網膜の病気を硝子体手術で治療する

眼科

網膜の病気を硝子体手術で治療する

網膜の病気とは?

目に光が入ると透明な角膜・水晶体を通り、透明な硝子体(しょうしたい)を通り抜けて、最後に網膜(もうまく)という、みなさんが「眼底」と呼んでいる場所に光が当たります。その光が信号に変わり、目の奥の視神経に伝わり、物が見えるということになります。網膜に病気があると、光が当たってもそれが目の奥の視神経に伝わらなくなったり、硝子体に出血をきたして混濁することで光が網膜に当たらなくなり、視力が低下したり、物が歪んで見えたりします。

硝子体手術とは

白目(結膜(けつまく))と黒目(角膜(かくまく))の間くらいの位置に直径0.5mmくらいの孔(あな)を3つ開け、そこから眼球の内側、硝子体と呼ばれる部分に器具を入れて、網膜に起きている疾患を治す手術です。あまり耳にしないかもしれませんが、国内で年間10万件くらい行われている手術です。

どんな病気に硝子体手術を行う?

硝子体手術の適応となる病気は、非常に多岐にわたります。黄斑前膜(おうはんぜんまく)、黄斑円孔(えんこう)、網膜剥離(はくり)、糖尿病網膜症、網膜静脈分枝閉塞症(ぶんしへいそくしょう)、黄斑変性、細動脈瘤破裂(さいどうみゃくりゅうはれつ)、外傷(眼球破裂)など、そのほかすべて挙げれば100以上の病気に及びます。その中で硝子体手術を行う代表的なものを4つ挙げます(図1)。

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図1 硝子体手術を行う代表的な網膜の病気

①黄斑前膜

網膜の中心であり視細胞が最も密集している黄斑という部分の表面に膜ができ、視力が低下したり歪みが出たりする疾患です。

②黄斑円孔

黄斑に穴が開いてしまい、視力が低下する病気です。①も②も、加齢による硝子体の変化が主な原因といわれています。

③網膜剥離

この病気も非常に多いです。眼球内部を満たしている硝子体が加齢とともにゼリー状から液状に変化していき、その影響で網膜が引っ張られて穴が開き、網膜の裏側に水が回って網膜が剥(は)がれてしまう病気です。この網膜剥離は近視が強い若い方に起こる場合もあります。

④糖尿病網膜症

糖尿病による高血糖により網膜の血管が損傷を受けて出血したり、かさぶたのような増殖膜というものができたりして網膜剥離を起こし、失明してしまう病気です。

①~④の病気で、硝子体手術の9割以上を占めます。

手術方法

硝子体手術は、じっとしていることが困難な認知症の患者さんやお子さんなどを除き、基本的に局所麻酔で行います(写真)。目薬の麻酔と眼球の壁を伝うような注射による麻酔で、眼球全体に麻酔をかけます。手術時間は、15分~2時間と、処置の内容により異なります。高齢の方は、白内障の手術と一緒に行うことも多いです。基本は4、5日入院しますが、自宅安静と通院ができるのであれば、日帰り手術も可能です。

写真
写真 実際の硝子体手術の様子

まず、麻酔をした後に白目と黒目の間くらいのところに直径0.5mmくらいの孔を3つ作ります(図2①)。次に、術野(※1)を広げておくために、一定の圧で生理食塩水のような水(灌流液(かん りゅうえき))を流し入れる器具、術野を照らす照明器具、処置のための硝子体カッターなど、3つの器具を挿入します(図2②)。そして、それぞれの病気に応じた処理、たとえば硝子体を切除したり、増殖組織や出血を除去したり、切れている網膜の周囲にレーザー治療をしたり、眼内に空気やガス、シリコンオイルなどの硝子体の代わりのものを入れたりしていきます(図2③)。処置が終わった後は、創(きず)が小さいので糸で縫わず、無縫合で終了となります。

※1 術野:手術を行う、目で見える部分

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図2 硝子体手術の方法

当科の特色 眼科

当院の眼科は、目の病気の中でも、白内障や網膜の病気の分野に特に力を入れていることと、経験豊富な硝子体手術のエキスパートがそろっていることが特徴です。外傷による眼球破裂や、目の中にバイ菌が入り込んで起こる感染は一刻を争う病気であり、難しい手術になりますが、そのような手術も積極的に受け入れています。

日に何件も行うことが難しい硝子体手術ですが、1日 10件以上の硝子体手術が施行できる設備と人員を配置しています。そして、なにより硝子体手術や白内障手術などの眼科手術を年間2,000件以上行っている実績があります。

診療実績

2023年度の当科での硝子体手術の実績は439件です。前年度の約230件から倍増しています。今後もさらに増えると予想されます。

更新:2025.12.12