新しいうつ病の治療法―反復経頭蓋磁気刺激療法(TMS)

神経科精神科

反復経頭蓋磁気刺激療法(TMS)とは

うつ病の治療には、これまで「休養」、「環境調整」、「精神療法・心理療法」、「薬物療法(抗うつ薬)」、重度の症状であれば「電気けいれん療法」などがありました。しかし、適切な治療を行っても十分な改善が得られない方や、お薬の副作用(眠気、倦怠感、胃腸症状など)のために服用を継続することが難しい方も少なくありませんでした。こうした背景から新しいうつ病の治療法として、反復経頭蓋磁気刺激療法(Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation, rTMSまたはTMSと略されます)が登場しました。日本うつ病学会による「うつ病診療ガイドライン2025」にも、薬剤療法に反応しない成人うつ病患者さんへの選択肢としてTMSが推奨されています。

 

TMSは、磁気を用いて脳の特定の部位をピンポイントで刺激し、脳の活動を整える治療法です。うつ状態では、脳内では感情を司る「左背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや、左前頭葉の一部)」という部位の血流や代謝が低下していることが分かっています。TMSはこの部位に磁気刺激を繰り返し与えることで、脳のネットワークを再活性化させ、うつ状態の改善を図ります。

 

DLPFC

 

TMSの大きな特徴

  • 副作用が少ない: お薬のように全身を巡るものではないため、副作用が非常に限定的です。
  • 身体への負担が軽い: (電気けいれん療法(ECT)は全身麻酔下で行いますが)麻酔の必要がなく、意識がはっきりした状態で治療を受けられます。
  • 非侵襲的: 頭皮を傷つけることなく、装置をあてるだけで治療が可能です。

 

治療

実際の治療の流れは、非常にシンプルでうつ病患者さんの負担に配慮しています。

 

椅子

 

1.準備(刺激部位の特定)

まず、椅子にリラックスした状態で座っていただきます。医師(または専門スタッフ)が、磁気を発生させる「コイル」を頭部に当て、磁気を当てる正確な位置と磁気の強さを決定します。一人ひとりの頭の形や運動反応に合わせて、オーダーメイドの調整を行います(初回だけ設定に時間がかかります)。

2.磁気刺激の実施

位置が決まったら、治療を開始します。コイルから「コン、コン、コン」というリズミカルな音とともに、軽い叩かれるような磁気刺激が伝わります。強い痛みを感じることは稀ですが、もし違和感があればすぐに調整が可能です。

3.治療時間と期間

  • 1回あたりの時間: 装置の種類によりますが、通常20〜40分程度です(福井大学医学部附属病院では20分で終了する装置が導入されました)。
  • 頻度と期間: 一般的には週5日間、計3週〜6週間(15〜30回)の治療が標準的です(福井大学医学部附属病院では入院治療でお願いしています。前後の検査や観察期間を含め少なくとも2か月間の入院治療となります)。

4.治療後

治療が終われば、すぐに通常どおりの生活が可能です。

 

まとめ

TMSは、薬物治療などで効果が得られなかった方にとって、「新しい治療の選択肢」となり得る画期的な治療法です。福井大学医学部附属病院では最新の機器を導入し、確かなエビデンス(科学的根拠)に基づいた安全な医療を提供しています。「お薬を増やしたくない」、「今の治療で行き詰まっている」と感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

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うつ病TMS外来

更新:2026.05.15