世界で流行中のはしか ワクチンが最大の予防策
メディカルブレイン編集部
2023年以降、はしかがアジアやアフリカを中心に世界的に流行しています。海外からの渡航者が増えるにつれ、日本でも感染の広がりが懸念されています。厚生労働省は2月末に都道府県に対し、はしかについての注意を呼びかけました。さらに、3月には海外からの飛行機内で、複数の人がはしかに感染したという報告もありました。
今回は、はしかの流行状況や病気の特徴、ワクチンなどについて解説します。
現在の流行状況
はしかは、コロナ禍中は世界的に減少していましたが、2023年以降はアジアやアフリカを中心に再び増加しています。特に中東やインド、インドネシアなどでの増加が目立っています。WHOの報告によると、2023年の世界の感染者は約30万人で、前年の約1.8倍になっています。
日本では、2015年にWHOから土着のウイルスがいない「排除状態」になったと認定されましたが、海外との往来が活発になるにつれ、国外から持ち込まれたウイルスによる流行が懸念されています。
はしかの特徴
はしかは、麻疹ウイルスによって引き起こされる全身感染症です。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同じ5類感染症に分類されています。
潜伏期間が10~12日と長く、段階的に症状が進行することが特徴です。
症状
はしかに感染すると、10~12日後に目の充血、目やに、咳、鼻水、発熱などの風邪のような症状が現れます。38℃ほどの熱が2~3日続いた後、いったん熱は下がりますが、その後全身に赤い発疹が現れ、再び39℃以上の高熱が数日続きます。全身の発疹が現れる前後には、口の中に白い斑点が現れることもあります。
合併症としては、肺炎や脳炎が引き起こされ重症化することがあり、脳炎は1000人に0.5~1人の割合で発生しています。
感染力と感染経路
はしかは、飛沫や接触だけでなく、空気感染します。
1人の感染者が平均で何人に感染させるかを示す「基本再生産数」は、インフルエンザが1~3人に対し、はしかは12~18人とされ、感染力が非常に強いことがわかります。そのため、免疫がない場合、感染者と同じ室内に一定時間いただけでほぼ確実に感染し、感染者のほとんどが発症すると言われています。
診断
多くの場合は症状や、感染者との接触状況などにより診断します。発疹が出る前は風邪の症状に似ているため、はしかと診断するのが難しい場合もあります。
疑わしい場合には、血液、咽頭ぬぐい液、尿によるPCR検査やウイルス分離検査を行います。
治療
はしかには特効薬がないため、治療は安静、水分と栄養補給、解熱薬、鎮咳薬などの対症療法が中心です。重症化することもあるので、何よりもワクチンを接種しておくことが重要です。
はしかにかかってしまった時の注意
はしかは風邪に似た症状ですが、感染者と接触した場合や発疹が出ている場合など、感染が疑われる場合は、必ず事前に医療機関に連絡したうえで受診するようにしてください。
最大の予防策はワクチン接種
麻疹ウイルスは非常に小さく、マスクを通過してしまいます。また、空気感染するので、手洗いでは防ぐことができません。
予防方法
はしかの予防は、ワクチンの接種が非常に有効です。1回のワクチン接種で95%の人が免疫を獲得しますが、確実な免疫を得るためには2回の接種が望ましいとされています。ワクチンを2回接種すると、99%以上の人が免疫を獲得すると言われています。
また、過去にはしかに感染したことがある人は、一生免疫がありますが、抗がん剤などの治療を受けた場合は免疫が低下している可能性があります。
ワクチン接種機会の回数
自分がはしかにかかったことがあるのか、ワクチンを何回打ったのか、覚えていない人も多いかと思います。ワクチン接種機会の回数は、生まれた時期によって異なります。
- ~1972年9月30日生まれ:0回
多くの人がはしかに感染して免疫があると考えられている世代ですが、かかったかどうかはっきりしない人は注意が必要です。 - 1972年10月1日~2000年4月1日生まれ:1回
1回接種の場合、接種から30年ほどで免疫が低下してくると言われています。
2回目を追加で接種した記憶がない人は、できれば2回目の接種をすると確実です。 - 2000年4月2日以降の生まれ:2回
自分に免疫があるかどうかわからない場合は、抗体検査を受けることで確認することができます。はしかが流行している海外に出かける場合や妊娠前に確認し、必要に応じてワクチンを接種しておくと安心です。特に、妊娠中はワクチンを接種することができないので注意してください。
はしかは感染力が強く、油断してはいけない病気です。流行する前に、自分の免疫状態を確認し、必要であればワクチンを接種することで感染拡大を防ぐようにしましょう。
更新:2024.04.08