基礎情報

概要

先天的に大腿骨頭が臼蓋(きゅうがい)から外れている状態を先天性股関節脱臼といいます。

乳児の股関節脱臼は、生まれた時に脱臼しているのではなく、関節が軟らかい新生児期から徐々に脱臼に進んでいきます。乳児の場合、脱臼していても痛みがないことが特徴で、乳児健診で発見されることが多く、歩き始めてから見つかることもあります。

脱臼を放置すると、成長とともに変形が進んでいき、足の動きが悪くなる可動域制限や、左右の足の長さが違う脚長差(きゃくちょうさ)、臼蓋形成不全による荷重時の痛みなど、日常生活に大きな支障が出る場合があります。足が開きにくい開排制限(かいはいせんげん)や大腿部のしわの非対称、顔がいつも同じ方向を向いているなどの脱臼のサインを見逃さないことが大切です。

治療

先天性股関節脱臼の治療の中心は保存的治療で、リーメンビューゲル装具や牽引(けんいん)を併用する、手術をしないで関節を元に戻す徒手整復(としゅせいふく)を行います。

通常3歳までに治療を開始すれば、ほぼ全例で整復されます。無理な整復を行うと、大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)(組織や細胞が死ぬこと)を発生し、あきらかな骨頭変形や、成長障害による脚長差、臼蓋形成不全を引き起こし、複数回の手術が必要になるので注意が必要です。強引な整復は避け、リーメンビューゲル装具での整復にこだわらず、牽引治療による整復に切り替える対応ができます。牽引治療では十分に骨頭を引き下げることによって、関節周囲の筋肉などを緩めたのちに徒手整復します。3歳以上で脱臼が判明したり、保存的治療後に臼蓋形成不全が改善しない場合は、手術が必要になります。

更新:2022.08.15