間質性肺炎の最新の診断と治療
呼吸器内科
間質性肺炎とは
肺はスポンジのように空気を入れる肺胞という細かい部屋が無数にあります。肺は非常に柔らかく伸縮するので、肺の中に多くの空気を吸い込むことができます。間質性肺炎は肺胞の壁(間質)に慢性的に炎症を起こし、線維が沈着し厚く硬くなる病気です。本来柔らかく大きく膨らむ肺がガチガチに硬くなり肺活量が減少していく病気です。50歳以上の方に多く、主な症状は空咳や運動した時の息切れです。
間質性肺炎は一般的に慢性・進行性です。その中で最も頻度の多い特発性肺線維症という病気では呼吸不全の進行のため、診断後からの平均余命が3~5年程度とされており、国の指定難病となる疾患です。この他に、間質性肺炎には関節リウマチや全身性強皮症などの膠原病が原因になっていたり、カビの胞子や羽毛布団などに入っている羽毛の粉などを吸い込むことで発症する過敏性肺炎などが原因になることがあります。このような間質性肺炎の原因を特定するために、精密検査が必要となります。
間質性肺炎の大きな問題は、風邪などを契機に急激に病状が悪化し、治療を行っても呼吸不全が進行し非常に致死率の高い病態になることです。このような病態を「急性増悪」と呼び、その頻度は年間5~10%程度とされます。急性増悪は間質性肺炎による死亡の大きな要因となっており、発症抑制ができる治療法が望まれています。
間質性肺炎の最新の診断方法
間質性肺炎の原因を特定するために血液検査やCT検査、気管支鏡検査(肺のカメラ)、肺生検(肺を一部採取する検査)などの検査を行う必要性があります。この他に、重症度を診断する方法として、肺活量検査などの呼吸機能検査や運動している間の呼吸状態を評価する歩行負荷試験などがあります。
肺生検による間質性肺炎の診断には2~3cm大の肺の採取が必要なため、これまでは全身麻酔下で手術的に行う「外科的肺生検」が主流でした。しかし全身麻酔による肺生検は、肺に障害を持つ患者さんや合併症を持つ高齢の患者さんには危険性がありますし、当然手術後には痛みを伴いますので、できれば避けたい検査法です。そこで当施設では、気管支鏡検査で肺を凍結して5mm程度の比較的大きな肺を採取できる「クライオ生検」を行うようにしています。3日程度と入院期間も短く、侵襲度も低いため、まずクライオ生検を行った上で外科的肺生検の必要性を検討しています。
間質性肺炎の診断は難しいので、当施設ではインターネット回線で他病院の膠原病を専門とする内科医、肺を専門とする放射線科医と病理医を繋いで、CTや生検標本の評価を行い、より正確な診断に結びつけています。このように多職種で一人一人の患者さんの診断を丁寧に検討することが重要ですが、多くの施設ではこのような診断はできていないのが実情です。
間質性肺炎の最新の治療~抗線維化薬
間質性肺炎の中で頻度の高い特発性肺線維症は、かつては有効な治療法が乏しく不治の病とされていました。しかし、2008年にピルフェニドン、2015年にはニンテダニブという抗線維化薬が認可されました。これらの薬剤を服用することで肺が硬くなることを防ぐことができ、経年的な肺活量の減少を抑制する効果が報告されているとともに、生存期間が延長することが知られています。また、ニンテダニブには急性増悪の発症抑制効果が報告されており期待されています。近年では、ニンテダニブは特発性肺線維症以外の進行性の線維化がみられる間質性肺炎に保険適応が拡大され、多くの患者さんの治療に貢献できるようになりました。これらの治療薬は病気を元に戻すことはできませんので、病気が軽いうちに診断し内服を開始した方が有効でしょう。
抗線維化薬はそれぞれ特徴的な副作用があり、ピルフェニドンは光線過敏症という日焼けしやすくなる副作用、ニンテダニブは下痢の副作用が多く見られます。また、共通の副作用として薬剤性肝障害、食欲不振などが出現します。
これら2つの抗線維化薬は非常に高額で(薬価:ピルフェニドン187,839円/月、ニンテダニブ 394,464円/月)、長期間治療を継続する必要性があり、患者さんの経済的な負担が問題となります。このため、診断のための精密検査を十分に行い国の難病患者の認定を受け医療費助成を受ける手続きを同時に進めていくとよいでしょう。
このように、間質性肺炎の診断や治療適応の判断、治療薬の副作用管理など、この疾患の診療には専門的な知識を必要とします。是非、福井大学病院を初めとした呼吸器内科専門医の在籍する病院での診療をお勧めいたします。
更新:2023.09.10