がん患者さんのQOL(生活の質)を重視した多職種によるチーム医療の推進
がん診療推進センター
緩和ケアチームの取り組み
「緩和ケア」は、特別なものではなく、がんと診断された時から、手術、抗がん剤、放射線治療などの積極的治療と並行して行われるものです。
がんになると、痛みや倦怠感などの体のつらさ、不安や気持ちの落ち込みなど心のつらさ、経済的負担や仕事を続ける上での問題など社会的なつらさなど様々な苦痛が生じることがあります。診断後早期から、薬物療法や精神的ケアなどでそれぞれの苦痛に対処するだけではなく、病気の理解を助け、より本人の希望に沿った治療選択のサポートも行います。緩和ケアは、患者さんだけでなく家族も対象です。
痛みなどのつらい症状があると、治療意欲が低下し、日々の生活の質も低下してしまいます。できるだけ病気になる前の生活の質を維持しながら、前向きに治療を受けられる様サポートします。また、病状が進行し積極的治療が難しい段階になっても、つらい症状を和らげることで、その人らしい人生を送ることができます。住み慣れた自宅での療養を希望される場合は、在宅医や訪問看護、介護保険など在宅サービスの調整も行います。
当院の緩和ケアチームは、緩和ケア専門医や認定看護師、薬剤師、公認心理師、リハビリ、栄養士、MSW等多職種で構成されており、患者さんご家族の様々な苦痛に対応できる様、日々活動しています。週1回のカンファレンスで情報共有し、入院患者さんの元へ回診に伺います。緩和ケア外来も行っており、緩和ケア専門医と認定看護師が、通院中の患者さん家族の困りごとに対応しています。
「つらい症状があるけれど、誰に相談したらいいかわからない。」そんな時は、主治医や担当看護師等を通じて、緩和ケアチームにご相談ください。
通院治療センターでの最新の取り組み
通院治療センターは、がん患者さんの化学療法を外来で専門的に行うことを目的に、2005年5月に開設しました。快適な治療環境を提供するため、2015年8月に外来化学療法室を12床から20床へ増床し中央診療棟2階へ移転しました。(現在は21床)治療室は落ち着いた内装とプライベートを配慮した空間を用意し、液晶テレビ付きのベッドとリクライニング椅子の2種類のタイプが選べ、患者さんの希望や病状に合わせた治療環境を提供しています(写真1)。
センターは専門医が運営にあたり、がん専門薬剤師、認定看護師が専任し、治療の安全確保と予期せぬ緊急時にも速やかな対応が可能となっております。
また治療ごとに「症状に関する質問票」を患者さんに記入していただき、化学療法ごとの症状のつらさを数値化し、主治医とセンタースタッフが情報を共有するようにしています。言い出しにくい治療のつらさを「患者さん発」の情報をもとに客観的に評価することで、吐き気や痛みに対する支持療法を遅滞なく開始しており、双方向性の医療の提供に取り組んでいます。
リンパ浮腫ケア外来の活動
リンパ浮腫(ふしゅ)とは、「リンパ管の途絶・圧排によりリンパ流が停滞し、リンパ液が組織間に貯留してむくみを生じる状態」をいいます。
私たちは、日常生活の中で上肢や下肢を動かすことが不可欠です。仕事の内容によっては酷使していることも考えられます。リンパ浮腫には、潜伏期間があり、術後にリンパ浮腫に対する指導を受けていても初期症状を見逃し、症状が悪化してから困惑する患者さんも多いです。
リンパ浮腫の治療は、第1に早期発見・治療です。発症6~8週以内の対処が必要であり、悪化を防ぐための一番の方法は、予防です。リンパ浮腫に対する知識を持って、日常生活でセルフケアに心掛けることが必要です。しかし、症状が悪化してしまったときには、専門的な治療が必要になります。
リンパ浮腫ガイドラインによると、乳がん術後リンパ浮腫の治療として弾性スリーブを使用することで、浮腫が軽減したという報告があります。リンパ浮腫に対する弾性着衣の有効性が示唆されています。また、ほかの治療法を加え複合的に介入することにより、さらに改善するとも示唆されています。
当院ではリンパ浮腫ケア外来を開設し(写真2)、早期発見のためのリンパ浮腫に対する情報提供とセルフケアへの支援を行い、浮腫が発症した患者さんに対し複合的理学療法を施行しています。リンパ浮腫ケア外来において、乳がんや子宮がん、前立腺がんなどの治療によって起こるリンパ浮腫に悩まされる患者さんのための治療環境をつくり、患者さんが安心して治療を受けられるように支援していきます。
参考文献:日本リンパ浮腫研究会編 リンパ浮腫診療ガイドライン 金原出版株式会社
がん相談支援センター
当院は、地域がん診療連携拠点病院で、「がん相談支援センター」を設置しております。「自分のがんについて知りたい」「どの治療を受けるか迷っている」「今後の生活が心配だが、誰に相談すればいいか分からない」「気持ちが落ち込んでつらい」「仕事が続けられるかどうか分からない」など、さまざまな相談に対応しています。
がん相談員、医療ソーシャルワーカー、医師、看護師、栄養士、薬剤師が連携して相談を受けています。
治療を受けながら仕事を続けたい!を応援します
現在、日本人の2人に1人は「がん」になるといわれ、また働く世代である25歳から59歳でがんになる方も年々増加しています。こうした中、医療の進歩により、治療によって治るがんは多くなってきており、多くのがん患者さんが治療しながら働き続けることができる時代になってきています。
第2期以降のがん対策推進基本計画には「がん患者さんの就労支援」が盛り込まれています。当院では、ハローワークの相談員担当の方との連携で「お仕事に関する相談会(毎月第4木曜13:30~15:00)」と、産業保険センター社会保険労務士との連携で「両立支援(毎月第1金曜14:00~17:00、『サロンやわらぎ』にて開催)」を行っています。医療ソーシャルワーカー、がん相談員が対応していますので、がん相談窓口で相談してください。
更新:2024.10.18