2024年 花粉症対策と新たな治療法
メディカルブレイン編集部
国民病とも呼ばれる花粉症。日本人の2人に1人が何らかの症状を抱えていると言われています。政府も花粉症対策に本腰を入れ始めましたが、依然として個人レベルでの対策が不可欠です。
さらに、コロナ禍と比較すると外出機会も増え、花粉をより多く浴びることになり、症状が出やすくなっています。
そこで今回は、今年の花粉の飛散状況や花粉対策、新しい治療法についてご紹介します。
花粉症とは?
花粉症は、スギ花粉などのアレルギー原因物質が体内に蓄積され、一定量を超えると発症します。一度発症すると完治が難しいとされています。
どのような人が花粉症になりやすいかは特定されていませんが、アレルギー体質の人が発症しやすいと言われています。
(関連記事:「花粉症」/福井大学医学部附属病院)
2024年 スギ花粉の飛散量、飛散時期
花粉の飛散量は、前年の夏の気象条件と密接に関係しています。
今年のスギ花粉の飛散量は、大量飛散だった昨年よりは少ないようですが、昨年の夏の猛暑の影響で全国的に例年並みかそれ以上と予測されています。
また暖冬の影響で、例年よりも1週間~10日ほど早い1月中旬から飛散が始まり、ピークは2月中下旬とされています。
花粉対策
花粉症の最も効果的な予防策は花粉にできるだけ近づかないことですが、スギやヒノキの花粉は数十~数百キロメートルの範囲に広がるため、都会でも花粉が拡散されます。アスファルトの地面では、花粉が落ちても吸収されずに再び舞い上がるため、都会でも多くの花粉が飛散することになります。
以下は花粉対策の一例です。
●花粉が多い日は外に出ない
- 外出する際はマスクや花粉対策用メガネなどを着用
●家の中に花粉を持ち込まない
- 家に入る前には服に付いた花粉をはらい落とす
- 服の素材はできるだけ花粉が付きにくいものを選ぶ
- 玄関で粘着ローラーなどを使用して服に付いた花粉を取る
- 洗濯物や布団は外に干さない
●花粉が入りやすい場所に注意
- 窓際の床:窓を開けると花粉はカーテンに付き、床に落ちる
- 脱衣所の床:服を脱ぐ際に服から花粉が落ちる
これらの場所を掃除する際は、花粉を舞い上げないように静かに行うように注意しましょう。
花粉症の治療法
花粉症の治療は主に ①薬物療法、②手術(レーザー治療)、③免疫療法 の3つに分かれます。症状の重さや生活スタイルに応じて、適切な治療法を選択しましょう。
①薬物療法
花粉症の薬には、経口薬、点鼻薬、点眼薬、注射薬があります。
最近では、OTC医薬品(※)と呼ばれる市販薬も高い効果が期待できます。症状が軽い場合や病院に行く時間が取れない場合は、これらの市販薬を使用してもいいでしょう。
症状が強く出る前の早い段階から薬を飲み始めることで、効果が出やすくなります。
(※)医師から処方される医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販薬に転用したもの
【花粉症の新しい注射薬(抗IgE抗体製剤)】
概要 | 飲み薬や点鼻薬で十分な効果が得られなかった重症または最重症のスギ花粉症の人に対して、2月~5月の期間に、2週間または4週間ごとに抗IgE抗体製剤を皮下注射する治療で、2020年より開始しています。 |
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治療対象者 | ・12歳以上の人 ・スギ花粉症の症状が重症または最重症と診断された人 ・今シーズン、抗ヒスタミン薬などの既存治療を1週間以上行っても十分な効果が得られなかった人 ・アレルギー検査で総IgE値とスギ特異的IgE値が一定レベルであること |
メリット | ・これまでの治療法で望ましい効果が得られなかった人に治療効果が期待できる ・効果期間が1か月程度と長い |
デメリット | ・費用が高く1か月当たり数千円~数万円かかる(薬の量によって値段は変動) ・2週間または4週間に1回病院に通い、注射を打つ必要がある |
②手術(レーザー治療)
鼻の粘膜をレーザーで焼き、アレルギー反応を鈍らせ、花粉が付着しても反応しないようにする手術です。粘膜が縮まり、鼻詰まりの改善も期待できます。
治療時間は約30分で、耳鼻科のクリニックで受けることができます。
効果の持続期間は個人差がありますが、通常1年~3年程度で、効果が薄れた場合は再治療が可能です。
③免疫療法(舌下免疫療法)
即効性はありませんが、対症療法ではなく、花粉症を根本的に治す可能性がある治療法です。
概要 | スギ花粉などのアレルギー原因物質を含んだ治療薬を、3年~5年毎日舌の下に投与することで、体質を変え花粉症を根治させる治療法です。治療薬を舌の下に置き、一定の時間保持した後、飲み込みます。 |
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治療を受けられない人 | ・5歳未満の人、66歳以上の人 ・気管支喘息や口腔内に傷や炎症がある人など |
メリット | ・体質を根本的に変える治療のため、約80%の人に効果がある ・薬の副作用が少ない ・子ども(5歳以上)も治療可能 ・自宅で治療可能 |
デメリット | ・治療期間が長い ・治療を始められる時期が限定されている(花粉が飛散していない6月~11月下旬頃) ・頻度は非常にまれだがアナフィラキシーショックが引き起こされることがある ・今のところ対象は、スギ花粉、ダニアレルギーのみ |
花粉症の対策や治療法は、新しい選択肢が増えつつあります。基本的な対策に加え、自分の症状や生活状況に合わせて、適切な方法を選択することが重要です。
更新:2024.03.04