心臓病患者さんへの心臓リハビリテーション~退院後の生活をサポート~

中部ろうさい病院

循環器内科 リハビリテーション科

愛知県名古屋市港区港明

心臓リハビリテーションとは

心臓病の患者さんは入院後、一定期間の安静が必要ですが、その期間が長くなるほど筋力や持久力が低下します。

心臓リハビリテーション(以下、リハビリ)とは、運動によって体力を回復することで自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を予防するための総合的治療プログラムのことです。内容には、適切な運動の指導や食事の見直し、生活指導などがあります。

心臓リハビリは開始から150日間は保険診療で行いますので、1週間に1〜3回(1回60分)ほどの頻度(ひんど)で通院してもらいます。期間は3〜6か月を基本としており、それぞれ決まった時期に体の評価を実施していきます。評価を行うことで、順調に経過しているかどうか把握することができます。

当院の心臓リハビリの特徴と効果

特徴

当院では、心筋梗塞(しんきんこうそく)・狭心症(きょうしんしょう)・心不全で入院・通院中の患者さんを対象に、心臓リハビリを行っています。

①運動療法

運動療法の基本は、歩行や自転車こぎなどの有酸素運動です。有酸素運動によって持久力(運動耐用能)が改善し、心臓病患者さんの長期予後(*)が良くなることが分かっています。一方、筋力トレーニングは、筋力が低下している患者さんが対象で、生活の質の改善をめざします(写真1、2)。

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写真1 運動療法の様子(有酸素運動)
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写真2 運動療法の様子(筋力トレーニング)

*予後:今後の病状についての医学的な見通しなし

②栄養指導

食事の内容を見直します。特に、塩分の摂り過ぎは心臓疾患を悪化させる原因となるため、1日の塩分摂取量を測定し、1日6g以下を目標に指導を行います。また、体重減量のためのカロリー制限なども勧めています。食事内容の写真を見せてもらうと、より詳細なアドバイスが可能です。

③生活指導

入浴時の指導や薬の飲み忘れ防止、禁煙のお手伝いなどを行っています。また、血圧・体重測定による体の状態の管理についてアドバイスし、受診が必要な状態の目安が分かるようにします。

効果

心臓リハビリの効果については、これまで多数報告されています。主な効果には次の3つがあります。

①身体機能の回復・運動能力の改善

運動療法(有酸素運動や抵抗運動による筋力増強訓練)で、心臓病によって衰えた持久力や筋力が回復します。

②生活の質の改善

患者さんそれぞれが最適な運動内容の指導(運動処方)を受けることで、生活の質が改善します。

③心疾患の再発予防・再入院予防の効果

疾患教育や生活指導を受けることで、同じ病気が再発しないようにする予防法を学び、実践することができます。

例えば、心筋梗塞の患者さんは心臓リハビリを行うことにより、死亡率が26%低下し、再発のリスクが47%低下したと報告されています。また、心不全の患者さんも心臓リハビリを行うことで、心不全による再入院を39%減少させることが示されています(図)。

グラフ
図 心臓リハビリテーションの効果*両論文をもとに作成(右図:Lawler PR,et al. Am Heart J 2011;162:571-584)(左図:Sagar VA,et al. Open Heart 2015;2:e000163)

チームで取り組む心臓リハビリテーション

心臓疾患の原因となる危険因子は、高血圧や糖尿病などの疾患によるものから、喫煙や食生活、運動不足などの生活習慣によるものまで多岐にわたります。これらの改善には、多職種による介入が不可欠です。

当院では、医師や看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、検査技師などによる多職種チームを作っています。入院中から再発予防のため、職種ごとの明確な目標と介入方法を決定し、退院後も多職種で経過を観察し、カンファレンス(検討会)でそれらの情報を共有しています(写真3)。カンファレンスでは、患者さんごとにそれぞれの職種からの評価と介入について適時再検討を行い、再入院を防げるよう努めています。

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写真3 多職種カンファレンス

更新:2022.03.23