大動脈弁狭窄症のカテーテル治療TAVI

浜松医科大学医学部附属病院

循環器内科

静岡県浜松市東区半田山

大動脈弁狭窄症とは?

高齢化社会に伴い、心疾患のなかで弁膜症(べんまくしょう)、とりわけ大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)は爆発的に増加しています。大動脈弁狭窄症は、心臓の出口にある弁が硬くなり、開きにくくなるために、心臓の筋肉に負担がかかる病気です(図1)。

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図1 大動脈弁狭窄症

負担のかかった心臓は、心不全を起こします。心不全のステージが進行すると、むくみによる入退院を繰り返しながら衰弱していき、数年で死に至ります(図2)。

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図2 心不全のステージ

しかし、息切れや胸の痛みなどの一時的な症状から始まるため、高齢のせいと考えられて、見逃されやすい病気です。

大動脈弁狭窄症の治療

大動脈弁狭窄症の治療は、従来は、胸を開けて行う外科的弁置換術(べんちかんじゅつ)が延命効果のある唯一の治療でした。しかしこの治療は、術後の体力低下が大きな問題であるため、治療を断念した高齢の患者さんが少なくありませんでした。

同じような効果を示す新しい治療法として開発された経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI/ TranscatheterAortic Valve Implantation)は、体力がない患者さんでも治療が可能となりました(図3)。ヨーロッパから始まり、海外では爆発的に症例数が増えてきています。2013年より日本でも保険適用となり、当院では2017年より施行しています。

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図3 左:外科的弁置換術、右:TAVI
(エドワーズライフサイエンス株式会社提供)

TAVIの流れ

外科的弁置換術では、硬くなった弁を切除して、糸で人工弁を心臓に縫いつけます。ところが、TAVIでは弁を切除せずに、弁の内側から人工弁を広げて金属の網で固定します(図4、5)。そのため、残った弁が心臓を傷つけて破れたり、心臓に酸素や栄養を送る働きをしている血管が詰まって、心筋梗塞(しんきんこうそく)を起こしたりするリスクがあります。

フロー図
図4 TAVIの手順
(エドワーズライフサイエンス株式会社提供)
図5 TAVI用に開発された人工弁
(エドワーズライフサイエンス株式会社提供)

このリスクを避けるために、TAVI前には必ずCT検査を行い、大動脈弁の形を詳細に評価します。検査の結果がそろったら、心臓外科医・循環器内科医を中心としたカンファレンス(検討会)でTAVIに適しているかどうかを検討して、治療を決定します。

手術は、ハイブリッド手術室という特殊な手術室で行います。ハイブリッド手術室とは、従来の胸を開ける手術とX線でのカテーテル操作による治療を同時に行う、特殊な手術治療室のことです。TAVIは、外科的弁置換術に比べ、創(きず)は小さく、手術時間も短い(約1~2時間)です。

TAVIが終わった後は、集中治療室で合併症がないかどうか経過をみて、合併症がなければ、1~2日で一般病棟へ移ります。患者さんの体の負担は極めて低いため、食事や歩行などは早期に可能となります。入院期間は1週間程度です。

TAVIの適応について

TAVIは当初、外科的弁置換術によるリスクが高いと判断された患者さんに対する治療として開発されましたが、数々の研究の結果から、現在は、外科的弁置換術のリスクが低い方にも適応が広がっています。

問題は、新しい治療法であるため、10年以上の耐久性については不明なことです。そのため、おおよそ80歳以上の患者さんを対象としており、若い患者さんには慎重に適応を判断します。また、体力のない方にもできる手術なので、年齢の上限はありません。

2018年より外科的弁置換術後の弁機能不全、2021年からは透析(とうせき)患者さんにも適応が広がっています。

更新:2023.12.11