唾石症の治療
耳鼻咽喉科・頭頸部外科

唾石症とは?
唾液(だえき)を生成している器官を唾液腺といい、主に顎下腺(がっかせん)と耳下腺(じかせん)があります。唾液腺で生成された唾液を口腔(こうくう)内に運ぶ管を唾液腺管といい、管は口の中に開口しています。唾液の通り道にできる石を唾石(だせき)といいます(写真1)。その約9割は顎下腺にみられ、1割程度が耳下腺にできるといわれています。唾石症は食事中の唾液腺の腫(は)れ、痛みが主な症状ですが、化膿(かのう)すると腫れや痛みで食事が困難になってしまうこともあり、日常生活に支障をきたすようであれば治療の対象となります。


一般的な唾石症に対する治療
手術法には、口の中の粘膜(ねんまく)を切って唾石の摘出を行う口内法と、顎(あご)の下(顎下腺の唾石の場合)や顔の皮膚を切開(耳下腺の唾石の場合)する手術があります。いずれも入院してもらうことが多いですが、唾液腺管の口への出口(開口部)に近い唾石は、局所麻酔により日帰りで行えることもあります。
開口部から奥の方の唾石では、口内法による摘出が可能であっても、多くの例で従来法により、首や顔面の皮膚を切開して、顎下腺や耳下腺ごと摘出する方法を選択しています。その場合、首や顔面に創(きず)がついたり、顔の筋肉を動かす顔面神経が麻痺(まひ)したり、舌のしびれなどの後遺症が残る可能性があります。入院期間は約1週間となります。
内視鏡を用いた低侵襲治療
ここ10年くらいの間に、内視鏡を唾液腺に適用し、内視鏡で管の中を観察しながら、唾液腺病変の診断や治療を行う試みが海外で増加してきています。国内においても、内視鏡を用いた唾液腺手術(唾液腺内視鏡、写真2)が行われつつあります。

当院には国内で初めて内視鏡による唾石摘出術を施行した医師が在籍しており、数多くの患者さんが紹介されてきます。顎下腺唾石症例においては、内視鏡から唾石をつかむ器具を取り入れて摘出したり、内視鏡とレーザーによる唾石の破砕を併用したりすることで、深い位置にある唾石を摘出できた症例も多く、従来の頸部(けいぶ)(首)を切開する手術を回避できる可能性が高まったといえます。
唾石が4mm以下で、丸い形状かつ深い位置になければ、内視鏡下に石をつかむ器具で摘出可能な場合が多いです。大きさが5mm以上で、管の壁に唾石が癒着(ゆちゃく)している可能性があれば、内視鏡補助下の口内法や顔面皮膚切開を行うこともあります。
首や顔面を切る手術に合併する後遺症は重要であり、ほかの臓器における低侵襲(ていしんしゅう)(体に負担の少ない)治療の流れ同様、唾液腺内視鏡を用いた唾石治療に徐々にシフトすると考えられます。当科では積極的に唾液腺内視鏡を用いた低侵襲な唾石手術を数多く行っており、豊富な経験と実績があります。
更新:2025.12.12
