りんぱふしゅ
リンパ浮腫
基礎情報
概要
リンパ浮腫は、リンパ液の流れがうまくいかず、手や足がむくんで重さを感じたり、皮膚が厚くなったりする症状が出る病気です。特にがんの手術でリンパ節(*1)を切除した後などに起こりやすいとされています。

※1:リンパ液のろ過を行う場所で、全身に約300〜600個存在する
リンパ浮腫の原因
リンパ浮腫の最も一般的な原因は次のとおりです。
- がん:がん細胞がリンパ管を塞ぐと、リンパ浮腫が発生する可能性があります。たとえば、リンパ節やリンパ管の近くで増殖する腫瘍が大きくなり、リンパ液の流れを塞ぐことがあります。
- 放射線治療:放射線はリンパ節やリンパ管の瘢痕化(損傷や炎症を繰り返し、組織が繊維化し、硬くなる状態)や炎症を引き起こす可能性があります。
- 手術:がんの手術では、病気が広がっているかどうかを確認するためにリンパ節を切除することがよくあります。しかし、これによって必ずしもリンパ浮腫が発生するわけではありません。
リンパ浮腫の症状
リンパ浮腫の主な症状として、以下のようなものがあります。
- 1.むくみ(浮腫)
- 手足や指などが腫れて、靴や指輪がきつくなることがあります。むくみがひどくなると、腕や脚の形が変わって見えるほど腫れる場合もあります。
- 2.重だるさや疲労感
- 腕や脚にリンパ液がたまりやすくなると、重い感じが続き、ちょっとした動作でも疲れやすくなります。
- 3.皮膚の変化
- 皮膚が厚く硬くなったり、乾燥やひび割れが起きやすくなったりします。皮膚の色が変化することや、張りを失ってたるんだ感じになることもあります。
- 4.感染症のリスク上昇
- リンパ液の流れが滞ると、ばい菌やウイルスがたまりやすくなるため、蜂窩織炎(*2)(ほうかしきえん)やリンパ管炎(リンパ管の炎症)などが起こりやすくなります。
早期のサインとして、「皮膚をつまみにくくなる」「手足の静脈が見えにくくなる」「靴下や下着のゴムの跡がなかなか消えない」といった変化に注意が必要です。これらは、目に見える大きな腫れが出る前の重要なサインです。
※2:細菌感染による皮膚の炎症
リンパ浮腫の検査・診断
リンパ浮腫の診断は、医師による問診と身体診察が中心になりますが、状態を詳しく調べるために次のような検査を行うことがあります。
- 1.画像検査
- リンパシンチグラフィー(*3)
放射性物質を注射し、その分布や流れをカメラで撮影してリンパ管の通り道を調べます。 - MRI
血管だけでなく、軟部組織の状態も詳しく見ることができ、リンパ液のたまり具合や組織の変化を確認します。 - 超音波検査
手軽に実施でき、腫れやむくみの程度、皮下組織の状態を観察します。 - ICGリンパ管蛍光造影
特殊な試薬を注射して赤外線カメラで撮影することで、リンパ液がどこで滞っているかをリアルタイムで可視化でき、早期診断や手術方針の決定に非常に役立ちます。
※3:リンパ液の流れを画像で確認する検査
リンパ浮腫の治療
リンパ浮腫に対する治療の目的は、むくみをできるだけ軽減し、症状の進行を防ぎ、日常生活を快適に送れるようにすることです。主な治療やケアの方法としては次のようなものがあります。
- 1.圧迫療法
- 専用の弾性包帯やストッキングを使って、患部を適度に圧迫します。これによりリンパ液の循環を促進し、むくみを抑えます。
- 2.リンパドレナージ
- リンパの流れに沿ったソフトなマッサージを行うことで、皮下にたまったリンパ液を体の中心部へ流しやすくします。専門のセラピストによる施術のほか、医師や看護師の指導のもとで自己ケアとして行われる場合もあります。
- 3.運動療法
- 血液やリンパ液の循環を良くするために、腕や脚を動かす軽い運動を行います。水中ウォーキングやストレッチなど、関節に負担をかけにくいものがおすすめです。
- 4.スキンケア(皮膚の衛生管理)
- 皮膚を清潔に保ち、保湿クリームなどで乾燥を防ぐことが重要です。小さな傷から感染が広がりやすくなるため、けがを防ぐ対策や傷口の早期処置を徹底します。
- 5.空気圧迫装置(間欠的空気圧迫療法)
- 腕や脚に装着する専用の機器を使い、空気圧でリズミカルに患部を圧迫する方法です。リンパ液を体の中心に押し戻す効果が期待できます。
- 6.手術療法
- 症状が重い場合には、リンパ管と静脈をつなぐ手術などを行うことがあります。しかし、手術後も圧迫療法などのケアが必要なケースが多いです。
こうした治療の中で、現在の国際的な標準治療は、圧迫療法・リンパドレナージ・運動療法・スキンケアを組み合わせた複合的排液検法です。
リンパ浮腫の合併症
リンパ浮腫を放置すると、以下のような合併症が起こりやすくなります。
- 蜂窩織炎:患部が急に赤く腫れ、高熱が出るこの状態は、リンパ浮腫を一気に悪化させます。赤み・痛み・熱を感じたら、すぐに主治医に連絡し、抗菌薬による治療を受けることが不可欠です。
- 敗血症:感染症によって全身の臓器に障害が発生する生命を脅かす病気
- 皮膚の変化:非常に重度のリンパ浮腫を患う人の中には、患肢の皮膚が厚くなり硬くなり、象の皮膚のようになる人もいます。
更新:2026.09.25

