右側開胸・小切開による心房中隔欠損閉鎖術
日本医科大学付属病院
心臓血管外科
東京都文京区千駄木

心房中隔欠損とは?
心房中隔欠損(しんぼうちゅうかくけっそん)は1,000人に1人に認められる心臓病です。右房と左房の間の壁に、生まれつきの穴(欠損孔(けっそんこう))がある病気で、子どものときにはほとんどが無症状です。乳児検診や学校心臓検診での心雑音・心電図異常で発見されます。欠損孔が大きくても20~30歳代までは無症状で過ごすこともありますが、その後加齢とともに息切れや疲れやすいといった心不全(しんふぜん)症状が出現し、肺高血圧を示すことがあります。
小児MICS:低侵襲心房中隔欠損閉鎖術
心房中隔欠損の治療法には、カテーテル治療と手術があります。カテーテル治療は、閉鎖栓(へいさせん)で欠損孔を塞(ふさ)ぐ治療ですが、体重がおよそ15kg前後で、欠損孔の周りの壁の長さが5mm以上(大動脈側以外)ある場合に適応となります。したがって、体重が少ない場合や欠損孔の周りに閉鎖栓を支えるだけの組織が十分にない場合、手術が必要になります。
心臓の手術は、胸の真ん中を縦に切って心臓に到達する方法(胸骨正中切開)が一般的ですが、右の胸からアプローチする方法もあります。
当院では心房中隔欠損の小児患者さんには、右の腋(えき)(わきばら)を5cmほど切開して治療しています(小児MICS、図)。胸骨正中切開に比べて骨を切らないため、手術後の侵襲(しんしゅう)(体への負担)が低く、また創部(そうぶ)が目立たないため美容面でも優れた方法です。

右胸の5cmの創部。術後ドレーンと局所麻酔を注入するカテーテル(医療用の細い管)が留置されています。女児の場合、将来乳房が発達すると創部はさらに腋に移動し目立たなくなります
当科の特色 心臓血管外科
当院心臓血管外科では、1990年頃の弁形成が主流になり始めた黎明期から、弁形成術を主に行ってきました。弁膜症手術を当院で受けた患者さんは、術後早期から社会復帰し、お孫さんの面倒を見るなどご家族のため、また世の中のために働いています。そのうえ、国内・海外旅行に行くなど人生を謳歌しています。
教室員の多くは米国のワシントン大学、スタンフォード大学、ハーバード大学、英国のセントトーマス病院、カナダのトロント大学、ブリティッシュ・コロンビア大学などに留学しています。また、榊原記念病院、神奈川県立こども医療センター、静岡県立こども病院などでトレーニングしてきました。コロナ禍でもヨーロッパやアジアから多くの留学生を受け入れています。
弁膜症だけでなく、冠動脈バイパス術、心房細動手術、動脈瘤など大血管、末梢血管手術、下肢静脈瘤手術、ペースメーカなどのデバイス手術、小児循環器手術など、すべての循環器疾患に対応しています。さらに、循環器内科、放射線科、脳神経内科、小児科とともに、脳・心血管疾患に対して協力して積極的に治療しています。
当院は診療科間のつながりが強力なため、さまざまな領域のプロフェッショナルな医師たちが、日頃から議論・協力しながら診療しています。安心して受診、治療できる環境を整えています。
診療実績
当院では、冠動脈バイパス術、弁膜症手術、心房細動手術など不整脈手術、胸部・腹部大動脈瘤手術、末梢動脈手術、下肢静脈瘤手術、ペースメーカなどデバイス抜去手術など、小児循環器手術を行っています。
コロナ禍前は年間400件以上の心臓血管外科手術を行い、多くの患者さんが元気に暮らしています。手術後は循環器内科、リハビリ科とともにリハビリテーションを行い、早期退院をめざしています。
小児循環器手術においては、当院の産科・小児科、東京かつしか赤十字母子医療センターと連携し、胎児診断を行っています。出産前の胎児期に診断することで、出産直後に計画的な手術が可能となります。安心して受診ください。
更新:2025.12.12
