安全な医療・感染対策に欠かせない総合滅菌管理システムについて
滅菌管理部
滅菌管理部(中央材料部の業務)
滅菌管理部は、病院内(手術部・病棟・外来)で使用する医療用再生使用器材(通称鋼製器具、多くはステンレス製)の洗浄・セット組み・滅菌を主な業務としています(写真1)。病院内には約3万29点(うち2万84点が手術部)の多種多様の器材があります(写真2)。これらの取り扱いや処理には専門的な知識が要求され、器材の特性に応じた洗浄・滅菌法の選択と各工程での検証作業が必要です。医療現場に質の高い器材の提供をすべく、専門の職員が1日約1800点の処理を行っています。
総合滅菌管理システム
概要
器材は100回以上再生使用されますが、いつ、どこで、誰に使用されたかを1点ごとに使用履歴(トレサービリティ)として残すことは不可能でした。これを実現したのが、2014年の新築移転を機に当院に導入された「総合滅菌管理システム」で、当時は全国でも例のないものでした。システム導入後は全国各地より医療関係者が見学のために来院しています。
手術器材の個体識別法とシステム運用
まず、医療用再生使用器材すべてに個体識別のための微小な(2.5mm角)2次元コード(写真2)をレーザー刻印しました。つまり、器材1本1本にマイナンバーを付与したわけです。2次元コードは、作業工程で専用のリーダー(写真3)で読み取られ使用履歴管理が行われます。これらの器材は各手術で使用しやすくするために、さらに数本~数十本単位でセット組みされてコンテナに収納されます(写真4)。各々のコンテナにはバーコードを貼付して個別管理を行います(写真4)。これにより器材の使用履歴のみならず、同時に洗浄や滅菌の使用履歴管理もできる理想的な総合滅菌管理システムが構築されました。
コンテナ類を数百個収納可能な自動回転棚(立体駐車場と同様の構造、写真5)は、出入庫作業がバーコード読み取り機能を有するスマートフォン型携帯情報端末から簡単に行うことができるのが特徴で(写真6)、時間の短縮や省スペース化にも寄与しています。しかも作業は手術や器材に関する専門的知識がなくても迅速かつ正確に行えます。
システムの有用性
システムの有用性として、器材のトレーサビリティ確保による医療安全の質向上があります。具体的には、カウントミスがないことによる器材の体内遺残防止、正確なセット組み、紛失防止などが挙げられます。感染対策としては、例えばクロイツフェルト・ヤコブ病(プリオン病、狂牛病)のように、その時点で未知の感染症が後日明らかになった場合も、器材の使用履歴が直ぐに分かるため、感染確率の高い対象患者に使用された器材が特定され、感染の拡大防止が可能となります。
術式別の器材のセット組みは、これまで手術や器材に関する専門知識を持ったベテラン看護師が行っていましたが、本システム導入により作業に専門知識が不要となりました。現在ではこの業務は他職種へシフトされ、看護師が他の看護業務に専念できるという業務改善にもつながっています。
このように、本システムは医療安全、感染対策、さらに作業の効率化や職員の業務負担軽減にもつながっています。
本システム導入により、手術器械の組み立て間違いが93%減少し、労働生産性は34%向上、当該部署での総残業時間は85%減少しました。
更新:2024.10.21