かたけんばんそんしょう
肩腱板損傷
概要
肩の腱板(けんばん)とは、腕の骨と肩甲骨をつなぐ肩関節の周りを取り囲む複数の筋肉と腱(けん)(※1)の集まりを指します。腱板は肩を安定させ、腕を上げたり回したりする動きを助ける重要な役割を担っています。
この腱板が傷ついた状態を「肩腱板損傷」といい、腱が炎症を起こしている場合や、部分的・完全に切れている場合など、さまざまな段階があります。日本でも加齢やスポーツ、仕事による繰り返しの負荷が原因です。
肩や腕の痛みで医療機関を受診する人の数は年々増加傾向にあります。その中には腱板損傷も含まれており、特に中高年以降の世代で多くみられるのが特徴です。
※1:筋肉と骨を結ぶ強い組織

肩腱板損傷の原因
肩腱板損傷は大きく分けて、次のようなことが要因です。
- 1.加齢と使いすぎ(変性)
- 腱は年齢とともに弱くなりやすく、長年の使用によるすり減りや小さな傷の積み重ねで炎症や断裂(だんれつ)が起こりやすくなります。
- 2.繰り返しの動作による負担
- テニスや野球、水泳など腕を大きく振り上げるスポーツ、あるいは仕事で腕を頭より上げて作業する人は、肩の腱板に大きな負荷がかかるため、損傷を起こすリスクが高まります。
- 3.外傷
- 転倒や事故などで強い衝撃が加わると、若い世代でも腱板が急に切れてしまうことがあります。激しい接触プレーを伴うスポーツをしている場合にも注意が必要です。
- 4.肩周辺の骨の形状や炎症
- 肩甲骨や鎖骨(さこつ)の形のわずかな違いによって、腱板が挟まれてしまい、慢性的に炎症を起こす場合もあります。
肩腱板損傷の症状
肩腱板損傷の症状は、程度によってさまざまです。一般的に次のようなことが起こりやすくなります。
- 肩や腕を上げると痛む
- 腕を上げる動作、特に横から真上に上げるときに鋭い痛みが出ることが多いです。
- 腕を回すときに引っかかる感じがする
- ドアノブをひねる、シャワーを浴びるために腕を上げるなど、日常的な動作がつらくなる場合があります。
- 夜間痛
- 就寝時に肩が痛くて眠れない、または寝返りをうつと痛みで起きてしまうことがあります。
- 力が入らない
- 痛みや腱板の断裂が原因で、物を持ち上げるときに力が入りにくくなることがあります。
- 肩を動かすと音がする
- 肩関節を回したときに、ポキポキ、コリコリと音が鳴る場合があります。
腱板損傷の初期段階では、痛みが軽度だったり、無症状であったりすることもありますが、放置すると症状が悪化しやすいため、早めに専門医に相談することが望ましいです。
肩腱板損傷の検査・診断
肩腱板損傷を疑う場合、整形外科などの専門医は以下のような手順で検査や診断を行います。
- 1.問診と視診・触診
- どのような動作で痛みが出るか、いつから痛みがあるかなどを詳しく聞き取り、肩の外見や手で触れたときの痛み具合などを確認します。
- 2.肩の動きのテスト
- 腕をさまざまな方向に上げたり回したりして、痛みが出る角度や範囲、力の入り具合を調べます。
- 3.画像検査
- X線検査(レントゲン):骨折や骨の異常がないかをチェックします。ただし腱は映りにくいため、腱板損傷は発見しづらいことがあります。
- MRI:腱や筋肉などの軟部組織の状態を詳細に見ることができ、腱板がどの程度損傷しているかを把握しやすいです。
- 超音波検査(エコー):検査機器を肩に当てて、リアルタイムで腱や筋肉の状態を観察します。手軽に実施できるため、外来でもよく用いられます。
- 4.造影検査
- 関節内に造影剤を入れてレントゲンやMRIを撮り、腱板の断裂や損傷範囲をより明確にする方法もあります。
肩腱板損傷の治療
肩腱板損傷の治療は、損傷の程度や症状の強さ、患者さんの年齢や生活スタイルによって異なります。主な治療方法は以下のとおりです。
- 1.保存的治療
- 薬物療法:痛みをやわらげるために鎮痛薬や消炎鎮痛剤を処方することがあります。
- 注射療法:肩関節にステロイド剤などを注射し、炎症を抑える方法です。ただし、繰り返しの注射は腱を弱くする可能性もあるため、医師と相談の上で行われます。
- リハビリテーション(理学療法):専門の理学療法士の指導により、肩まわりの筋肉を強化し、痛みを軽減させる運動療法が行われます。無理のない範囲で、ストレッチや筋トレを続けることが重要です。
- 装具やテーピング:肩の安定を保つために、適切な装具を使ったり、テーピングで肩関節をサポートする場合もあります。
- 2.手術療法
- 腱板が大きく切れていたり、保存的治療で症状が改善しない場合は、手術が検討されます。
- 関節鏡視下手術:関節鏡という細いカメラと専用の器具を使い、肩の中を直接見ながら修復する方法です。体への負担が比較的軽く、回復が早いとされています。
- 手術:肩を切開して腱板を縫い合わせたり、骨の形状を整えたりします。損傷が大きい場合やほかの方法で対応できない場合に行われます。手術後も、リハビリテーションを継続しながら、肩の動かせる範囲や筋力を回復させていく必要があります。
肩腱板損傷の合併症
肩腱板損傷を放置したり、適切な治療を受けないままでいると、次のような合併症が起こることがあります。
- 肩関節の変形や拘縮(こうしゅく)
- 痛みを避けるために動かさない状態が続くと、肩が固まり動きにくくなります。
- 慢性的な痛み
- 腱板がさらに傷つき、肩を動かさなくても痛みが続く状態になることがあります。
- 筋肉の弱化や萎縮(いしゅく)
- 腕を上げにくい期間が長いと、周囲の筋肉が弱り、回復に時間がかかることがあります。
肩腱板損傷の予防
肩腱板損傷を予防するためには、日常生活での工夫や運動習慣が大切です。
- 1.無理な動作を避ける
- 重い物を持ち上げるときは、できるだけ肩への負担を減らす姿勢や方法(腰を落として持ち上げるなど)を取りましょう。
- 2.肩まわりの筋力トレーニング
- 軽いダンベルやゴムバンドなどを使い、肩のインナーマッスルを鍛えることで、腱板が受ける負担を減らします。
- 3.ストレッチを習慣にする
- 運動前後や入浴後などに肩の可動域を維持するストレッチを行い、血流を促進することで、腱板の損傷リスクを下げられます。
- 4.休息をしっかりとる
- 同じ動作を繰り返し行う人やスポーツ選手などは、肩を酷使しすぎないように休息日を設け、十分な睡眠をとることが大切です。
更新:2026.02.04

