肺がんの内科的治療
呼吸器内科 化学療法科

肺がんとは?
肺がんは、一般的に肺に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)で、肺そのものから発生した原発性肺がんのことをいいます。肺がんは早期であれば、手術が最も治癒の期待できる治療法ですが、発見されたときには進行している場合が多く、手術のほかに放射線治療や薬物治療、さらにこれらを組み合わせた治療が選択されます。全身のがんの中では、最も治療が難しいがんの1つです。
肺がんの症状・検査
- 症状
- 肺がんの症状は、一般的な呼吸器疾患にみられる咳(せき)、痰(たん)、血痰(けったん)、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、発熱、倦怠感(けんたいかん)(だるさ)、体重減少などさまざまです。肺がんの種類、発生部位、進行度によって、症状は異なります。
これとは別に、呼吸器の症状がなくても、転移による症状がきっかけで肺がんが見つかることも少なくありません。頭痛、ふらつき、麻痺(まひ)、背中の痛み、声がかすれる、顔がむくむなどは、転移した肺がんで見られることがあります。 - 診断までの検査
- 肺がんが疑われる場合は、①画像検査(胸部X線、CT、PET(ペット)-CT、頭部MRIなど)により、肺がんの進行度(がんの広がり)を調べます(図1)。次に、②生検検査(気管支鏡検査、経皮的針生検(けいひてきはりせいけん)検査など)を行い、③病理検査で②の検査で採取した細胞や組織を顕微鏡で観察し、がんの確定診断や種類(組織型)を決定します。確定した診断に基づいて、さまざまな要因を考慮したうえで治療方針を決めます。

- 治療方針を立てるための検査
- 検査から治療開始までは2週間から1か月程度を要することが多いです。さらに、治療の効果を予測するためのバイオマーカー検査として、がんの組織やがん細胞を使い、がん遺伝子検査、PD-L1検査などを行います。これにより、治療の方針を立てます。
がん遺伝子検査は、がん細胞の発生や増殖にかかわる遺伝子に変異(異常)があるかを調べる検査です。検査の結果、遺伝子変異のどれかが陽性と判定された場合、その遺伝子の変異に適した分子標的治療薬を用いて治療をすることができます。
またPD-L1検査により、がん細胞の表面にPD-L1というタンパク質があるかを調べる検査を行い、使用する薬を検討することがあります。
肺がんの薬物治療
進行が早く、発見されたときにはすでに転移している場合が多い小細胞がんと、小細胞がんほど早く進行しない非小細胞がんでは、治療法が異なります(図2)。

- 小細胞がん
- 小細胞肺がんは進行が早く、転移しやすいことから手術の適応になることはまれです。病変が片側の胸郭(きょうかく)内と鎖骨上窩(さこつじょうか)リンパ節までの転移で、根治的放射線治療(※1)が可能な限局型(※2)の患者さんでは、細胞傷害性抗がん薬と放射線治療を併用します。さらに進行した進展型の患者さんの場合には、細胞傷害性抗がん薬と免疫チェックポイント阻害薬を使って治療します。
- 非小細胞がん
- 遠隔転移のあるIV期(ステージ4)および術後再発した非小細胞肺がんの患者さんに対する治療の中心は、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬、細胞傷害性抗がん薬などの薬物治療です(図3)。
EGFRやALKなどの遺伝子に変異や転座(※3)が確認された患者さんには分子標的治療薬を使用します。それ以外の患者さんには、免疫チェックポイント阻害薬、細胞傷害性抗がん薬をそれぞれ使用、または併用します。

※1 根治的放射線治療:病気を完全に治すことをめざす放射線治療
※2 限局型:病変が狭い範囲に限られている病型
※3 転座:染色体の配列に異常が起きている現象
がん免疫療法
がん免疫療法とは、がん細胞を認識して攻撃する免疫細胞や免疫制御細胞を、体内あるいは体外で誘導して利用し、がん細胞の殺傷や増殖阻害をめざす治療法です。免疫チェックポイント阻害薬同士の組み合わせや、免疫チェックポイント阻害薬と細胞傷害性抗がん薬の併用療法が通常行われています。がん免疫療法と放射線療法、外科治療との組み合わせも行われるようになっています。
当科の特色 呼吸器内科
当科では、がん診療連携拠点病院として、呼吸器外科、放射線治療科、病理診断科との定期的な検討会を行い、質の高いがん診療の提供に努めています。間質性肺炎などの呼吸器疾患を合併している患者さんも多く、それぞれの患者さんに合った治療を行っています。医師だけではなく、薬剤師、看護師、医療ソーシャルワーカーなどの多職種による連携を深めています。
化学療法に関しては、がん薬物療法専門医(日本臨床腫瘍学会認定)やがん治療認定医(日本がん治療認定医機構)、がん専門薬剤師(日本医療薬学会)、がん看護専門看護師(日本看護協会)などによるチーム医療で、患者さんが入院および通院治療において満足できる療養生活が送れるように支援します。
診療実績
当科での肺がん薬物治療は年間1,700件を超えており、呼吸器外科、放射線治療科と連携しながら、手術後の化学療法や、化学療法と放射線治療の併用も積極的に行っています。
更新:2026.02.02
