日本人に適した股関節疾患の治療
整形外科
股関節疾患の種類
股関節周囲や臀部に痛みを生じる疾患は股関節そのものの疾患、神経痛を起こす腰椎疾患や骨・軟部腫瘍など多岐にわたります。股関節外科医は主に股関節そのものや周囲の骨の治療を得意としています。先天性疾患である発育性股関節形成不全、それに続発する変形性股関節症、小児や最近では高齢者にも多い化膿性股関節炎、厚生労働省特定疾患である大腿骨頭壊死症、高齢者の急速破壊型股関節症、形態異常によって起こる大腿骨寛骨臼インピンジメント、それに続発する関節唇損傷などの治療を行います。
変形性股関節症の治療
日本人の場合、先天性股関節脱臼や発育性股関節形成不全に続発して生じる二次性変形性股関節症が多いとされています。欧米人に多い一時性変形性股関節症と違い、もともと寛骨臼や大腿骨に形態異常があるのが特徴です。乳幼児期、小児期より治療が必要なことが多く、その後も進行予防と経過観察が必要となります。変形が進行すると徐々に疼痛が増強し、いずれは日常生活に支障をきたします。薬などで疼痛が緩和しない場合は手術治療が選択されます。比較的若い患者様で変形が比較的軽度でも疼痛が強く手術が必要な場合は、形の悪い関節周囲の骨を切って良い形に直す骨切り術が行われます。代表的なものに寛骨臼そのものを股関節ごと寛骨から切り離し、良い位置に回転移動させる寛骨臼回転骨切術があります。自分の関節が温存できるメリットはありますが、比較的術後の治療期間が長くなります。また、変形の進んだ関節では良好な成績は見込めないことが多いです。変形が進んでいたり、早期の社会復帰を目指す場合や比較的高齢の患者様の場合は人工股関節置換術が選択されます。
福井大学が得意とする人工股関節による治療
以前は人工股関節を入れると正座やしゃがみこみなどの日常生活動作が出来なくなる、禁止されると聞かれたことがあるかもしれません。現在では日常生活動作に関する研究も進み、日常生活動作を行っても問題なく角度に人工関節を設置することが出来ます。そのために当院では基本的にCT-based Navigation(図1)を使用しています。設置誤差は角度で2°未満、設置位置でも2mm未満という精度が報告されており手術計画通りに行うことが出来ます。そのため術後に生活動作を制限することなく、術後の生活を送って頂いております。今後はロボットを用いたRobotic-surgery(図2)も導入を考えておりさらに正確な手術が出来るようになっていく予定となっています。
またNavigation systemは、人工関節だけでなく発育性股関節形成不全症に対して行われる寛骨臼回転骨切り術にも応用しています。寛骨臼回転骨切り術は言葉の通り寛骨臼をノミで球状に切り抜き、切り抜いた骨片を回転させる手術ですが、Navigationを使用することで正確かつ安全に手術を行えるようになっております。
いろいろな疾患・いろいろな治療
股関節周囲に問題が生じる疾患は前述の様に多岐に渡ります。病気の種類、 進行度、ライフスタイルなどによって治療法にはさまざまな選択肢がありま す。手術だけでも人工関節はもちろん様々な骨切術や関節鏡視下手術などの選択肢があり、福井大学ではあなたに最適な治療法が見つけられると思います。
更新:2024.07.04