治療抵抗性統合失調症に対する非定型抗精神病薬クロザピンの使用

神経科精神科

統合失調症とは

統合失調症の統合とは、思考や行動、感情などをまとめていく能力のことです。この能力が損なわれるのが統合失調症で、考えや気持ちがまとめられなくなり、日常生活に支障をきたす疾患です。

主な症状としては、誰もいないのに自分を責める声が聞こえてきたり(幻聴)、見張られている・盗聴されているなど恐ろしい考えに取りつかれ、信じ込んでしまったり(妄想)、感情の起伏がなくなり、自分の部屋に引きこもって誰とも話さなくなったりします。より早く治療を受けることが重要で、それにより患者さんは自立した社会生活に復帰することが可能となります。

抗精神病薬による治療

治療の基本は薬物療法です。並行して精神療法、作業療法などが行われます。症状が重篤で難治性の場合は、電気けいれん療法を行うこともあります。薬物療法の中心となる抗精神病薬は、神経伝達の乱れを修正する薬で、長年、定型抗精神病薬という薬が用いられていました。しかし、これらの薬は副作用としてパーキンソン病のような症状などが出てくることが多いという問題がありました。

このような定型抗精神病薬に代わって、最近では非定型抗精神病薬という薬が用いられることが増えてきました。ただ、非定型抗精神病薬を服用中には血糖値が高くなったり体重が増加したりする場合もあるので、その点には注意が必要です。

非定型抗精神病薬クロザピンとは

一方、患者さんの中にはいくつかの抗精神病薬を服用しても症状が改善しなかったり、あるいは副作用のために服用を継続できなかったりする人がいます(治療抵抗性統合失調症)。クロザピンは非定型抗精神病薬の1つで、神経学的な副作用が少ないことも知られていました。1971年からヨーロッパを中心に使用されるようになりましたが、無顆粒球症という重大な副作用が生じる可能性が明らかとなり、国内で使用されることはありませんでした。しかし、その後の調査で、ほかの薬剤には反応しない統合失調症の治療に効果があることが明らかとなり、2009年からは国内でも使用されるようになりました(商品名クロザリル)。

前述の無顆粒球症や高血糖など副作用への懸念から、クロザピンの使用はクロザリル患者モニタリングサービス(Clozaril Patient Monitoring Service: CPMS)に登録された医療機関で行われる必要があります。当院は、2010年6月に福井県では最初にCPMSに登録されました。以後、当科では血液内科や内分泌内科、薬剤部などと連携を取りながら同剤を用いた治療を行っており、良好な治療成果を上げています。

クロザピンを開始するためには、それまでに複数の抗精神病薬を服用してきても症状が改善しない場合や、副作用に関する基準を満たしている必要があり、また、患者さん本人または代理の人が同剤使用に同意して、患者さんがCPMSに登録された上で、CPMSに登録された医療機関に入院する必要があります。クロザピンを用いた治療をご検討されている場合は、神経科精神科までご連絡ください。

更新:2024.10.07