初期子宮体がん手術に対する安全性の向上

女性診療科・産科

初期子宮体がん手術に対する安全性の向上

子宮体がんとは?

子宮(しきゅう)がんは、子宮頸(けい)がん(子宮の出口部分)と子宮体(たい)がん(子宮の本体部分、図1)に分けられます。今回紹介するのは、子宮体がんについてです。子宮体がんは閉経前後の発症が多く、50~60歳代に好発(高い頻度で発生)します。不正性器出血などの自覚症状が出やすく、患者さんは早めに医療機関を受診するため、ほかのがんに比べて比較的初期の段階で見つけやすい病気です。

図
図1 子宮体がん
子宮体部の内側から発生します。壁の厚さの2分の1以内に留まっていることが、ロボット支援下手術の条件になります

ロボット支援下手術の適応とメリット

子宮体がんは比較的初期に診断されることが多い病気です。ロボット支援下手術を行うことができるのは、そのなかで最も初期の状態であるA期の患者さんです。これは、がんが子宮内に留まっており、また子宮の壁に深く入り込んでいない状態です(図1)。

術前検査でB期以上に進行していると考えられる患者さんには、ロボットを用いないほかの手術方法を提案します。ロボット支援下手術を行うか否かにかかわらず、すべて保険診療で行うことができます。

ロボットを手術で使用するメリットは、第一にお腹(なか)の創(きず)が小さいことです。従来の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術も同様ですが、1cm程度の小さな孔(あな)をいくつか開けることで手術が可能です(図2)。大きくお腹を開く開腹手術と比べて、術後の痛みが少なく、入院期間が短くなります。

図
図2 腹壁創部(例)
上腹部に1cm程度の孔を5か所開けます。体形や病状により創の配置、サイズ、数は異なります

当院の患者さんは通常、術後3日目に退院しています。ロボットを用いて行う手術は、人の目で見るのと同様に3次元画像による立体視ができ、また人の手首の動きに似た自由度の高い鉗子(かんし)操作が可能です。手ぶれ補正機能付きで、従来の腹腔鏡下手術と比較して、手術をより繊細にかつ安全性が高い状態で行うことができます。

ロボット支援下手術の実際

手術の創は、上腹部に1cm程度の孔を5か所開けます(図2)。二酸化炭素でお腹を膨らませたあと、これらの孔からロボットの手を入れて手術に臨みます。患者さんとロボットを接続したあと、術者は少し離れた場所でロボットの操作を行います。

一般的に、子宮と両側の卵巣・卵管、骨盤(こつばん)内のリンパ節を摘出しますが、手術前の病状に応じて摘出範囲は患者さんと相談します。摘出した臓器は、お腹の創もしくは腟(ちつ)から体外に回収します。子宮が大きいなどの理由で摘出が困難な場合は、お腹の創を少し広げて回収することもあります。

更新:2025.12.12