3.体温を上げすぎない工夫
- 夏はエアコンや扇風機、冷却グッズなどを活用し、温度や湿度を調整することで発汗を抑えられる場合があります。
- 4.ストレス対策
- 緊張や不安から汗が増えることがあるため、十分な睡眠や適度な運動、リラクゼーションを取り入れてストレスを軽減することも大切です。
更新:2026.02.04

