大動脈瘤・解離の最新の治療
心臓血管外科
大動脈疾患は、大きく分けて血管径が拡大し破裂する可能性がある大動脈瘤と血管壁が裂ける大動脈解離があります。大動脈瘤の場合は、ほぼ症状はなく、偶発的に発見されることがほとんどです。しかし、破裂すると、半数は病院到着前に死亡する可能性があるため、大動脈径が5cm以上に拡大している場合(正常は3cm未満)は手術が必要です。一方、大動脈解離の多くは、急激な胸背部痛を訴えることが多く、解離している場所によっては緊急手術を必要とします。
当院では、開胸手術、開腹手術、カテーテル治療(ステント治療)のすべてに24時間対応可能であります。毎朝カンファレンスを行い、大動脈瘤および大動脈解離の場所や形態、患者様の年齢に応じて、最も適した手術を緻密に計画しています。
1胸部大動脈瘤
胸部(横隔膜より頭側側)の大動脈が瘤化した状態です。一般的に、大動脈瘤の大きさが5cmを超えると手術が必要です。開胸のみで手術(一期的)を完成させる場合と開胸とステント治療を組み合わせたハイブリッド治療(二期的)、ステント(カテーテル)治療のみで完成させる治療法(TEVAR)があります。当科では、心臓血管外科5名のうち3名はステント治療の実施資格を有し(一人は指導医)、すべての治療法に対応できます。それぞれの治療法にはメリット、デメリットがあり、年齢や瘤の場所、形態に応じて、緻密に術式を検討します。
2胸腹部大動脈瘤
胸腹部大動脈瘤は、大動脈瘤手術の中でも、頻度が少なく、最も手術が複雑で、他の動脈瘤に比べて死亡率や合併症が高い手術です。ほぼ無症状で経過するため、偶発的に発見されます。腹腔動脈、上腸管膜動脈、左右腎動脈がこの部位の大動脈から起始します。 また、脊髄の栄養に重要である肋間動脈も起始するため、術後に下半身麻痺などの合併症が起こることがあります。 当科では、最新の脊髄麻痺予防を積極的に行い、人工血管置換術を行います。
3腹部大動脈瘤
腹部大動脈が瘤化した状態です。大動脈瘤の発生部位で最も多いのが腹部大動脈瘤です。正常の大動脈径は3cm未満ですが、これが拡大し、5cm以上になると手術適応となります。ほとんどが無症状で、偶発的に発見されます。手術には、腹部を正中切開して、大動脈を人工血管に置換する方法と両側鼠径部を約2cm切開して、カテーテルを使用してステント付き人工血管を大動脈瘤内に留置する方法(EVAR)があります。当院心臓血管外科には、ステント治療施行医が4名いるため、どちらの手術も施行可能です。患者様の状態、瘤の形態に準じて、最適な治療を判断します。
4急性大動脈解離
急性大動脈解離は、大動脈の内膜に亀裂が入り、大動脈の壁が内膜と外膜に分離することです。多くの場合が、緊急手術を必要とし、放置すると死亡する可能性が高くなります。当科では、人工血管置換、ステント治療を駆使し、救命を第一に質の高い手術を行っています。
当院では、様々な大動脈瘤(上行、弓部、下行、腹部、胸腹部)に対して、患者様の状態(年齢、体力など)に合わせて、適切な手術を行いますので、お気軽に外来受診をしてください(水曜日:福井、山田、田邉/金曜日:髙森、田邉)。
更新:2023.09.13