手術でよくなるパーキンソン病ー脳深部刺激療法DBSについて
福井大学医学部附属病院
脳神経外科
福井県吉田郡永平寺町
DBSはどのような手術?
手が震えて体が思うように動かなくなり、歩行障害などが出現するパーキンソン病では、脳内の神経細胞が変性し、神経伝達物質であるドーパミンが減少した結果、視床下核と淡蒼球内節(たんそうきゅうないせつ)という脳の深い部分が異常に興奮した状態になっています。
パーキンソン病の外科治療である脳深部刺激療法は、DBS(deep brain stimulation)と呼ばれ、通常、全身麻酔または局所麻酔で行います。左右の前頭部の頭蓋骨(ずがいこつ)に1.5cmほどの小さな穴を作成し、脳深部に細いひものような電極を留置します(写真1、2)。さらに胸の皮下に電池を埋め込みます。術後、持続的に電気刺激を行うことで興奮状態の神経活動を抑制し、パーキンソン病の症状が改善します。手術を受けても、術後の生活に大きな制限はなく手術の跡も目立ちません。通常の電気刺激であれば不快感もありません。
手術の危険は?
手術には電極をターゲットに留置するため、定位脳装置やナビゲーションシステム、興奮した神経の微小活動電位を記録する装置などを使用して行います。脳外科手術の中では、DBSは技術的に難易度の高い手術ではありません。合併症として脳出血や感染の危険が数%ありますが、手術の手順を一つひとつ確認しながら慎重に行うことで安全な手術ができます。
手術を受ける前に知ってほしいこと
DBSで大事なことは、手術適応のある患者さんの選択や術前後の抗パーキンソン病薬の調節です。これらは神経内科の先生方のきめ細かな診察、治療(投薬)が不可欠です。DBSは薬の効果を高め、薬の副作用のであるジスキネジアなどを抑えることで患者さんの日常生活が劇的に改善しますが、術後も神経内科や脳外科での診察、投薬が必要です。また患者さん本人の手術や病気に対するご理解も非常に重要です。
DBSではパーキンソン病そのものは完治しませんが、低下していく日常生活を薬の治療が始まって調子の良かったころ(ハネムーン期)に戻すことができます。最近はパーキンソン病の症状が軽いうちに、外科治療を行うほうがいいと報告されています。パーキンソン病で悩んでいる方には、ぜひ知っていただきたい治療です。
更新:2024.10.08