高温多湿で細菌増殖! 梅雨~夏は食中毒にご注意を
メディカルブレイン編集部
突然の腹痛、下痢、嘔吐。このような症状が現れた場合、考えられる原因の一つが「食中毒」です。過去に食中毒を経験した人は、二度と同じ経験をしたくないと思っていることでしょう。
今回は、食中毒の原因や特徴について解説し、特に梅雨の時期から夏にかけて注意が必要な細菌性食中毒の原因や予防策を詳しく紹介します。
食中毒を引き起こす原因はいろいろ
食中毒は、食品に含まれる微生物や毒素によって引き起こされる病気です。食中毒の代表的な原因は、細菌、ウイルス、毒素、化学物質、寄生虫などが挙げられます。この中でも、細菌性食中毒は6月~8月、ウイルス性食中毒は11月~3月に増える傾向があります。
原因別の食中毒の種類
食中毒の種類 | 原因とその具体例 |
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細菌性食中毒(感染型) | 細菌が付着した食品を摂取することによって引き起こされる食中毒 〈代表的な細菌〉 病原性大腸菌、カンピロバクター菌、サルモネラ菌、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオなど |
細菌性食中毒(毒素型) | 食品に付着した細菌が、増殖する過程で毒素を生成し、その毒素を摂取することによって引き起こされる食中毒 〈代表的な細菌〉 黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ボツリヌス菌など |
ウイルス性食中毒 | ウイルスに感染した食品を摂取することによって引き起こされる食中毒 〈代表的なウイルス〉 ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど |
自然毒食中毒 | 有毒成分を持つ動植物を摂取することによって引き起こされる食中毒 〈代表的な自然毒〉 フグ毒、貝毒、有毒山野草、毒キノコ、ジャガイモの芽など |
化学性食中毒 | 有害な化学物質を摂取することによって引き起こされる食中毒 〈代表的な化学物質〉 農薬、殺そ剤、微量重金属(ヒ素、鉛など)、ヒスタミン、酸化により変質した油脂など |
寄生虫食中毒 | 寄生虫が含まれた食品を摂取することによって引き起こされる食中毒。主にサバやアジなどに寄生している 〈代表的な寄生虫〉 アニサキス、クドアなど |
6月から夏に増える細菌性食中毒
湿度や気温が上昇する梅雨から夏の時期に、特に注意が必要なのが細菌性食中毒です。多くの細菌は高温多湿の環境を好むため、この時期は活発に増殖する傾向があります。
細菌性食中毒の代表的な原因菌としては、カンピロバクター菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌が挙げられます。
これらの細菌が増殖しやすい食品には十分注意し、適切な予防策を講じることが大切です。以下に特に注意が必要な食品と、食中毒を起こしやすい細菌の特徴と予防策をまとめました。
● 生の食肉、加熱不足の食肉
食肉は、解体する過程で細菌が付着しやすい食品です。代表的な細菌としては、家畜の腸内に生息するカンピロバクター菌が挙げられます。特に加熱不足の食肉は、細菌が増殖しやすくなります。
【カンピロバクター菌について】
特徴 | 家畜や野生鳥類の腸内に生息。熱・乾燥に弱く、30~46℃の温度帯で活発に増殖 |
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症状 | 下痢、腹痛、発熱、悪寒、頭痛、嘔吐など |
潜伏期間 | 2~7日 |
【予防策】
- 食肉は十分に加熱する
- 食肉を調理した器具や容器は、使用後洗浄消毒し、乾燥させる
- 食肉を触った後は必ず手を洗う
● 鶏肉、鶏卵、鶏卵の加工品
食肉は全般的に細菌が付着しやすい食品ですが、特に鶏肉や鶏卵はカンピロバクター菌の他にもサルモネラ菌による食中毒を引き起こしやすい食品です。
【サルモネラ菌について】
特徴 | 家畜や野生動物、ペットなどの腸内に生息する。またネズミ、ハエ、ゴキブリなどにも生息。高湿度、35~43℃の温度帯で活発に増殖する。乾燥に強く、加熱に弱い。特に鶏肉や鶏卵の加熱不足や生食で食中毒を起こすことが多い |
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症状 | 下痢、腹痛、発熱、悪寒、頭痛、吐き気、嘔吐など |
潜伏期間 | 5~72時間 |
【予防策】
- 食肉や卵はしっかり加熱する(75℃1分以上)
- 鶏卵は冷蔵庫で保管し、できるだけ早めに使う
- 食品を調理した器具や容器は、使用後洗浄消毒し、乾燥させる
● 人の手で作ったおにぎりや弁当、テイクアウト・デリバリーの食品
おにぎりや弁当を直接手で作ると、手に付着していた細菌が食品に移り、食中毒を引き起こすことがあります。このような場合の主な原因菌は、黄色ブドウ球菌です。飲食店で提供されるテイクアウトやデリバリーの食品も、同様の理由で食中毒が発生することがあります。
【黄色ブドウ球菌について】
特徴 | ブドウ球菌の一種で、家畜・鳥類だけでなく、健康な人の皮膚や鼻腔、咽頭などにも常在。手指の傷・湿疹には特に多く見られる。食品の中で増殖する際に、エンテロトキシンという毒素を生成し、この毒素が食中毒の原因となる。菌自体は熱に弱いが、エンテロトキシンは熱や乾燥に強く、100℃30分でも分解されず、210℃30分で分解される。飲食店やテイクアウト・デリバリーの食品が原因になることも多い |
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症状 | 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など。通常24時間以内に改善 |
潜伏期間 | 0.5~6時間 |
【予防策】
- 食品を扱う前には手を洗い、清潔な状態で調理する
- 特に手指に手荒れや傷がある人は、食品に直接触れない
- 調理時の帽子・マスク・手袋の着用
- 食品を低温で保管し菌を増やさない。長時間常温に置いた食品は食べない
● 煮込み料理など作り置きされた食品
大量に調理されたカレーなどの煮込み料理を、鍋のままで作り置きしたり、ビュッフェ形式で提供する食品など、調理から実際に食べるまでの時間が長い食品では、ウェルシュ菌の増殖に注意が必要です。
【ウェルシュ菌について】
特徴 | 人や動物の腸内細菌の一種。酸素のないところで増殖。熱に強く、通常の加熱調理では死滅しない。「給食病」と呼ばれることもあり、大量に調理し、作り置きする施設での発生が多い |
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症状 | 腹痛、下痢。発熱や嘔吐は少ない |
潜伏期間 | 6~18時間 |
【予防策】
- 調理から食事までの時間を短くする
- 加熱調理した食品は速やかに冷却し、室温で長時間放置しない
- 調理の際は、よくかき混ぜ空気に触れさせる
- 保存する場合は小分けにし、空気が全体に行き渡るようにする
以上のように、梅雨から夏の時期は、細菌が増殖しやすい食品には細心の注意が必要です。
食中毒を予防するためには、先述のような予防策を講じることが有効ですが、同時に細菌が体内に侵入しても、菌に負けない健康な状態を維持することも重要です。
もし食中毒になってしまった場合には、自己判断で下痢止めなどの薬をむやみに服用せずに、医師の診察を受けるようにしましょう。また、脱水症にならないように水分を取ることも大切です。
更新:2023.08.22