1型糖尿病
基礎情報
概要
1型糖尿病は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを作る膵臓(すいぞう)の細胞が壊れてしまい、体の中でインスリンがほとんど、またはまったく作られなくなる病気です。日本では、15歳未満の子どもで年間10万人あたり約1.5〜2.5人が新たに発症すると報告されており、2型糖尿病に比べてまれな病気です。
1型糖尿病と2型糖尿病の違いを表に示します。
| 項目 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 多くは、免疫のしくみが誤って膵臓のベータ細胞を攻撃する自己免疫によって起こる。生活習慣は原因ではない | 体質(遺伝的要因)に、食べ過ぎ・運動不足・肥満などの生活習慣が重なって発症 |
| 発症の割合 | 糖尿病全体の約5%以下 | 糖尿病全体の90%以上を占める |
| 発症しやすい年齢 | 子どもや若い世代に多いが、どの年齢でも起こりうる | 以前は中高年に多かったが、最近は若い世代の発症も増加 |
| 体型との関係 | 体型とは関係なく発症する(やせ型の人にも起こる) | 肥満、特に内臓脂肪型肥満との関連が強い |
| インスリンの状態 | ほとんど、またはまったく作られなくなる | インスリンの効きが悪くなったり、作られる量が減ったりする |
| 症状の出方 | 比較的急に、のどの渇き・多尿・体重減少などが現れることが多い | 初期はほとんど症状がなく、気づかないうちに進行することが多い |
| 治療の基本 | 生涯にわたるインスリン注射(またはインスリンポンプ)が必要 | 食事療法・運動療法が基本で、必要に応じて飲み薬や注射薬を追加 |
| 日本での頻度 | 新規発症率は年間10万人あたり1.4〜1.6人程度とされ、少ない | 「糖尿病が強く疑われる者」は約1,100万人と推計(2024年国民健康・栄養調査) |
両者はともに血糖値が高くなる病気だが、発症のしくみは異なる。1型は多くの場合、免疫によるベータ細胞の破壊が最初に起こり、生活習慣とは関係なく発症する。一方、2型は体質と生活習慣が重なってインスリンの効きや分泌が徐々に低下していく経過をたどる。実際には両者の特徴が重なる例もあり、医師による抗体検査などでの見分けが必要になる場合がある。
インスリンが出なくなると、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれなくなり、血糖値が急激に上がります。原因の多くは、免疫のしくみが誤って自分自身の膵臓の細胞(ベータ細胞)を攻撃してしまう「自己免疫」によるものです。発症の数カ月〜数年前から、血液中に特定の自己抗体が現れることがわかっています。
抗体とは、本来は体に入ってきた細菌やウイルスをピンポイントで捕まえる、オーダーメイドの武器のようなものです。自己抗体は、この抗体が誤って自分の体の一部を目印にしてしまったものです。
子どもや若い人に多い病気ですが、大人になってから発症することも少なくありません。
原因
1型糖尿病は、生活習慣が原因ではありません。家族に1型糖尿病の人がいなくても発症することがほとんどです。生まれつきの体質に、ウイルス感染などのきっかけが重なることで、免疫が膵臓のインスリンを作る細胞(ベータ細胞)を誤って攻撃してしまい、発症すると考えられています。
自己免疫による1型糖尿病の経過は、3つの段階に分けられます。第1段階は、血液検査で複数の自己抗体が見つかるものの、血糖値は正常な時期です。第2段階は、自己抗体に加えて血糖値にわずかな異常が出始める時期、第3段階は、血糖値が糖尿病の基準まで上がり、症状が現れる時期です。第1段階になると、時期には個人差がありますが、生涯のうちにほぼ全員が症状のある1型糖尿病に進むとされています。
そして、1型糖尿病は、発症のしかたによって3つのタイプに分けられます。数週間〜数カ月で症状が出る「急性発症1型糖尿病」が最も多く、ほかに、1週間前後のとても短い期間で急に発症する「劇症1型糖尿病」と、数年かけてゆっくりインスリンが出なくなる「緩徐進行1型糖尿病」があります。劇症1型糖尿病は自己抗体が見つからないことが多く、上の3つの段階にはあてはまりません。緩徐進行1型糖尿病は大人に多く、はじめは2型糖尿病と見分けがつきにくいことがあります。
