しんぼうちゅうかくけっそんしょう

心房中隔欠損症

概要

心房中隔欠損(しんぼうちゅうかくけっそん)は、心臓の上側にある左右の心房を分ける壁(中隔)に穴が開いている先天性心疾患(※1)の一つです。心房は、体の中にある血液を集めて次の部屋へ送り出すはたらきをしています。本来、左心房と右心房の間には壁があって血液が混ざらないようになっていますが、心房中隔に穴が開いていると、左右の心房間で血液が行き来してしまいます。

図
図:心房中隔欠損

心房中隔欠損は場所によって4つに分類されています。もっとも多いのが、心房中隔の壁の真ん中である卵円孔の位置にあいているもの(二次孔欠損)ですが、他にも心室中隔に接するところに開いているもの(一次孔欠損)、上の方に開いている(静脈洞型)、心臓の静脈の壁にあいている(冠静脈洞型)があります。

心房中隔欠損は、先天性心疾患の中でも比較的多い病気です。穴の大きさや場所、心臓や血管の状態によっては子どものころはほとんど症状が出ない場合もありますが、成長とともに心臓に負担がかかったり、大人になってから見つかったりすることもあります。

※1:生まれつきの心臓の病気

心房中隔欠損症の原因

心房中隔欠損は、生まれる前(胎児期)に心臓が形成される過程で生じる異常が原因です。赤ちゃんの心臓は、妊娠初期から複雑な過程を経て完成に近づきますが、その途中で何らかの要因によって壁がうまくつくられないと穴が残ってしまいます。正確な原因ははっきりわかっていないことも多いですが、遺伝的要因や母体の健康状態、環境的要因(喫煙やアルコールなど)などが影響を与える可能性があるとされています。

心房中隔欠損症の症状

心房中隔欠損があるからといって、必ずしも乳児期や幼児期に目立つ症状が出るとは限りません。穴が小さい場合は、ほとんど無症状で経過することが多いです。一方、穴が大きかったり、心臓や肺に負担がかかると、以下のような症状があらわれることがあります。

  • 運動時に息切れしやすい
  • 疲れやすい
  • 感染症にかかりやすい(特に肺炎(※2)や気管支炎(※3)など)
  • 胸部の不快感や動悸(※4)(どうき)

大人になるまで見つからず、大人になって、心不全(※5)(しんふぜん)や不整脈(※6)などの症状で気づく場合もあります。

※2:細菌やウイルスの感染により肺におきる急性の炎症のこと
※3:気管支に炎症の中心があって、咳や痰などの呼吸器症状を引きおこす病気
※4:心臓がドキドキする感じ
※5:心臓のポンプ機能が弱まった状態
※6:心臓の拍動が乱れる状態

心房中隔欠損症の検査・診断

心房中隔欠損は、以下のような検査で診断されます。

1.身体診察
聴診器で心臓の音を聞き、異常な音(心雑音)がないかを確認します。心房中隔欠損では、肺へ流れる血液の量が増えるため、特有の心雑音が聞こえる場合があります。
2.心エコー検査(※7)(超音波検査)
胸に当てた装置から超音波を当て、反射して戻ってくる音波から心臓の構造や血液の流れを観察します。心エコー検査は、心房中隔に穴があるかどうかを直接確認できる、最も一般的な検査方法です。
3.心電図(※8)
穴の大きさや心臓の負担によっては、心臓の右側に負荷がかかった特徴的な波形が見られることがあります。
4.胸部X線検査(※9)
胸部のX線画像から、心臓や肺の状態を大まかに確認します。心臓の右側が大きくなっていたり、肺血流が増えている場合は心房中隔欠損を疑う手がかりになります。

※7:超音波(エコー)を用いて心臓の状態を調べる検査
※8:心臓の電気信号を波形として記録する検査
※9:胸部をX線で撮影して、肺や心臓などの異常を調べる検査

心房中隔欠損症の治療

心房中隔欠損の治療方針は、欠損の大きさや症状の有無、心臓・肺への負担などによって異なります。主な治療法は次のとおりです。

1.経過観察
穴が小さく、症状がない場合は、定期的に心エコー検査を受けながら経過を見守ることがあります。成長に伴い穴が自然に小さくなることもあります。
2.カテーテル手術
カテーテルを使って心房中隔の穴をふさぐ方法です。足の付け根などからカテーテルを挿入し、穴の部分に専用の器具を留置してふさぎます。開胸手術に比べて身体への負担が少なく、入院期間も短い傾向があります。ただし、穴の形や大きさ、位置によっては適用できない場合もあります。
3.開胸手術
胸を開いて心臓を直接見ながら穴を縫合(※10)したり、パッチ(※11)でふさいだりする方法です。複雑な形の欠損やカテーテル手術が難しい場合に行われます。大きな手術となるため、心臓の状態や患者さんの年齢、全身状態などを考慮しながら時期や方法が検討されます。

心房中隔欠損症の手術を受けた人は、定期的に画像検査と健康診断を受ける必要があります。これらの検査は、心臓や肺の合併症の可能性を監視するためのものです。

※10:医師が特殊な針と糸を使って切り口を縫い合わせ、傷をふさぐ方法
※11:心臓の穴をふさぐために縫い付けるあて布のこと

心房中隔欠損症の合併症

穴を長期間放置すると、心臓や肺に負担が蓄積し、さまざまな合併症が起こるおそれがあります。

不整脈
心房が拡大することで、心房細動(※12)などの不整脈が起こりやすくなります。
心不全
血液を送り出す心臓の機能が低下し、息苦しさやむくみなどの症状が出現します。
肺高血圧症
左右の心房の血液が混ざり続けることで、肺へ流れる血液が増え、肺の血管に高い圧力がかかる状態になります。長期間放置すると肺高血圧を悪化させる要因になります。
脳梗塞
まれに、血栓(※13)が穴を通って脳へ運ばれ、脳梗塞を起こす可能性があります。

※12:心房が十分な収縮をせず、けいれんするように細かく震える(異常な興奮が持続する)ことで脈が不規則になる病気
※13:血のかたまり

心房中隔欠損症の予防

先天性心疾患そのものを完全に予防することは難しいとされています。ただし、妊娠中の生活習慣や健康管理に気を配ることで、リスクを減らせる可能性があります。たとえば、風しんワクチンの接種や喫煙・飲酒を控えること、栄養バランスのよい食事を心がけることなどが大切です。

出生後に心房中隔欠損が見つかった場合は、医師の指示に従って定期検診を受け、心臓への負担が大きくならないよう早めに治療方針を決めることが重要です。

更新:2026.02.04