症状
症状が現れるのは主に第3段階からです。急性発症1型糖尿病では、のどが渇く、水を多く飲む、尿の回数や量が増える、体重が減る、といった症状が比較的短期間(数週間程度)で急に現れるのが特徴です。食欲はあるのに体重が減ることや、強い疲労感、目のかすみを伴うこともあります。
治療が遅れてインスリン不足がさらに進むと、血液が酸性に傾く糖尿病ケトアシドーシスという、とても危険な状態になることがあります。腹痛、吐き気、嘔吐、特徴的な深く速い呼吸、意識がぼんやりするといった症状がみられたら、緊急の治療が必要です。米国の報告では、1型糖尿病と新たに診断された子どもの約3分の1が、診断の時点ですでに糖尿病ケトアシドーシスを起こしていました。
検査・診断
血糖値とHbA1c(過去1〜2カ月の血糖の平均を反映する値)を調べ、随時血糖値(食事の時間に関係なく測った血糖値)200mg/dL以上などの、2型糖尿病と共通の診断基準を満たすかを確認します。
さらに、血液中の自己抗体(GAD抗体など)を調べて、1型糖尿病であることを確かめます。急性発症1型糖尿病では、診断時に約85〜90%の人でいずれかの自己抗体が見つかります。自己抗体が見つからない場合は、インスリンを作る力の指標であるC-ペプチドという物質の値も参考にします。なお、劇症1型糖尿病では自己抗体が見つからないことが多く、発症までの経過や検査の結果をあわせて診断します。
治療
1型糖尿病では、原則として生涯にわたり、インスリンを体の外から補う治療が必要です。治療法には、1日に複数回注射する方法と、インスリンポンプという機器で少量を持続的に注入する方法があります。注射では、1日を通して働く「基礎インスリン(持効型)」と、食事の前に打つ「追加インスリン(超速効型など)」を組み合わせます。近年は、血糖値を自動で測り続ける機器(持続血糖モニター)と連動し、必要な量を自動調整するポンプも使われています。
これらの機器を使うことで、低血糖を減らし、血糖値を安定させやすくなることが研究で示されています。ただし、ポンプのチューブが詰まるなどしてインスリンが届かなくなると、短時間で糖尿病ケトアシドーシスを起こすことがあります。トラブルが起きたときの対処法も身につけておきましょう。
食事については、食事に含まれる炭水化物の量に応じてインスリンの量を調整する方法(カーボカウント)を、管理栄養士から個別に学ぶことが推奨されます。
インスリン治療中は、低血糖に注意が必要です。冷や汗が出る、手がふるえる、どきどきする、強い空腹感がある、などが低血糖のサインです。このようなときは、すぐにブドウ糖や砂糖を含むジュースなどをとります。いざというときのために、ブドウ糖をいつも持ち歩くようにしましょう。
低血糖で意識がもうろうとし、自分で対処できないときは、周りの人による救急車の要請などが必要です。家族や学校、職場の人にも、低血糖のときの対応を伝えておくと安心です。
予防
現時点で、1型糖尿病の発症そのものを確実に防ぐ方法は確立されていません。発症は生活習慣が原因ではないため、食事や運動によって予防することはできません。
ただし、血液中に自己抗体が見つかった人(まだ症状が出ていない段階)に対しては、定期的な血糖検査による早期発見や、発症を遅らせる薬剤の研究が進められています。発症を遅らせる薬剤は米国では承認されていますが、日本では現在、臨床試験の段階です。早期に発見できれば、重い糖尿病ケトアシドーシスを起こす前に治療を始められるという利点が報告されています。
1型糖尿病と診断された後は、インスリン治療を正しく続けて血糖値を良い状態に保つことが、合併症の予防につながります。あわせて、低血糖やシックデイ(かぜなどの体調不良時)の対処法を身につけておくことも欠かせません。特に、食事がとれないときでも、自分の判断でインスリンを止めてはいけません。インスリンを止めると糖尿病ケトアシドーシスを起こす危険があるため、主治医に相談しましょう。
また、目や腎臓、神経などの合併症を早く見つけるため、定期的に検査を受けましょう。インスリン治療を続けていれば、運動や部活動、進学や仕事など、ほかの人と同じように生活することができます。
更新:2026.10.16

